人生の源

maisky&argerich_in_concert.jpg1週間近く不在にしたもので、帰京するなり「やるべきこと」が山積みで、夜になってやっと少し落ち着いた。気がつけば8月も下旬。あっという間に夏も終わる・・・。

瑞浪天徳からJRバスで5時間弱の道程、先日友人から薦められた「ソース~あなたの人生の源は、ワクワクすることにある。」(マイク・マクナマス著)を読む。基本的に「やりたいこと」が見えない人におススメの本だと思うが、「なるほど」と首肯する部分もいくつかある。

「私たちにとって最善の行為は、決断をぐずぐず先に延ばすことだ」
一瞬、「えっ」と立ち止まってしまう。通常の「啓発本」では「決断を素早くせよ」と書かれているのが一般的だが、この本では違う。決断をぐずぐず先に延ばしているのは、「時期が来ていないから待て」または「まだ行動のときではない」というメッセージが潜在意識から送られてきているからなのだと説く。周りからは「怠けてやる気がないように見えている」状態も、その真意は「行動するために必要な情報や準備が整っていないからなのだ」という。そして、事態の本質を正確に捉えない以上、固い決意は生まれないし、賢明な決断もできないはずだと著者ははっきりと断定する。
あくまで自身の直感を信じ、周りに振り回されず、「やるべきことをたとえ少しずつであろうと駒を前に進めてゆけということだな・・・。

「目標を立てるな」
衝撃的である。学生支援事業に携わっていた頃、僕は学生に対して「目標設定」の重要性を口酸っぱく語りかけていた。しかし、その行為はあくまで「仕事」としてやっていたことで、自分自身は子どもの頃からずっと「目標」を掲げ、それに向かって邁進することを苦手としていた。「目標設定」というものがしっくりこないのだ。
著者は、「目標に拘るあまり、一見目標と関係ないように見える貴重な体験や素晴らしいチャンスを見逃してしまう可能性がある一方、目標を立てないでいると、自由に気の向くままに創造的な行為に走ることができ、目指す方向だけを決めておく方が、長期的には多くを成し遂げられる」と言う。さらに「目標設定には解消しきれない不自然さが伴う(社会そのものが巨大な機械であり、人間はその歯車に過ぎないという発想が根底に伺われる)」とも言う。なるほど、「目指す方向」だけを漠然と決めておくことでいいんだ、やっぱり・・・。

「自分がワクワクすることに人生を劇的に活性化させる力が宿っている」
仕事でも趣味でも、好きなことを継続することはとても大事なことだとあらためて思う。それが世の中のためになることならなおさらだ。決して自分中心にではなく、人の為に何かを成せるなら必ず周囲の協力、目に見えない力のサポートも得られるだろう。

ここ1週間音楽を一切聴かなかった。いや、聴く機会がなかった。東京に戻り、久しぶりに聴いたのはショスタコーヴィチのチェロ・ソナタ。愛知とし子が5年がかりで友人のチェリストと取り組もうと考えている諸曲(ラフマニノフ、プロコフィエフ&ショスタコーヴィチ)の一つである。まずは9月、ショスタコから始めるとのこと。楽しみである・・・。

090819_papa_kitchen.jpgイン・コンサート
・ストラヴィンスキー:イタリア組曲
・プロコフィエフ:チェロ・ソナタハ長調作品119
・ショスタコーヴィチ:チェロ・ソナタニ短調作品40
・プロコフィエフ:ワルツ~バレエ「石の花」作品118
ミッシャ・マイスキー(チェロ)
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)

第2楽章の猛烈なスピード感はほかのどんな演奏をも凌駕する。火花散る勢いと切迫感と、にもかかわらず息の合った完璧な演奏・・・。第3楽章の静謐でほの暗い、人声にも似たチェロの音色の奥深さはいかばかりのものか。そして、それに応えるアルゲリッチのピアノの確かな足取り。見事である。

昨晩、恵那市にあるPAPA@KITCHENにて妻と義父母、そして友人2人の6人で食事をした。リクエストどおりのとても美味しい菜食料理で大変満足(名古屋周辺に居住の方にはおススメの創作家庭料理のレストランです)。ご馳走様でした。


8 COMMENTS

じゃじゃ馬

お帰りなさい!
ソースは読んだことないんですが、おかちゃんのピックアップしてくださったものは3つとも共感します…というか、わたしの「座右の銘」に近いかも。
ブログにも以前書いたのですが、本心から望んだ目標でないとうまく流れていかないし、たとえ達成しても喜ばしいものではないと気づくときが来るのかもしれないと思います。
ソース、なんとなく敬遠していたんですが、読む気になってきました。
ありがとうございます!

