タリス・スコラーズ 2017年6月日本公演

考えることを許さない、音楽が脳幹にまで沁み渡る聖なる時間。
人間の声の力強さとハーモニーの美しさに惚れ惚れした。
すべてが教会のために作曲された中世の音楽は、特定の宗教への信仰を超え、魂に共鳴し、調和を促す。

今、世界では宗教絡みの物騒な事件が多発しているが、宗教と言われるものすべての源はひとつであることを人間はどうして忘れてしまったのだろう?誰もが現世の幸福と来世の安息を希求しているに違いなく、争い、互いに血を流すことの愚かさをどれだけの人々が理解しているというのか。
眼前で繰り広げられる祈りの音楽たちを耳にして、僕は思った。

国王の政策によって頻繁に宗教が替えられた英国の過去。血に染まった歴史はまた繰り返されるのか。何というナンセンス。

タリス・スコラーズ 2017年6月日本公演
エリザベス1世時代の英国国教会音楽の黄金時代と《モンテヴェルディ生誕450年記念》
2017年6月5日(月)19時開演
東京オペラシティ・コンサートホール

・タリス:ミサ曲「おさな子われらに生まれ」
・バード:めでたし、真実なる御体
・バード:義人らの魂は
・バード:聖所にて至高なる主を賛美もて祝え
休憩
・アレグリ:ミゼレーレ
・モンテヴェルディ:無伴奏による4声のミサ曲
・パレストリーナ:しもべらよ、主をたたえよ
~アンコール
・モンテヴェルディ:主にむかいて新しき歌を歌え
・ロッティ:十字架につけられ(10声による)
ピーター・フィリップス指揮タリス・スコラーズ
エイミー・ハワース(ソプラノ)
エミリー・アトキンソン(ソプラノ)
シャーロット・アシュリー(ソプラノ)
エロイズ・アーヴィング(ソプラノ)
キャロライン・トレヴァー(アルト)
エドワード・マクマラン(アルト)
サイモン・ウォール(テノール)
ガイ・カッティング(テノール)
ティム・スコット・ホワイトリー(バス)
ロバート・マクドナルド(バス)

トマス・タリスのミサ曲に思わずうなった。何という神々しさ。また、ウィリアム・バードの3曲はいずれもが安寧を歓喜する美しい音楽。
それにしても、素晴らしかったのはグレゴリオ・アレグリの「ミゼレーレ」。舞台に5人、客席2階後方に4人、そして、(僕の席からは確認できなかったのだけれど)おそらく1階上手側中央辺りにテノール一人を置く立体的配置の、音盤では絶対に体感することのできない音楽の共鳴と聴衆との一体化。例えば、客席後方のエイミー・ハワースのソプラノが声高に唱する「シオンに恵みをたまい」の後、10声で歌われる最終節の、涙なくして聴けない人声の大伽藍!

その時、御身正義のいけにえ、奉献、
および燔祭を受けいれたまわめ。
その時、御身の祭壇に子牛がささげられん。
(訳:今谷和徳)

感動した。
そして、クラウディオ・モンテヴェルディのミサ曲の崇高さもさることながら、極めつけは、ジョヴァンニ・ピエルルイジ・ダ・パレストリーナの「しもべらよ、主をたたえよ」。ソプラノを両翼に配し、各声部が団子のように絡みつく圧倒的音響!!
アンコールは2曲。7日の公演で採り上げられる予定のモンテヴェルディとアントニオ・ロッティ。ロッティの方は8声のためのものだが、今日のアンコールでは10声で歌うと指揮者の事前告知に聴衆は拍手喝采。ちなみに、ホワイエに設置されていたアンコール曲リストでは2曲目がトレンテスの「ヌンク・ディミティス」となっていたが、間違いなのでは?(ピーター・フィリップスは確かに「ロッティを10声でやる」と言ったように思うのだが)

 

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3 COMMENTS

雅之

>今、世界では宗教絡みの物騒な事件が多発しているが、宗教と言われるものすべての源はひとつであることを人間はどうして忘れてしまったのだろう?

だから、宗教はパラドックスなのですよ。人格者の岡本様にしても、無宗教者や無神論者を、あるいは「音楽という名の神」に理解を示さぬ者に対し、無意識的に軽蔑や差別をしていますよね。この、ご自分では否定される「無意識的」な部分が非常に厄介なのですよ。

>考えることを許さない、音楽が脳幹にまで沁み渡る聖なる時間。

そう、音楽にもスポーツにも宗教にも国家にも右翼にも左翼にも(どんな趣味にも!)人を洗脳するという特質がありますからね。理屈では何ともなりません。

このコメントに反論される、もうその瞬間から新たな対立と憎しみが芽生えます。半ば無意識的に・・・。

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岡本 浩和

>雅之様

>このコメントに反論される、もうその瞬間から新たな対立と憎しみが芽生えます。半ば無意識的に・・・。

おっしゃるとおりです。反論も何もございません。
ちなみに、僕は人格者ではありませんが・・・。(笑)

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