新月の節分に・・・

mozart_40_celibidache_mpo.jpg新月で節分の日。今日は両親の49回目の結婚記念日だということを知った。初めて知ったわけではないが、誕生日と違って日常的に意識しているものでないから、父のブログを通じて知った。当たり前だが僕が生まれる前の話である。自分がこの世に存在する前の話というのは極めて興味深い。それが、自分自身の「生」の原点となる両親の結婚記念日となるとなおさら。偶然か必然か、2人が結婚したことで「僕」という存在につながることが不思議であると同時に得も言われぬ感慨が湧き起こってくる。

僕のクラシック音楽体験の原点は何だろう?家族で特にクラシック音楽を愛好していた人間がいたわけでもないのに、中学生の時にショパンの音楽を聴いてまず興味をもった。でも、真にのめり込むきっかけを作ってくれたのは、カール・ベームの指揮によるモーツァルトの交響曲第40番だったか。確かテレビのコマーシャルだったように記憶する。第1楽章のヴィオラの伴奏に始まり、例の憂いを帯びた第1主題が鳴り始めたその時、まさに金縛りにあった。こんなに素敵な音楽が世の中にあったんだ、大袈裟かもしれないが中学生の僕にとってはものすごい衝撃だった。

当時、即刻レコードを買い求めるなんていう「知恵」(笑)は働かなかった(¥2,500もするLPレコードを易々とは手に入れられなかった)。多分、最初はFMfanで見当をつけ、NHK-FMで放送される日を探し出してエアチェックしたように思う。それから何日、いや何ヶ月だろう・・・、とりつかれたようにこの音楽を聴いた。そして、十分作品を知り尽くした後に、(どういうわけか)メータ&ウィーン・フィルの最新録音盤を購入してこちらも繰り返し聴いた。今となっては世間的にも忘れられているだろう音盤のように思うが、とても優れた演奏だったように思う(手元に当時のLPは残してある。ただし、CDでは所有していないのでもう30年余り耳にしていない・・・CD化されたかどうかも知らない)。

モーツァルトの、このあまりにも有名な第40番シンフォニーについては何も語ることはない。とにかく僕のクラシック音楽体験の原点であり、今になっても時折聴いて涙が出るほど感動できる、そんな作品なのである。

「僕」という存在の原点である両親の結婚記念日に、クラシック音楽体験の原点である「モーツァルトの40番」。これまでいろいろな演奏を聴いてきたが、実に「意外」だった演奏を。

モーツァルト:交響曲第40番ト短調K.550(1994.3Live)
ハイドン:交響曲第92番ト長調Hob.Ⅰ-92「オックスフォード」(1993.2Live)
セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

晩年のチェリビダッケの演奏はどれも超スローテンポで、時に哲学的な意味を秘め、おそらく実演に触れないと真髄は絶対わからないだろうというものが多い。そんな中、久しぶりに取り出したこのモーツァルトに関しては相変わらず精緻であるものの、中庸で理想的なテンポ感を持つところが嬉しい。昨今では珍しく第1楽章提示の反復もないところが良い。実に聴き応えがある1枚だ。

ハイドンの「オックスフォード」シンフォニーも堅牢な構築美が素晴らしい。チェリが否定し続けた「音の缶詰」ながら、なかなか色艶の多彩な演奏。あらためて感じたのは、チェリビダッケの演奏はしっかりグラウンディングされていて、軸のぶれがまったくないということ。安定感が半端でない。


3 COMMENTS

雅之

こんばんは。
ご両親の結婚記念日おめでとうございます。
なんと、私の生まれ年なんですね、初めて気が付きました。
私は、マリー作曲『金婚式』でお祝いします。
http://www.youtube.com/watch?v=jaWU1arY60g&feature=fvw
この曲のCDでの私のおススメは、ギトリスのヴァイオリンによるもの(ピアノ 練木繁夫)です。
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E5%90%8D%E6%9B%B2%E9%9B%86%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%88-%E3%82%AE%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%B9-%E3%82%A4%E3%83%B4%E3%83%AA%E3%83%BC/dp/B000PGTE7E/ref=sr_1_1?s=music&ie=UTF8&qid=1296735100&sr=1-1
もの凄くロマンチックな演奏で驚かれると思いますので、機会がありましたら、ぜひ一度聴いてみてください。他の曲の演奏も最高にロマンチックで最高ですよ。
チェリビダッケのモーツァルトのト短調は未聴ですが、『金婚式』や『うれしいひなまつり』のように、短調でお祝いするのも味わい深いものだと思いました。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
>私の生まれ年なんですね、初めて気が付きました。
そうでしたか!!僕も気づきませんでした(笑)。
ちょうど誕生から1ヶ月ほど後のことですよね?
僕はまだ影も形もなかったですが、雅之さんはすでに地球上にいらしたんですね(笑)。
マリーの「金婚式」!!良い曲です。ありがとうございます。
ただし、ギトリスのものは未聴です。
これは興味深いですねぇ。「もの凄くロマンチックな演奏」なら余計に気になります。
>短調でお祝いするのも味わい深いものだと思いました。
おっしゃるとおりです!!

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アレグロ・コン・ブリオ~第3章 » Blog Archive » メータの「復活」

[…] クラシック音楽を聴き始めた頃、そう、僕がまだ高校生の頃だが、なぜかズービン・メータが指揮するモーツァルトの第40番交響曲と「アイネ・クライネ」がカップリングされたLPを購入し、繰り返し聴いていたことは以前も書いた。このモーツァルト、その時以来耳にしていないが、実に良かったという記憶しかない。今でこそ、ほとんどメータの音楽を聴くことはなくなったが、もう1枚当時の愛聴盤でとっておきのものがある。それから数年後、何の雑誌だったか覚えていないが、その中のエッセーで如月小春さんが絶賛していた録音で、彼女が2000年に亡くなったときにもふと思い出して、何度か繰り返し聴いた。久しぶりに、本当に久しぶりに聴いたが、これほど劇的で燃えに燃えたマーラーが他にあっただろうか・・・。 […]

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