身近な人を大切にしよう!

mozart_masonic_kertesz.jpgそれが家族という身内であれ、恋人であれ、親友であれ、あるいは会社の同僚だとしても、身近な人を大切にすることはとても大事なことである。人は決してひとりで生きられない。誰かの助けを得て生かされており、また誰かを助けて生きている。持ちつ持たれつ、お互いが自律しながらかつ相互依存、与え合うことが重要だ。

モーツァルトの場合、1778年、22歳の時にまず母親を亡くしている。新しい職を求めて、パリ、マンハイムへの旅の最中の出来事である。厳しい父親に育てられたヴォルフガングにとって母の尋常ならない「愛」は必要不可欠な生きる上での、そして作品を創造する上での原動力であっただろう。父の代わりに共に旅をしたことがより彼女を衰弱させ、死期を早めたことは間違いなく、息子として相当に後悔したであろうことは疑う余地がない。

誰にとっても母の無条件の愛は重要だ。世知辛い今の世の中で虐待を続ける母親がいることは残念でならない。それだけ与えてもらっていない親が多いということなのか。そういう意味でも、コミュニケーション=ストロークの重要さを体感的に教示するセミナーの価値を再確認する。

また、モーツァルトにとって父の存在とは何だったのか?神童といわれた頃から「お金を生み出す」機械のように扱われた、そういう恨みつらみが根底に流れていたのかもしれない。1787年、31歳の時、父レオポルトが息を引きとるが、彼はその死に目に遭えていない。それどころか姉のナンネルから父親が危篤だという知らせも受けていないくらいだ。姉としては遺産を自分だけのものにしたいという願望があったようで、しかも自分に都合の良い遺書を書かせるために計算づくであえて知らせなかったという推測もあるようである。そこには幼い頃から色々な意味で目をかけられていた弟に対する嫉妬心もあったのだろう。持って生まれた「天才」に対するコンプレックスもあっただろう。父親の死をきっかけにし、長い束縛からやっと逃れることができた結果、より作風の精神性が高度になり、純化された音楽を生み出すようになったわけだから、人間関係のギクシャクを因として、より天才の創造力を飛躍させたという見方もできる。どんな事実もその人にとって必然であり、贈物だということだ。

さらに、抑圧的に育ったモーツァルトにとって、1784年末のフリーメイソン入会は途轍もなく大きなもので、マイナスもプラスも含め信じられないほどの「事実」を彼にもたらした。「自由、平等、友愛」をスローガンとしたこの秘密結社の思想そのものが、満たされないモーツァルトの心をより一層飛翔させ、そのため当時の聴衆の理解を超える領域の音楽を生み出すことになる。結果として、それが彼の首を絞めることにもなるのだが、一方で「愛」というものを初めて知り、後世の我々に驚くばかりの至宝の数々を残してくれたのだから、感謝せねばならない。彼は舞い上がったのだろう。だから、彼の書いたフリーメイソンのための音楽たちはどれも「愛」に満ちていて、美しい。

モーツァルト:フリーメイソンのための音楽(全曲)
ウェルナー・クレン(テノール)
トム・クラウセ(バス)
エディンバラ音楽祭合唱団
ゲオルク・フィッシャー(ピアノ&オルガン)
イシュトヴァン・ケルテス指揮ロンドン交響楽団

突如の水難事故で43歳という若さで亡くなったケルテスの音楽はこの上なく清澄で、愛に溢れている。僕は長年このフリーメイソン音楽集を愛聴するが、聴くたびに新しい発見があり、ますます「やる気」を起こさせてくれる不思議な力を持つ。それはフリーメイソンの魂そのものがモーツァルトの力を借りてこの音楽に乗り移り、昇華されているような、そんな印象を与えてくれる。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
>モーツァルトの場合、1778年、22歳の時にまず母親を亡くしている。
私も早くに母を亡くしていますので、モーツァルトの気持ちが痛いほど分かります。
>モーツァルトにとって父の存在とは何だったのか?神童といわれた頃から「お金を生み出す」機械のように扱われた、そういう恨みつらみが根底に流れていたのかもしれない。
この件で思い出すのは、マイケル・ジャクソンですね。モーツァルトにも父親の虐待はあったのでしょうか。また、モーツァルトの死を早めてのは梅毒治療のために使用した水銀による中毒だったという説もありますし、マイケル・ジャクソンの急死に、何となく似ています。
>抑圧的に育ったモーツァルトにとって、1784年末のフリーメイソン入会は途轍もなく大きなもので、マイナスもプラスも含め信じられないほどの「事実」を彼にもたらした。
>一方で「愛」というものを初めて知り、後世の我々に驚くばかりの至宝の数々を残してくれた
抑圧的に育ったマイケル・ジャクソンも、アフリカの飢餓と貧困層を解消する目的で作られた曲「We Are The World」などに関わりました。
改めて、岡本さんのブログを愛読されている皆さんに問いたい。モーツァルトやシューベルトやマイケル・ジャクソンやグレン・グールドの人生は、本当に不幸で悲惨だったとお思いですか?(突如の水難事故で43歳という若さで亡くなったケルテスも)
「人間の究極の幸せは四つです。愛されること、ほめられること、役に立つこと、必要とされること。働くことによって愛以外の三つの幸せが得られるのです」
「その愛も一生懸命働くことによって得られるものだと思う」
http://classic.opus-3.net/blog/cat29/17843/#comments
もしそうであるなら、こんなに世界中の人々に愛され、ほめられ、人類の役に立ち、必要とされた彼らは、何と幸せな人生だったことだろうと、私は畏敬の念と羨望のまなざしを向けるばかりです。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
確かにマイケル・ジャクソンとかぶりますね。
>モーツァルトやシューベルトやマイケル・ジャクソンやグレン・グールドの人生は、本当に不幸で悲惨だったとお思いですか?(突如の水難事故で43歳という若さで亡くなったケルテスも)
>こんなに世界中の人々に愛され、ほめられ、人類の役に立ち、必要とされた彼らは、何と幸せな人生だったことだろう
まったく同感です。使命を果たしてこの世を去ったということですね。そう考えると「早世」というのは勲章のようなものかもしれません。

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