アルバン・ベルク四重奏団のシュトラウス&ランナー作品集(1992.6録音)を聴いて思ふ

ハプスブルク王朝の黄昏時の憂愁。
100年、200年の時を経て、いまだ光輝満ちるウィンナ・ワルツの粋。
人生の最後には、哀感を帯びつつもどこか弾ける、普遍的な名曲が生まれるものなのか。
辺境的でありながら、音楽はどこまでも人間存在の、生きることの歓びを示す。宗教的なものなのか、あるいは身分の差異なのか、19世紀にあって日常的に支配されるた抑圧を発散する舞踏の力強さと、それを支える旋律、音響の無限美。踊れ、踊れ、いつまでも踊れ。

アレクサンダー・ウェインマンらの編曲によるヨーゼフ・ランナーやヨハン・シュトラウスⅠ世作品の4つの弦楽器が醸す古典美。そして、新ウィーン楽派の面々が、私的演奏協会のために室内楽用に編曲したヨハン・シュトラウスⅡ世作品に垣間見られる革新と保守の交叉、それでいて決して耳障りの悪くない詩情。何度も繰り返し聴きたくなる、いわば魔法の音楽箱。

2018年元旦を飾るに相応しい名曲たち。
恒例のウィーン・フィルハーモニーのニューイヤー・コンサートを尻目に、アルバン・ベルク四重奏団が録音した「シュトラウス&ランナー/ワルツ・ポルカ集」。何という心地良さ。

・ヨーゼフ・ランナー:「マリア」ワルツ作品143
・ヨーゼフ・ランナー:シュタイアー風舞曲作品165
・ヨハン・シュトラウスⅠ世:ワルツ「ウィーン情緒」作品116
・ヨハン・シュトラウスⅠ世:アンネン・ポルカ(好かれるポルカ)作品137
・ヨーゼフ・ランナー:ワルツ「求婚者」作品103
・ヨハン・シュトラウスⅠ世:ポルカ「アイゼレとバイゼレ―ジャンプ」作品202(アレクサンダー・ウェインマン編曲)
・ヨハン・シュトラウスⅡ世:宝石のワルツ作品418(アントン・ヴェーベルン編曲)
・ヨハン・シュトラウスⅡ世:ワルツ「酒・女・歌」作品333(アルバン・ベルク編曲)
・ヨハン・シュトラウスⅡ世:皇帝円舞曲作品437(アルノルト・シェーンベルク編曲)
アルバン・ベルク四重奏団
ギュンター・ピヒラー(第1ヴァイオリン)
ゲルハルト・シュルツ(第2ヴァイオリン)
トーマス・カクシュカ(ヴィオラ)
ヴァレンティン・エルベン(チェロ)
アロイス・ポッシュ(コントラバス)
アルフレート・ミッターホーファー(ハルモニウム)
ハインツ・マジィモレッツ(ピアノ)
ヴォルフガング・シュルツ(フルート)
エルンスト・オッテンザマー(クラリネット)(1992.6.11-20録音)

アルバン・ベルクとアントン・ヴェーベルンは、(競い合うように)弦楽四重奏にハルモニウムとピアノを追加した六重奏によってシュトラウスⅡ世の作品をアレンジしているが、二人の個性がそれぞれに反映された名編曲となっている。例えば、ハルモニウムの斬新な響きを前面に押し出し真新しい音楽を強調するヴェーベルンに対し、ベルクはあくまで弦楽器が主役で、ハルモニウムは伴奏楽器として機能させる。
そして、弦楽四重奏にピアノ、フルート、クラリネットを追加し、墨色でない、多色で表現されるシェーンベルクによる「皇帝円舞曲」の、気軽でありながら緊張感のある美演!アルバン・ベルク四重奏団と共にワルツを奏するメンバーの歓喜が目に浮かぶよう。

新年あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

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