ブーレーズのシェーンベルク「浄められた夜」ほかを聴いて思ふ

schoenberg_boulez297戦後70年の日。
20世紀の初頭に生まれ、演奏され続け、その時代を生き抜いた音楽を聴くたびに哀しみや怒りや、あるいはその裏にある喜びや希望や、創造者の様々な思考、感情が刷り込まれていることを思う。

シェーンベルクの初期の作品は、苦しい無調の習作を予期している聴き手にとっては、いつも心地よい衝撃として聞こえてくる。音楽は陶然とさせるような贅沢な音を溢れるほど放出するが、それはクリムトの金箔の肖像画やその他の「ユーゲントシュティル」の工芸品を思わせる。
アレックス・ロス著/柿沼敏江訳「20世紀を語る音楽」(みすず書房)P49

無調というのは調性の醸す美に対するアンチテーゼということ。間違いなく革新的ではあるけれど。
ブーレーズの「浄められた夜」を耳にして、一つ一つの楽器を明瞭に浮かび上がらせた演奏のあまりの生々しさと、音楽の官能を超えた凄まじい生命力と美を思った。

前途洋々の作曲家は、しかしながら、後年、ナチスに追われ、米国に亡命せざるを得なかった。その頃の彼の心底には、やはり希望よりも暗澹たる不安しかなかったよう。

シェーンベルク自身も自殺についてあれこれ考え、もがいていた。「たったひとつだけ望みたいことがある―あまり長生きしないということだ」とその夏の終わりに妻に宛てた手紙に書いている。
~同上書P52

音楽作品は、大衆に聴かれ、喜ばれ、流布してこそ価値がある。
その多くの機会を失した作曲家の絶望たるやいかばかりか。

シェーンベルク:
・7楽器の組曲作品29
・「浄められた夜」作品4(六重奏版)
・室内管弦楽のための3つの小品
ピエール・ブーレーズ指揮アンサンブル・アンテルコンタンポランのメンバー

1920年代中頃の7楽器の組曲には、まだまだ余裕と楽観がある。傑作だ。
とはいえ、無調への挑戦直後の周囲の反応の冷たさをシェーンベルクは苦悩のうちに受け止めざるを得なかった。

どうということのない人たちのなかにも熱い反抗心が沸き上がっているのが感じられる。そしていままで私のことを信頼してきてくれた人たちでさえも、このような展開の必然性を受け入れたくないと思っているのではないかと思う」とシェーンベルクは1910年1月にプログラム・ノートに記した。
~同上書P55

シェーンベルクの生涯は、苦悩一色だったと言っても言い過ぎではなかろう。
いつの時期のどの作品を耳にしても、実は悲哀に満ちる。
そして、そのことをピエール・ブーレーズは律儀に、そして見事に表現、再生する。

 

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1 COMMENT

畑山千恵子

マーラーはシェーンベルクを支持、援助しました。また、マーラーもシェーンベルクからブラームスの音楽を受容していったようです。
マーラーはブラームスを、
「視野の狭い小人。」
と酷評したものの、シェーンベルクの音楽がブラームスから学んだものがあったことに気づき、楽曲統一に向かっていきました。かつて酷評したブラームスの音楽をシェーンベルクを通じて受容するとは思わなかったかもしれませんね。

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