チューリヒ歌劇場2009「カヴァレリア・ルスティカーナ」を観て思ふ

mascagni_cavalleria_jose_cura_2009理性と感情が与えられているのが人間。それがあるがゆえに時に激情し、時に沈思黙考する。
こと恋愛となると、何が、誰が正しいのかまったくわからなくなる。まさに「恋は盲目」と言う通り。

俺はお前の嫉妬の奴隷ではない。

トゥリッドゥがサントゥッツァに吐き捨てる言葉である。
全編、美しい旋律溢れる音楽に対比し、物語は2組の男女のすれ違いの恋と嫉妬を軸にして進行する。世の中が、人間社会が、古より「親和」でない、いかに無意識かつ背面にマイナスの意図を伴った「ゲーム」の応酬で成り立っているのかを象徴するよう。
信仰心篤い人々は、事を犯しても懺悔をすれば救われるのだとどうやら勘違いしているようだ。

2009年のチューリヒ歌劇場の舞台を収録した映像を観た。
開放的で明朗で、いかにもイタリア歌劇。ヴェリズモ・オペラは直接的でまことにわかりやすい。

チューリヒ歌劇場2009
マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」
ホセ・クーラ(トゥリッドゥ、テノール)
リリアーナ・ニキテアヌ(ローラ、メゾ・ソプラノ)
シャイン・デイヴィッドソン(アルフィオ、バリトン)
イレーネ・フリードリ(ルチア、アルト)
パオレッタ・マッローク(サントゥッツァ、ソプラノ)
ステファノ・ランツァーニ指揮チューリヒ歌劇場管弦楽団&合唱団
グリシャ・アサガロフ(演出)

サントゥッツァを演じるマッロークの、歌唱以上に堂に入る演技。その表情も、その仕草も、本当に上手い。有名な「間奏曲」をバックにしての何とも言えぬ「落胆」と「悲哀」の面持ちが堪らないのだ。
ホセ・クーラの色気ある演技と歌も当然素晴らしい。母ルチアと対峙しての最後の歌唱「母さん、この酒は強いね」を聴いて思う。幼児期に満たされない欲求が、大人になった時に異常な爆発力を示すのである。恋人を眼前にして「お前の嫉妬の奴隷でない」と言い切ったのもトゥリッドゥであれば、母を前にして「俺のことを祝福してくれないか」と甘えるのも同じトゥリッドゥなのである。

母さん、この酒は強いね、
きっと今日は、飲み過ぎたんだろう。
表に行くよ。
でもその前に、俺のことを祝福してくれないか、
俺が兵隊に出発した日のように。
それに母さん、聞いてくれ。
もし俺が帰って来なかったら
母親代わりになって
サンタの面倒をみてくれ。
彼女とは結婚を約束したんだ。

2つの側面を見事に演じ切るホセ・クーラの好演。
男は永遠のマザコンなのである。

 

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