人間はやはり誰しも「潜在的な能力」を秘めているのだ、ということを改めて実感した。人は周りの状況や他人に左右される。しかし、最も影響が大きいのは「自分自身の中にある自らの声」なのだ。どんなに明確にモティベーションを持っても、その動機付けを完全否定するだけの大きなエネルギーがあると、目標は達成できないどころかむしろマイナスになってしまう。一方、ポジティブな声が充溢しているときは、その声が自分自身を後押ししてくれるものなのだ。
人は「他力」を得て、そして「自力」で成長していくものである。まずは、他人の賞賛であり、評価。そして、自ら生み出す行動と実績。全てはそこから始まるのだ。
ワーグナーは、史上稀に見る才能を持った音楽家であった。しかし、そういう能力を秘めた彼であっても若い頃は食えなかった。借金に追われた。そんな中でも自分自身のポリシーや夢を信じ、楽劇を書き続けた。そして、バイエルン国王ルートヴィヒ2世に出逢ったのである。ルートヴィヒは国費をかけてワーグナーのオペラ上演を支援した。そのお陰でワーグナーの楽劇を上演するためだけのバイロイト祝祭劇場が建設された。大変なことである。
ワーグナー:楽劇「ニーベルンクの指環」(1956)
ハンス・クナッパーツブッシュ指揮バイロイト祝祭管弦楽団&合唱団
ハンス・ホッター、アストリッド・ヴァルナイ、ヴォルフガング・ヴィントガッセン、グスタフ・ナイトリンガーほか
つい先年、突如発売された1956年バイロイト祝祭ライブ。モノラル録音ながら、「指環」の世界にどっぷりと浸れる超弩級の名盤。序夜「ラインの黄金」から第3夜「神々の黄昏」に至る全4部作は、音楽史上唯一無二といってもいいほどの傑作。全14時間ほど、お金や権力というものが人類を滅ぼすだけの強烈な「力」を秘めていることを訴えかける途轍もない代物。まことにクナッパーツブッシュは怪物である。
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