「原初バブルと《メサイア》伝説~ヘンデルと幻の黄金時代」(山田由美子著)を読みながら、やっぱりあの時代も権力闘争と、その根底にある資本主義、つまり「金融」というものによって歴史が動かされており、これはますます「黒幕」というものについてもっと深く追究したいという想いが強くなっている。もちろん「黒幕」であるゆえその姿はどのように調べ尽くしても見えてこないだろうし、我々庶民に「真実」を知る権利などなく、どう転んでも推測の域を出ることはないだろうが、それでもそういう「空想」が滅法面白く、電車の中、歩きながら、あるいは湯に浸かりながらここのところ随分愉しませていただいている。
ハノーファー選帝侯ゲオルクのもとで宮廷楽長に着任後ほどなくイギリスを訪れたヘンデルであるが、ハノーファーでの仕事はほどほどにその頃からイギリスでの生活が主になる。あくまでヘンデルの自主独立心がそうさせたのだと僕は信じていたが、実はこれには裏があった。要は英国の王位継承問題がそこに絡んでおり、選帝侯ゲオルクの特命により「敵情視察」、つまり「スパイ」としての活動をヘンデルが賜っていたという衝撃の事実が先の書には記されている。当時のヨーロッパ社会においてはそういうことは当り前のことだったらしい。それを知って思い出したのが、またもやベートーヴェンのこと。数年前、密かに(笑)話題になった「秘密諜報員ベートーヴェン」(古山和男著)なる新書を読み、著者の優れた推理と、それを認めつつもあまりにナンセンスな物語が実に面白く、そういう可能性もありだなと膝を打った、あの時のことが脳裏に過ったのだ。
この書においては、いわゆる「不滅の恋人へのラブレター」として有名な手紙が、実はナポレオンのロシア遠征に絡む「暗号密書」だったという新説があらゆる角度から論じられている。驚いた。しかも、同じ頃に作曲された「エリーゼのために」に関して、従来のテレーゼという女性のために書かれた可憐な音楽という説を翻し、「エリゼに向けて」という意味、すなわち「エリジウム(自由を得た地上の楽園)に向けて」と解釈すべきなんだと古山氏は説くのである。なるほど、確かにシラーの頌歌に若い頃からシンパシーを覚えていたベートーヴェンならあり得る話だと合点がいくので尚更興味深い(この書、未読の方はぜひ手に取ってみてください。滅法面白いのです)。
ということで、今夜はベートーヴェンが例の「ラブレター」を認めたその頃に創作していた2つのシンフォニーからひとつを。この音楽のもつ極めつけの「推進力」には、戦争や失恋という痛手からの解放という解釈だけからは読み取ることのできないエネルギーの放出を感じるのは僕だけか。「レオノーレ」が「フィデリオ」に至り、単に妻が夫を救い出す夫婦愛の物語から人類を危機から救い出すという壮大な人類愛のドラマに転化したその事実と同様の思想が「エリーゼ」にも第7交響曲(第8番も)にもあるのでは?そんな妄想を含みつつ・・・。
ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調作品92
朝比奈隆指揮大阪フィルハーモニー交響楽団(1986.10.7Live)
チェコスロヴァキアのスロバークフィルハーモニーホールでの実況録音。今はなき朝比奈協会が会員向けに頒布した非売品CD。妙に残響の多い録音で、若干不自然さを感じるので音響上何らかのコントロールがあるのかもしれないが、ともかく最高の名演奏がここにある。それに煩わしい提示部の反復などがカットされ(珍しく)、全曲41分少々で駆け抜ける怒涛の「舞踏の聖化」。
朝比奈先生の第7番で忘れられないのはやっぱり89年の新日本フィルとのツィクルス。あの日のことは本当に忘れられない。感動のあまり同伴した友人たちにご馳走してあげたくらい。懐かしい思い出であると同時に、その時の感動をつい思い出した。この音盤は、それほどに朝比奈隆の輝ける記録であると確信する。
こうしてみると「音楽」の分野だけでも実に様々な人が様々な空想力や推測を働かせて愉しんでいるんですね。何処の分野でも黒幕話は面白いですね。それにしても「感動のあまり同伴した友人たちにご馳走してあげたくらい」というコンブリオさんはほんとに良い人なんですね。同時に「ふみさん」の博学なコメントにもいつも驚いています。先日は(明らかに年下だと思われたので)「ふみくん」などと馴れ馴れしく呼んでしまってごめんなさい。ここを借りてお詫びいたします。
