I Pooh:Un Po’del Nostro Tempo Migliore

久しぶりにイ・プーを聴いた。
冷たい春雨が過ぎ去って、空気が澄んで落ち着いた黄昏時、どうにもノスタルジックなイタリアのロック音楽が恋しくなった。
そういえばタルコフスキーの「ノスタルジア」の舞台も北イタリアだったが、どうして彼の地はあんなにも哀愁に満ちるのだろう・・・。

ヘンデルが生きた時代、彼がドイツを離れ、オペラを勉強すべくイタリア各地を回った時、そこはオーストリア・ハプスブルク家とフランス・ブルボン家が相対するスペイン継承戦争の激戦地となり、目を覆うほどの悲惨な廃れようだったらしい。いまだ統一国家でないイタリアにして、ルネサンス期の栄華はとっくに去り、町には浮浪者が溢れ、牢屋はいっぱいで、しかも捨子に溢れかえる有様だったと。それをまざまざと見せつけられたヘンデルのイタリアに対する憧れは潰え、この地に留まる理由がなくなった。

時は過ぎ、ヘンデル没後の18世紀後半はナポレオンによる支配。
なるほど、イタリアの歴史は抑圧と再生の繰り返しにあるようなものだ。
19世紀後半のイタリア統一戦争を経てようやくの国家統一。その後の普墺戦争や普仏戦争への参戦をはじめとする戦争に次ぐ戦争・・・。そして、20世紀のファシズムの誕生・・・(そういえば、その昔、ガリレオ・ガリレイなども火あぶりの刑に処されているくらいだからカトリックの締め付けの問題も根底に流れよう)。

芸術が負の美学だとするなら、歴史の紆余曲折を見るにつけ、ルネサンスがイタリアで興り、音楽もイタリアで盛んになった理由がわからなくもない。抑制、抑圧こそが、次なる爆発のエネルギーを生み出す源ということなのか。

閑話休題。
音楽講座のひとつのテーマが終わるとどうしても頭を切り替えたくなる。引き続きヘンデルの勉強は怠りないが、次のハイドンに向けても同様に頭を捻らないと。そのためにクラシック音楽から一旦あえて離れる。
イ・プーの音楽は明るい。しかし、そこには翳りがある。だからこそ聴けば聴くほど味が出る。どこをどのよいに切り取っても涙を誘う旋律に溢れるアルバムを・・・。

I Pooh:Un Po’del Nostro Tempo Migliore

Personnel
Roby Facchinetti (vocals, keyboards)
Stefano D’Orazio (vocals, drums)
Dodi Battaglia (vocals, guitar)
Red Canzian (vocals, bass)

誰がどうしてそう付けたのか、邦題を「ロマン組曲」という。1975年発表。全編がそのタイトル通り気味が悪いほど浪漫的で、聴いていて時にお尻が痒くなるほど(笑)。ちなみに、イ・プーの楽曲のほとんどを作曲している元リーダーのヴァレリオ・ネグリーニは今年の1月3日に亡くなっていたよう(知らなかった・・・)。

冒頭の”Preludio”は、「いかにも」というインスト曲。僕的には言うのも恥ずかしいのだが(笑)美しい。続く”Credo”は、冒頭の”Credo”絶唱にすべての想いが包まれる。何と「伝わる」言葉であることか。

Credo
Negli anni che ci aspettano
Nell’esaltante idea
Di te, di me
Io credo

ぼくは信じる
永い間待っていた
君の ぼくの
この興奮するような想いを
ぼくは信じる
(対訳:山岸伸一)

2 COMMENTS

KING-CHUNG

今まさに聴いています
ロマン組曲
中高生の頃FMで聴いて、レコード屋さんに走りました。
マイナーキイの曲が好みでは無いためもっぱら1、2、5、6を聴いていました。
今でも好み全く変わってないのに驚き。
愛のルネッサンス、ロマン組曲、プーラバー・・・・・
パンク以降産業ポップ化して行ったバンド達に急激に興味を無くしてしまったのですが、今はただの懐メロ爺ぃに成り果てました。
最近のも変わらずいいですね。
でもロマン組曲はフェイバリット作品です。

お邪魔しました

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岡本 浩和

>KING-CHUNG様
コメントありがとうございます。
イ・プーいいですよね。中高生の頃から聴かれているのですね。素晴らしいです。

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