ガーディナーのモンテヴェルディ「オルフェオ」を聴いて思ふ

monteverdi_orfeo_gardiner引き続きオルフェオの物語。モンテヴェルディをひもとくと様々な発見がある。
人は誰しも外を見るが、この寓話劇は、対象が外にあるのではなく内側、すなわち自分自身だという。オルフェオが禁を破り、永遠にエウリディーチェを失った時、精霊は語りかける。

徳は天上の美を備えた光であり、
魂は徳によってのみ価値をもつ。
徳は月日の歩みに侵されないどころか
年月は人間の徳の輝きを一層大きくする。
オルフェオは地獄には打ち勝ったが、みずからの情に負けてしまった。
永遠の栄光に値するのは、みずからに打ち勝つものだけだ。
~第4幕「精霊の合唱」(訳:あずさまゆみ)

すべての事象は鏡なんだと、400年の昔にマントヴァにてモンテヴェルディは諭す。そして、続く第5幕はこのオペラのクライマックスとなる。まずは悲嘆に暮れるオルフェオの歌。これは自らに向かう懺悔の言葉。何という優しい心の叫びか。
そこに父アポロの登場。アポロの言がこれまた深い。

お前は自分の幸せをあまりにも喜びすぎていた。
そして今はにがく過酷な運命をあまりにも嘆きすぎる。
この地上ではどんなことも真に心を楽しませることなく、また長続きしないのをお前はまだ知らないのか。

ここにおいてようやくオルフェオは無常を悟る。

モンテヴェルディ:音楽寓話劇「オルフェオ」
アントニー・ロルフ・ジョンソン(オルフェオ、テノール)
ジュリン・ベアード(エウリディーチェ、ソプラノ)
リン・ドーソン(音楽、ソプラノ)
アンネ=ゾフィー・フォン・オッター(女の使者、メゾソプラノ)
ナンシー・アージェンタ(ニンファ、ソプラノ)
ジョン・トムリンソン(カロンテ、バス)ほか
モンテヴェルディ合唱団
ヒズ・マジェスティーズ・サッグバッツ&コルネッツ
ジョン・エリオット・ガーディナー指揮イングリッシュ・バロック・ソロイスツ(1985.12録音)

アポロによって助けられ、すぐさま天上に向かうという流れがあまりに安易で唐突で少々興醒めではあるが、やはりこのハッピーエンドというのが重要なんだ。いや、というよりそもそも何事においても、あるいは何人においても「不幸」などないのかも。誰しもすでに救われているんだという暗示なのか・・・。

オーラス、ニンファと牧人たちの合唱。

退くことのない者はこうして
永遠の神に召されてゆく。

やっぱり「勇気」と「覚悟」だ。
ちなみに、この録音は30年近く前のものになるが、ガーディナーの先見だろうか、いまもって音楽は新鮮で色褪せない。

 


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