懐かしきブルッフ

新年度に入って俄然慌ただしくなる。やりたいこと、やるべきこと、そしてやらなければならないこと、ひとつひとつ丁寧に根気よく片づけていこうと思う。昨夜は新月だったので、一応(笑)直近の目標を明確にし、書き出した。イメージ力が極めて曖昧だったということがわかったので、ともかく具体的に輪郭までも鮮明に映像化することを肝に銘じ。

明後日からの新人研修のための資料の準備にほぼ一日追われた。事前にきちんとシミュレーションしながらひとつひとつリマインドし、必要物を収める。まだ見ぬ新人君たちの姿を想像しながらの作業は意外に楽しいもの。少なくとも東京においては震災によるダメージから少しずつ抜け出しつつあるようで、街も平静を取り戻し、いよいよ活気づいてきたような感じ。2011年度が本格的にスタートする。

ところで、1989年のチョン・キョンファ来日時のベートーヴェンとブラームスの協奏曲は、未来永劫語り継がれるであろう身震いするような名演奏だった。NHK関連会社が制作していたお陰で、当時そこで働いていた僕は運良く「仕事(つまり無料で)」でサントリーホールに入場し、世紀の一大イベントを目の当たりにすることができた。言葉で一切説明することのできない空前絶後のコンサート。若き日のキョンファの何かに憑かれたようにヴァイオリンを奏する様は、残された記録ビデオを観ても身震いするほど。

ちなみに、彼女はちょうど同じ時期にアムステルダムでテンシュテットの棒をバックにベートーヴェンを披露し、ライブ録音を残している。残念ながら、日本公演でのあの壮絶な演奏には及ばない。おそらく録音の限界というのも理由のひとつだろう。そう言えば昔、この時の演奏が海外でいち早くDVD化されていることを知り、ロンドンを旅した時にCDショップで発見して購入したものの、何とPAL方式で日本の機器では観ることが適わず、涙をのんだことを思い出した(結局この演奏、映像では観ていない)。日本盤は一時期ショップに出回ったように記憶するが、どういうわけか手に入れないまま今に至る(おそらく廃盤のままだろうが、何とか一度目にしてみたいものだ)。

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品61(1989.11.29-30&12.1Live)
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調作品26(1990.5.8-10)
チョン・キョンファ(ヴァイオリン)
クラウス・テンシュテット指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

このCD、カップリングの確信に満ちたブルッフが実に爽やかで良い。若い頃、耳にたこができるほど聴き、もはやほとんど耳にすることがない音楽だが、何とも今の時期にぴったり。

嗚呼、なぜか懐かしい・・・。


2 COMMENTS

雅之

こんばんは。

>少なくとも東京においては震災によるダメージから少しずつ抜け出しつつあるようで、街も平静を取り戻し、いよいよ活気づいてきたような感じ。

果たして、本当にそうなんでしょうか?
私には、原発事故後の日本は、
人間としての生存権さえ脅かされる地になっていると思っています。

作曲家で指揮者でもある 伊東 乾さんの発言より
・・・・・・3月11日に発生した震災と事故。災害のごく初期「放射物性物質の漏れが確認された」と報じられた時には、過剰反応も含めマスコミは大変な反応を見せていましたが、3月末、ないし4月に入ると「地下水中から高濃度の放射性物質検出」「冷却水がそのまま海に流れ出ていた可能性」といった初期とは比べものにならない大変な内容が報じられても、テレビ各局はお笑いやバラエティを流していて字幕スーパーも走りません。

 震災から数週間の段階でも、すでに各種の「慣れ」によって、情報に対する反応が鈍化してしまっているわけです。これが2年、3年と続くなら、明らかに社会全体の放射線情報への関心は低下してしまうでしょう。こうした「慣れ」によって、人が油断してしまう最大の理由は、情報の内容をよく理解していないからだと私は思います。・・・・・・

・・・・・・「悲観」も「楽観」も「先入観」の一種だと割り切って、両極論は捨てましょう。現実に起きていることをできるだけ正しく認識して、自分や家族の身を守るために適切に判断し行動を取ること。・・・・・

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110404/219288/

人間として、
そして生き物としての生存権さえも脅かされている現実の前には、
悲観論も楽観論も人生論も、へったくれもないと思います。
この愛する日本の国土が、
半減期の極めて長い放射性物質に汚染され続けている現実に、
やり場のない憤りを抑えようがないです。
真の復興は、原発事故問題が解決しない限りあり得ません。

http://www.ne.jp/asahi/jurassic/page/oyaji3/oyaji_03.htm#itoh

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
おっしゃるとおりですね。
どうしてこういうことを書いたのか、反省です。
もちろん、おっしゃるとおり原発問題が解決しない限り復興はありえないですよね。
東京が平静を取り戻しつつあるというのはあくまでも表面上、表層的なものにすぎません。街を闊歩する人々は意外に平気そうに歩いていますが、コンビニに入ればいまだに水や飲料は品薄状態ですし・・・。

おそらく、そうなったらいいのになんていう勝手な願望がついついそう書かせたのだと思います。
とはいえ、現実をきちんと見なきゃですね。

ご指摘ありがとうございます。

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