カール・ベーム指揮ウィーン響のR.シュトラウス 歌劇「ダフネ」(1964Live)を聴いて思ふ

r_strauss_daphne_bohm_vso403ギリシャ神話を基にした牧歌的悲劇「ダフネ」の音楽は、リヒャルト・シュトラウスが誇る数多のオペラの中でも一二を争う美しさ。
何といううねり、何という咆哮。また、内面から湧き出づる陶酔。
神からも人間からも言い寄られるダフネは、その神性を樹木に封印し、好色から逃れる。
終盤、アポロの愛と恐れに圧倒されたダフネのアリア、そして月桂樹の樹に変容してゆく彼女の歌が真に素晴らしい。

来ましたよ、来ましたよ、
緑なす兄弟よ、
大地の樹液が上がってくるのです!
生命の光よ、葉や枝を私に・・・。

アポロよ!兄弟よ!
嗚呼、枝々の葉っぱたちが風に揺られ舞い落ちるのです!
そして鳥たちが枝高く歌い・・・、
人びとよ、兄弟たちよ・・・、
あなた方が私を永遠の愛の象徴とするのです・・・。

精霊の宿る樹木は爾来人々を癒す。
おそらく彼らは人間も、そして神すらも到達し得ない何か偉大なるものを持っているのだろう。

草木が地球に与える愛というものの深遠さを思った。
同時に、シェル・シルヴァスタインの有名な”The Giving Tree”(おおきな木)を想った。

いまや よぼよぼの そのおとこは
「わしは いま たいして ほしいものはない。
すわって やすむ しずかな ばしょが
ありさえすれば。 わしは もう
つかれはてた。」
「ああ それなら」 と きは せいいっぱい
せすじを のばし
「このふるぼけた きりかぶが
こしかけて やすむのに いちばんいい。
さあ ぼうや こしかけて。
こしかけて やすみなさい。」

おとこは それに したがった。

きは それで うれしかった。
シェル・シルヴァスタインさく え/ほんだきんいちろう やく(篠崎書林)

嗚呼、無量・・・、嗚呼、永遠・・・。
リヒャルト・シュトラウスの天才。

・リヒャルト・シュトラウス:歌劇「ダフネ」(1幕の牧歌的悲劇)
パウル・シェフラー(ペナイオス、バス)
ヴェラ・リトル(ゲーア、メゾソプラノ)
ヒルデ・ギューデン(ダフネ、ソプラノ)
フリッツ・ヴンダーリヒ(ロイキッポス、テノール)
ジェームズ・キング(アポロ、テノール)
ハンス・ブラウン(第1の羊飼い、バリトン)
クルト・エクイルツ(第2の羊飼い、テノール)
ハラルド・ブレークルヘフ(第3の羊飼い、バス)
リタ・シュトライヒ(第1の乙女、ソプラノ)
エリカ・メヘラ(第2の乙女、ソプラノ)
ウィーン国立歌劇場合唱団
カール・ベーム指揮ウィーン交響楽団(1964ウィーン芸術週間Live)

さすがに初演者であるベームの音楽作りは堂に入る。
何より作品に対する愛情が並大抵でない。それほどに音楽に力がこもるのだ。
また、ギューデンのダフネの哀感伴う歌唱に感動。あるいはヴンダーリヒのロイキッポスの内にある人間的温かみ。

変身そのものはほとんど全体をとおしてオーケストラによって表現され、ダフネの声は終結の直前に戻ってきて、言葉のないアラベスク文様を歌う。まばらな楽器は、まるで木の葉が震えるように、嬰へ音上の長和音の周りでもちらちらと揺れる。
アレックス・ロス著/柿沼敏江訳「20世紀を語る音楽2」(みすず書房)P348

「言葉のないアラベスク文様」というのが言い得て妙。ここは間違いなくシュトラウスの真骨頂!!

37年12月24日、オペラ「ダフネ」は完成する。その1週間前、シュトラウスはタオルミナからカール・ベームに、葉書でこう書いた。「シチリアの夏で元気を取り戻し、せっせと『ダフネ』を作曲している。いずれ君に献呈しようと思うが、とりあえずちょっとしたクリスマス・プレゼントになれば幸いだ」
38年10月15日、「平和の日」初演の3ヶ月後、ドレスデン国立劇場でベーム指揮により「ダフネ」が初演された。
田代櫂著「リヒャルト・シュトラウス―鳴り響く落日」(春秋社)P339-340

愛は永久だ・・・。

 

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2 COMMENTS

雅之

これは懐かしいです!! 本当に名盤ですよね(指揮者も歌手も最高!!)。昔LPで持って、その後CDも買いましたけれど、何れも手放してしまい、もはや手元にはありません。

>「言葉のないアラベスク文様」

なるほど!!

>37年12月24日、オペラ「ダフネ」は完成する。
>とりあえずちょっとしたクリスマス・プレゼントになれば幸いだ

なるほどなるほど、クリスマスにも縁のある歌劇なのですね。知りませんでした。さしずめ、クリスマス・ツリーといったところですか・・・(笑)。

私事で恐縮でづが、今年の12月25日は忘年会で、2次回でカラオケにも行く予定です。
また、セカオワの「Dragon Night(通称ドラゲナイト)」や「プレゼント」でも歌って日頃の憂さを晴らし大いに盛り上がろうと思っています。

今、息子のCD棚に置いてあったやつを取ってきました。

Tree Limited Edition SEKAI NO OWARI

http://www.amazon.co.jp/Tree-%E5%88%9D%E5%9B%9E%E9%99%90%E5%AE%9A%E7%9B%A4CD-DVD-SEKAI-OWARI/dp/B00PA28PUA/ref=sr_1_6?s=music&ie=UTF8&qid=1450533115&sr=1-6&keywords=%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E7%B5%82%E3%82%8F%E3%82%8A

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岡本 浩和

>雅之様
LP時代から愛聴されているのはさすがです。
「ダフネ」は、シュトラウスのオペラの中でも屈指の音楽満載だと僕は思います。

まさにクリスマスツリーです!(笑)

良いですねぇ、セカオワ!!
思う存分ストレス発散してください。

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