>Judy様
>「感動のあまり同伴した友人たちにご馳走してあげたくらい」というコンブリオさんはほんとに良い人なんですね。
いえいえ、もう心底感動してしまいまして・・・。若気の至りということもあったと思います(笑)
ちなみに、ふみ君はいまだ20代半ばのイケメンクラヲタなんです。かれこれ6,7年前に知り合ったのですが、まぁ驚くほどクラシックに精通しておりまして。クラシックを聴くために1年間ロンドンに留学したというほどの強者です。あくまでヨーロッパ中で音楽を聴くためにですよ・・・。僕も彼からはいろいろと教わっているほどです。
しかし、Judyさんは「ふみくん」で良いと思います(笑)。彼はそんなこと気にせず、むしろ気楽にそう呼んでいただけることが嬉しく感じると思います。(笑)
ふ〜む、クラオタってなんだか最初はわかりませんでしたが、クラシックオタクのことですね。ふみ君(、、、と岡本さんの許可でこう呼ばせて頂きます)は20代でイケメン、、、いいですね。ふみ君がいつか「Grimaudのコンサートの後ろに僕が写っています。」って書いていたのでオーケストラで弾いている人だとばかり思っていました。若くてイケメンでそしてクラシックを聴くためにヨーロッパに乗り込んだなんて本当に頼もしい限りです。私も若い頃にこういうこと考えつきたかった!実はふみ君の以前のコメントで「ヤフオク」って書いてあって意味がぜんぜんわからなかったのです。最近やっとわかりました。Yahoo Auctionなんですね。我慢しないで本人に聞けばよかったです。私は依然としてGrimaudに浸りっぱなしですので、ほかの音楽はこのBlogに頼っております。GrimaudのBach’s Chaconne、、、まったく飽きません。彼女以外ではRubinsteinしか並ぶものがないくらい好きです。まさに病膏肓に入るです。人に会っておしゃべりしているよりは、はやく家に帰ってCDを聴くかYoutubeしたいと思うようになってしまいました。すべてはこのBlogのせいです。(笑)
>Judy様
グリモーの「シャコンヌ」は良いですねぇ。しばらく聴いていなかったので久しぶりに聴いてみます。
>はやく家に帰ってCDを聴くかYoutubeしたいと思うようになってしまいました。すべてはこのBlogのせいです。
お褒めいただきありがとうございます。
僕はひとりでも多くの方にクラシック音楽に目覚めていただきたいと思って記事を毎日書いておりますので・・・(笑)。
Judyさん
いえいえ、そんな博学だなんて恐縮です。凄く狭い世界での話だけですから、色々突っ込まれると浅い知識だと いうことがばれます・・・笑
そして、恐らくJudyさんより年下ですし、もう「ふみくん」でも「ふみ」でも何でもお呼び頂ければと思います。
個人的には気軽に何でも呼んで頂いて、何でも胸襟を開いて会話できたら光栄です。
留学といってもイギリスに1年間いただけでJudyさんのように長期間住んでいたわけではありませんし、英語も
もう7年程遠ざかっていますので全く聞き取れません、話せません。笑
ただ、確かにほぼ毎日のペースでクラシックコンサートには通っていました・・・あちらはコンサートの垣根が低く、 金額も安いですので学生の僕でもいくらでも行くことができましたし、ロンドンにはロンドン響、ロンドン・フィル、
フィルハーモニア管、ロイヤルフィル等の素晴らしいオーケストラが多くありましたので環境が恵まれていたのも
ありました。恐らくJudyさんの住まれているアメリカも同様かなぁと思いますがいかがでしょう。
後、ヤフオクはチケットもそうですが、正規盤として販売されていないライブ盤CD等も販売していて、かなり貴重
なものもあったりしますので、ちょこちょこ見てみると楽しいかも知れません。
そして、グリモーがお好きだということ、私全く同じくです。恐らく彼女の正規盤CDは若かりし頃のも含め、ほぼ
全て持っているはず。彼女は既にレパートリーをかなり絞っているため、どの演奏も素晴らしいですね。年間の
コンサート数も確かコントロールしていたはずです。CDが残念ながら全て実家にあるため、お貸ししたりする事
ができませんが、機会がありましたら色々とお聴きになってみると良いと思います。
