
チョン・キョンファのモーツァルト!
「衝撃の東京ライヴ」と題する2枚の音盤は僕の座右の盤だが、どの作品も自家薬籠中の様相を示し、円熟のチョン・キョンファの(若い頃に比較し、大人しくなったとはいえ)壮絶な演奏が繰り広げられ、感動的だ。


僕は当時、2夜のリサイタルを実際に聴いた。
今、思い出すだけであの頃のキョンファの演奏がいかに神がかり的で素晴らしかったか、思い出すだけで心が震えるほど。とにかくすべての音楽が生きていた。
その翌年の韓国は釜山でのライヴ映像。
(おそらくオール・モーツァルト・プロだろう)
同じく伴奏はイタマール・ゴランが務め、映像とはいえ最高のデュオが堪能できる。
モーツァルト:
・ヴァイオリン・ソナタ第17番ハ長調K.296(1778)
・ヴァイオリン・ソナタ第18番ト長調K.301(293a)(1778)
・ヴァイオリン・ソナタ第28番ホ短調K.304(300c)(1778)
・ヴァイオリン・ソナタ第32番変ロ長調K.454(1784)
チョン・キョンファ(ヴァイオリン)
イタマール・ゴラン(ピアノ)(1999.7.30韓国文化放送放映)
いずれも韓国文化放送の放映日ということなのでリサイタルの正確な日付は不明。
しかし、東京でのライヴの翌年の演奏であり、とにかく音楽に没入するチョンの優雅で、相変らず挑戦的な(?)表情と姿勢が素敵(時にチョン・キョンファ51歳!)。
1778年、母を伴った就活のためのパリ、マンハイム旅行の最中に書かれたK.304は、珍しく短調で書かれた作品であり、同時期のイ短調ソナタK.310とともに、22歳のモーツァルトがすでに獲得していた後期様式の深遠さと音楽の構成美を示す。チョンの演奏はモーツァルトの内心の苦悩を見事に表現していて美しい。

そして、同じくパリ、マンハイム時代のト長調K.301の飛び跳ねるような明朗さと喜びを(第1楽章アレグロ・コン・スピーリトの愉悦!)、チョン・キョンファはいかにも真面目にモーツァルトの音楽を楽しんでいる(音楽をするときの彼女の表情がまた素敵)。
高原の夜に響く、四半世紀前のチョン・キョンファのモーツァルト!!
映像に出逢えて感無量!!