返信する
岡本 浩和

>じゃじゃ馬さん
こんばんは。
おっしゃるとおりですね。
この本は「やりたいことがわからない人」にはつぼにはまる本だと思いますが、「わかっている人」にも示唆に富んでいる良書ですね。

返信する
雅之

おはようございます。いろいろお疲れ様でした。
今朝は今回のブログ本文の話題についてではなく、8月11日付ブログ本文コメント欄での岡本さんの問いかけにつきまして・・・。
荘村清志の弾く「アランフェス協奏曲他」のCD(ファンホ・メナ指揮スペイン・ビルバオ響)をやっと聴き終えました。それと同時に岡本さんの今月予定の「講座」に触発され、短い私の夏休みの「自由研究」として、通俗名曲「アランフェス協奏曲」のCDをあれこれ買い込み、聴き比べを行いました。この曲について理解を深めることができましたのは、偏に岡本さんのおかげです。感謝です。
①荘村清志 盤
許光俊氏のいうほど辛口、克明、超緻密といった感想は抱きませんでした。師のイエペスの影響を感じますが、どちらかというと切れ味より円熟というか大人の風格といった感じです。村治佳織の最初の録音の方が、私にはずっと真っ直ぐに心に訴えかけてきて新鮮な解釈で、私の好みではありますが、どちらも買って損はしないと思います。但し、あくまでCDを我が家のオーディオで聴いた感想に過ぎず、特にこの曲の場合、実演を聴かなければ本当のことは分からないですよね。「音楽現代」誌上他、今年7月の彼らの実演の演奏会批評は高評価が多かったようですね。それと、この録音に限らず、オーディオ装置が変われば印象がガラッと変わる可能性は高いと思います。
あと、荘村盤での組み合わせの曲の、スペインの指揮者やオケの演奏する武満徹の「夢の縁へ」では、日本人との感じ方の違いが判然として興味深かったです。
②福田進一(ギター)飯森範親&ヴュルテンベルク・フィル
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2565020
大人の風格、辛口の演奏といったら、この福田進一のSACDの方が完成度が高いと思います。あえてラテン系ではなくドイツのオケと共演したことからも、福田の基本姿勢がうかがえます。媚びない解釈は非凡であり完成度も高く、録音も最高だし、1枚に絞れといったら私はこれかな。愛知とし子さんの「bathing in the moonlight」と同じく、黒を基調とした盤のレーベルもカッコいいです。ペルトやヴィラ=ロボスの曲との組み合わせも、とてもセンスがよく、素晴らしいです。
③ナルシソ・イエペス(ギター)ガルシア・ナバロ&フィルハーモニア管弦楽団
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1244374
この録音は懐かしいです。良くも悪くもこの時期のイエペスが使用した、10弦ギターの豊穣な音が特徴的です。私はギターについては詳しくなく、10弦ギターについて私の知識も曖昧なところがありましたので、ちょっとWikipediaで調べてみました。
「・・・・・・10絃ギター(10弦ギター)は、スペインのギタリストのナルシソ・イエペスが、スペインの著名なギター製作者ホセ・ラミレスの協力を得て開発したギターを指す。一般的なギター(6弦)に低音部の弦を4本追加したもので、演奏のためというよりも、倍音を均等にすることを目的として設計された。調弦は7弦を6弦の3度下のC、8弦をB♭、9弦をG♯、10弦をF♯とする。これはイエペス式と呼ばれるもので、現在ではリュート式、ロマンティック式などさまざまな調弦方法が考案されている。
6弦ギターでオクターブの12音を弾いた時、響きの豊かな音とやせた音とのばらつきがある。楽器の音は、倍音と呼ばれる音程の異なる音が重なっているため奥行きと響きのある音になる。ピアノはすべての音が均等に倍音を持つので、非常に豊かな響きになるが、そのままでは濁ってしまうため、ペダルによってその響きをコントロールしている。イエペスは、ピアノと違って響きが不均等なギターの音に不満を感じ、ピアノのような豊かな音をギターでも実現することを考え、4本の共鳴用弦を追加することを選択した。10弦ギターは、6弦ギターに比べると非常に響きの豊かな音になっていて、常にベース音が鳴っているような錯覚がする不思議な響きを醸し出すのが特徴になっている。いわば、ピアノのペダルを踏みっぱなしの状態に似ている。そのため、逆に響きすぎて音のクリアさが阻害されるため、演奏者は効果的に消音をする必要に迫られる。いかに余分な音を消して、クリアな演奏をするかが、10弦ギタリストが常に抱えている課題である。10弦ギターに持ち替えた後のイエペスの演奏がとかく無機的との評があった理由も、この消音問題が背景にあるとされる。
