
人生最大の思い出。
まだまだ経験の浅い22歳の僕がどこまで享受し切れたのかはわからないけれど、昭和女子大学人見記念講堂でのあの日のことは生涯忘れない。会場の熱気から、指揮者の身ぶりと指揮者から発せられるそもそものオーラ、あるいはオーケストラの熱演と、すべてが最初にして最後のと言い切っていいほどの一夜。
残念なのは、諸事情で会場に到着するのが遅れ、開演ギリギリの時間だったゆえ、プログラムが既に売り切れで、手に入れることができなかったこと。いまだに後悔が残る。
ベートーヴェンの交響曲第4番と第7番。そして、アンコールはヨハン・シュトラウスの喜歌劇「こうもり」序曲、さらにポルカ「雷鳴と電光」。すべてがカルロス十八番の作品で、NHK教育テレビの放映録画でも十分に彼の至芸が堪能できる、時間を経ても色褪せることのない最高の名演奏が繰り広げられる。
・ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調作品92
カルロス・クライバー指揮バイエルン国立管弦楽団(1986.5.19Live)
音楽の勢いと熱量。
指揮中のカルロスの表情までしっかり観ることができるのが録画のメリット。
コンサート当日、音楽そのものは正直あっという間に過ぎ去ったという印象。それだけスピーディーで、颯爽とした演奏だった。それは、当時の僕の理想や刷り込みとは正反対のものだったからか、あるいは事前の期待が大きかったからか、多少の失望もありながら、最後には周囲のあまりの歓呼に僕は多大な影響を受け、一緒に行った友人の興奮の伝播も手伝って心が熱くなり、頭が真っ白になっていたことを思い出す。白眉は第2楽章アレグレット。カルロスの恍惚、また愉悦、すべてが音楽的だった。
