The Doors (1967) (50th Anniversary Deluxe Japanese Edition)を聴いて思ふ

本当は終わりなどないのである。
終わりは、すなわち始まり。
ベトナム戦争での焼き討ちのシーン、そして、ウィラード大尉によるカーツ大佐暗殺に至るシーンでのあまりに悲劇的な音楽は、まるで人生の黄昏時の美しさ。
フランシス・フォード・コッポラ監督の「地獄の黙示録」での、因果応報。何事も終わらなければ始まらない。

反乱とか無秩序、カオスに関することになら何でも興味がある。
特に、何の意味もないように思えた行動にね。
俺たちが描いている世界は文明の新しい辺境地帯なんだ。
卑猥で邪悪な世界なのさ。
(ジム・モリスン)
チャック・クリサファリ著/デイヴ・ディマーティノ協力/加藤律子翻訳「ドアーズ ムーンライト・ドライヴ」(シンコーミュージック)P39

中心にではなく、辺境にこそ答があるのかもしれない。
おそらく、史上最強のデビュー盤。リリースから50年を経た今もまったく新しい。
この普遍性が、ジム・モリスンという類い稀な詩人を創出したのだと思う。その言葉の重みは、ボブ・ディランに比肩、否、それ以上かも。

しかし、ドアーズの核になっていたのはモリソンの輝かしいカリスマ性ではない―彼の言葉だったのである。カリフォルニア州ヴェニスの屋上で暮らしていた1965年の夏、モリソンは刺激的な詩や歌詞を頑なに書き連ねていた。自分がバンドを結成することになるとは思ってもいなかったが、のちに彼自身が語ったところによると、頭の中で鳴り響いていたコンサートのために歌詞を書いていたらしい。そして、モリソンのノートがドアーズの歌に生まれ変わった時、本当のコンサートが始まった。
~同上書P36

創造と革新の発露。

・The Doors (1967) (50th Anniversary Deluxe Japanese Edition)

Personnel
Jim Morrison (vocals)
Ray Manzarek (organ, piano, bass)
Robby Krieger (guitar)
John Densmore (drums)

“Break On Through (To The Other Side)”の衝撃。
また、”The Crystal Ship”の幻想性と、喜びに溢れるクルト・ヴァイルの”Alabama Song (Whisky Bar)”。
そして、”Take It As It Comes”から”The End”に及ぶ陰陽一体の妙。

Time to live
Time to lie
Time to laugh
Time to die
Take it easy, baby
Take it as it comes
Don’t move too fast if you want your love to last
You’ve been movin’ much too fast

すべてに脱力だと。

He’s old
And his skin is cold
The West is the best
Get here and we’ll do the rest

仏教でいうところの「西方極楽浄土」を指すのだろうか、大蛇に乗って光の世界に誘われる「終末」は、やっぱり終わりの始めということだろう。
ところで、この50周年記念エディションには、オリジナル・モノラル盤のほか、1967年3月7日の”Live at the Matrix, San Francisco, CA”が収められている。初期ドアーズの粗削りながら初々しいライヴの素晴らしさを伝える1枚。

なぜなら、われわれを獣より上の人間の次元にあげてくれているのはまさしく言語であり、それ以外にないからである。しかしわれわれは言語や記号体系の恩恵を蒙ると同時にまたたやすくその犠牲者ともなりうる。言葉を効果的に扱う術を学ばなければならない。
オルダス・ハクスリー著/河村錠一郎訳「知覚の扉」(平凡社)P94

 

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