お盆が明けると何かと忙しくなる。今月の「早わかり古典音楽講座」のお題は「チャイコフスキー」。僕も若い頃は夢中になって聴いた記憶のあるクラシック音楽初心者にとっての登竜門的な作曲家である。6月にとりあげたドヴォルザークもそうなのだが、彼らの音楽は飽きやすい。しかし、いざ聴いてみると、さすがに100年以上前の音楽で今もって世界中で愛好されている楽曲。「馬鹿にする勿れ」、さすがに素晴らしい。
交響曲第5番ホ短調。もう何度聴いたことだろうか?古くはメンゲルベルクのLP、そして「定盤」のムラヴィンスキー、さらには朝比奈御大やコバケンの生演奏など。この曲は本当に良くできている。作曲者自身は、「あの中には何か嫌なものがあります。大袈裟に飾った色彩があります。人々が本能的に感じるような拵えもの的な不誠実さがあります」などとのたまう駄作らしいのだが、いやいや、さにあらず。CDで聴いてもそうだが、特に生演奏だとどんな指揮者やオケでもかなり感動させられてしまうのだからすごい。ここまで書いてふと思い出したが、この曲は以前小林研一郎盤をとりあげている。となると、今日もまた同曲異演盤を推そうというのだから我ながら呆れると同時にチャイコフスキーに頭を下げたくなる思いである。
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調作品64
エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団(1960)
20世紀ロシアの生んだ大指揮者ムラヴィンスキーは「神」である。1970年代に4度ほど来日公演が催されているが、残念ながら僕は生を聴けていない。大袈裟だが、人生の一大痛恨事といえるかもしれない。そのムラヴィンスキーがショスタコーヴィチの第5などと同様に得意にしていた音楽がこの曲。ムラヴィンスキーは若い頃から既に完成しており、何十種類もあるこの曲のCDを大抵聴いているが、解釈そのものは全く変わっていない。特に、金管を強調する傾向があり、CDで聴いてもオーケストラの尋常ではない「音圧」がビシビシ伝わってくる。
ところで、最晩年のゲネプロを収めたDVDも発売されており、こちらも出色の出来。最初から最後までほぼムラヴィンスキーの指揮姿だけを追っており、正座して聴かざるを得ないほどの緊張感が張り詰めている・・・。
※数あるムラヴィンのチャイ5の中で最も安心して聴けるのはやはり1960年録音のグラモフォン盤だろう。
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[…] 少しコルトレーンあたりを追究しようと思っていたけれど、今日はすでに思考停止状態なので止めにする。で、どうするか、いろいろ迷った挙句引っ張り出してきたのが、もうだいぶ前に手に入れておきながらなかなか言及できなかった音盤。 それはかのムラヴィンスキーが西側に演奏旅行した際に、グラモフォンの執拗な(?)要請により実現したというチャイコフスキーの交響曲集のEsotericのよるSACD。 初めて聴いたときはひっくり返った。もともと決して悪い音ではなかったものが、重低音の刺激といい、分厚い音圧といい、あっと驚く一層生々しい音質で蘇っていたものだから。 深夜なので大音量でかけるわけにはいかないけれど、たとえ音を絞り込んでも音像がとにかく鮮明で鮮烈で・・・。 […]