無名のイラストレーターBarry Godberが描いた「宮殿」の不気味な顔のジャケットは、“Schizoid Man”の衝撃的な音とともにそれまでのロック音楽の常識を打ち破り、以降のロック・アーティストたちに多大な影響を与え、40年以上を経た今の時代にも十分通用させる要因のひとつとなっている。一体誰がこんな絵を描けるのだろう?そして、このイラストをジャケットに採用しようとしたセンス、勇気・・・。
昨晩、久しぶりにアルバム1枚を通しで聴いた。何度聴いても1曲1曲が完璧で、しかもトータルな流れがこうでなければならず、この1枚だけでKing Crimsonは不滅であるといっても言い過ぎではない。

ところで、これまでの音盤歴で、ジャケットの「顔」と音楽作品の内容に衝撃を受けたのは何もこの音盤に限らない。例えば、20数年前のPhil Collinsのソロ・アルバムなどもポップでキャッチーなメロディの宝庫で、天才プロデューサー、フィル・コリンズの面目躍進というべき最高のアルバムとして僕の中にも記憶されている。そう、イラストであれ写真であれ、大きな顔を配したジャケットは即買ってみるべし。これが僕の中での名盤発掘の法則でもある(ほんとか?!・・・笑)。

いつぞやこの法則にあてはまる音盤をタワー・レコードで発見した時は、やっぱり即購入した。そして、その内容に間違いはなく、いまだに僕の愛聴盤のひとつとして棚に鎮座、君臨する。

・ショパン:ピアノ・ソナタ第2番変ロ短調作品35「葬送」
・ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ第2番変ロ短調作品36(1913年版を一部拝借した1931年版)
・ショパン:子守歌変ニ長調作品57
・舟歌嬰ヘ長調作品60
エレーヌ・グリモー(ピアノ)

「葬送」ソナタの冒頭を聴くなり硬直状態・・・。残された者の「もう二度と会えないのだという悲しみの感情」と、まるで「ただ眠っているだけかのような死者の安らかさ」が入り混じり、永遠の別れの無情さを映し出す。第3楽章のトリオなど涙なくして到底聴けぬ。フィナーレの意味深く過ぎ去る嵐・・・。グリモーは表現豊かだ。
オリジナル版と改訂版を折衷したラフマニノフも最初の一撃から卒倒もの。初めてホロヴィッツの演奏を聴いたとき(確か1982年のロンドンでの皇太子ご夫妻臨席の下でのリサイタルのテレビ中継だったと記憶する)くらいの、いやそれ以上の衝撃。決して大衆好みとは言えない、ある意味「陰気な」この音楽は、繰り返し耳にすることでやっとその魅力に開眼できるのだが、グリモーのこの演奏は実に初めて聴いたその瞬間から聴く者を虜にする魅力に溢れる。造形構築がしっかりしているからなのか、ともかく見通しが良い。本来ならば荒っぽさが前面に押し出される和音が、ため息の出るような優しさに満ちる。

付録の「子守歌」、「舟歌」も素敵。晩年のショパンの達観した心と、ジョルジュ・サンドとの不和から生じた悲しみ・・・。


3 COMMENTS

雅之

おはようございます。

>イラストであれ写真であれ、大きな顔を配したジャケットは即買ってみるべし。これが僕の中での名盤発掘の法則でもある

へぇ!!

では、私は、学生時代のほろ苦い思い出がいっぱい詰まった、
松田聖子『SQUALL』で対抗しましょうか(笑)。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/36963

『Pineapple』でもいいよ!
http://www.hmv.co.jp/product/detail/74033

他にも聖子、デカ顔ジャケットのアルバムは多いです。
じゃあ、買ってね!!

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