当初はイエペス以外弾ける人はいないとまで言われた10弦ギターであったが、その魅力に惹かれた人は少なくなく、現在では世界中にプロの演奏家や愛好者が増えている。日本の10弦ギタリストとしては世界的に活躍している柿沼宏嗣、ナルシソ・イエペスの最後の弟子で有名な柿沼苗由美マリアテレサ、そして小川和隆や斉藤明子、岩永善信などがよく知られている。海外には、米国の10弦ギタリストであるジャネット・マーロウが主催する国際10弦ギター協会という10弦ギタリストの愛好家(プロアマ問わず)が集うグループがあり、2005年から毎年夏にフェスティバルを開催している。10弦ギターには工場生産品はないが、個人のギター製作者が注文制で製作している。
クラシックだけではなく、ジャズやロックの分野にも進出しており、エレアコ、エレクトリックギター、ジャズギター、サイレントギター各分野に10弦が存在している。10弦ギターに刺激されたせいか、その後11弦ギターや14弦ギター、ハープギターなど、弦の数を増やしたギターが多数登場している。・・・・・・」
10弦ギターはこのように一長一短というわけですが、この曲の実演でのギターとオケとの圧倒的音量バランスの悪さから考えると、イエペスのように上手く弾きこなせれば、大きなメリットを発揮するのでしょうね。
④村治佳織(ギター)山下一史指揮 新日本フィルハーモニー響 盤
7月29日付ブログ本文のコメントに先日追記しましたとおりです(できましたらこのコメントにも馬鹿にて無視されないで、返信欲しいですけど・・・涙と笑)。
それにしても私は「アランフェス協奏曲」についてこの歳まで通俗名曲と思い込み、軽視してきて真面目に向き合わず、いかに何も知らなかったかということを痛感させられました。この曲について理解を深めることができましたのは、偏に岡本さんのおかげです。
この曲での定番、浜田滋郎氏のCD解説の一部を荘村盤から・・・。
「・・・・・・第2楽章(ゆったりと。ロ短調)弱音器をかけた弦をバックに、イングリッシュ・ホルンとギターがこもごもに歌う主題(4/4拍子)は、短調というよりエオリア旋法(ラの旋法、自然的短音階)で書かれ、こまやかな音符のひだが絶妙な雰囲気をかもし出す(なお、作曲者自身の述懐によると、この旋律は、当時初めての子を流産し傷心だった妻への慰めを込めたものだという)。・・・・・・」
こういう事実も知識としてほとんど知らなかったことが恥ずかしいです。真に大人の鑑賞に堪える名曲中の名曲だと、今回の聴き比べを通じて改めて思いました。
※愛知とし子さんの9月5日多治見のコンサートのチケット、昨日着きました。妻も娘も楽しみにしているようです。
愛知とし子さんの新しいCDを聴いて感動した感想は、せっかくの再コメントのチャンスなので、もう数回聴いてからにします(笑)。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
しばらく雅之さんとのコメントのやり取りが滞り、手持ち無沙汰で寂しかったです(笑)。
それにしても自由研究「アランフエス協奏曲」お疲れ様です。
これだけいろいろと聴き比べをされると、この名曲のあらたな側面が垣間見えるでしょうね。どちらかというと僕も通俗曲として馬鹿にしていた方ですから雅之さんにお礼を言っていただく資格も何もないのですが・・・。
いずれにせよどの盤もそれぞれに個性があり、面白そうです。
中でもやっぱり村治の旧盤ですか!未聴なのでこれは聴かなきゃと思っております。7月29日のコメントは無視していたわけではなく、すっかり見落としてしまっておりました。このあと返信コメントいたします。失礼しました。
>作曲者自身の述懐によると、この旋律は、当時初めての子を流産し傷心だった妻への慰めを込めたものだという
そうなんですよね。僕も講座でとりあげるため、少ないながらもいろいろと文献を読み知ったことです。何でもそうですが、勉強って大切ですね。
>愛知とし子さんの新しいCDを聴いて感動した感想は、せっかくの再コメントのチャンスなので、もう数回聴いてからにします
ぜひよろしくお願いします。

返信する
たんの

御無沙汰しております。久しぶりにコメントします。
・目標を立てるな
・自分がワクワクすることに人生を劇的に活性化させる力が宿っている
いいですね~
今度ぜひ「ソース」を読みたいと思います。

返信する
岡本 浩和

>たんのさん
ご無沙汰しております。
コメントありがとうございます。
なかなかこの本は面白いですよ。ぜひ読んでみてください。

返信する
雅之

「目標を立てるな」について私も一言。
「目標を立てるな」が目標になっているのでは?
私は、そう命令されると目標を立てたくなる性分です(笑)。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
>「目標を立てるな」が目標になっているのでは?
確かに~。おっしゃるとおりですね(笑)。

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む