色々とYoutubeにも素晴らしい演奏が落ちていますので、適当にピックアップしてみました。恐らく、既に聴かれ たものだと思いますが・・・
ラヴェル:ピアノ協奏曲
http://www.youtube.com/watch?v=4BkCuQdpuNU
バルトーク:ピアノ協奏曲第3番
http://www.youtube.com/watch?v=2Pxma8tmbBM
東京リサイタル
http://www.youtube.com/watch?v=TIRtGrKM-8U
ちなみに、Bach’s Chaconneは以下の演奏もお時間があれば。
ミケランジェリ
http://www.youtubecom/watch?v=TnoSeI3APSg
→僕の最愛するピアニストの一人です。響きの透明性、打鍵の正確性、崇高性、全てが恐るべき程完璧です。
そして乗じてこれも紹介しちゃったり・・・冒頭からして神掛かっていますので、是非お時間があればちらっと
ご覧になってみて下さい。
http://www.youtube.com/watch?v=hguZfdvT4sE
長文になってしまい、すみません。
今後も色々と交流していけたらと思っておりますので、どうぞ宜しくお願い致します。
岡本さん
またまた、そんなお褒め頂いて・・・恐縮です。僕から教えている事など一つも無いじゃないですか!笑
僕が毎日毎日勉強させて頂いているだけですよ、本当に。
最近なんて特にそもそも知らない作曲家の名前が連発されていて勉強になるばかりです。
今度、是非またコンサート→飲み、の流れで宜しくお願い致します。笑
また、勝手におすすめCDを持参させて頂きます。
>ふみ君
いやいや、謙遜しなくていいよ。
実際教えてもらってることは多いから。
教えてることも多いけど。(笑)
コンサート⇒飲み、またやりましょう。
良いのあったらお声掛けください。
岡本さん&ふみ君、
実を言うとBlogの仕掛けがいまいちわかっていないのですが、ふみ君からも長い返答をいただきそれに返事を書きたいものの、こういうやりとりしていたらコンブリオのページを私物化するようで気がひけるのです。だからメールにします。
(岡本さん、ふみくんのメールへよろしくご転送をお願いします。)
ふみくん、
自分のもっている貴重なGirmaudの「CDが残念ながら全て実家にあるため、お貸ししたりする事
ができませんが、機会がありましたら色々とお聴きになってみると良いと思います。」、、、とは!もう、クラシック好きっていうだけでこんなに深切になれるとは思えませんので、ふみ君は岡本さんが「またコンサートにいったり飲んだりしたいな〜」という相手としてふさわしい若者だということがよくわかりました。感激です。お気持ちだけで嬉しいです。GrimaudのCDは初めは図書館で借りて聴いていましたが、やっぱりこんなに好きな演奏家のは自前で買うべきだと判断して、いまのところCredo, Beethoven,Duo, Mozartが手元にあります。BachをAmazonで注文したところ郵便屋の手違いで未だに届かず(赤の他人の住所に行ってしまった可能性あり)MozartからはiTuneにすることにしました。でも正直言って物理的にCDの形で手元にある方がなんとなく落ち着きます。本も一回英語で読んだのですが、あまりにも内容が多岐にわたって難しいので日本のアマゾンから日本語版を入手して読みました。Youtubeのページもいろいろありがとう。GrimaudはInterviewでも音楽やオオカミに対する思いをよどみなく表現できる人なので、面白いですね。スイスのTV番組ではドイツ語でInterviewに答えていてちょっとわからなそうに首をかしげたら司会者の男が「英語のほうが楽なら英語でもいいですよ。」って、そしたら(彼女は余程の負けず嫌いですね)なおさらそこから先は徹底的にドイツ語で答えていた(様子、、、私はドイツ語まったくわかりませんので)なのもまた微笑ましかった
です。いまからおすすめのミケランジェリのChaconneを聴きます。楽しみです。
>Judy様
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よってメールで転送しなくてもふみ君は(というか誰でも)読めるような状態ですが・・・。(笑)
特に問題はないのでこのままにしておきます。