David Bowie “The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars”を聴いて思ふ

david_bowie_ziggy_stardust41820世紀の音楽的巨星が次から次へと堕ちてゆく。
ドラッグとともに独自の頂点を築いた天才。しばらく音沙汰がなかったことすら忘れていたが、この人の死もまた脳天に響いた。あまりに残念。

一方、デヴィッドの方は、ドラッグ漬けだった。「昔は新しいドラッグが出る度にやってた。死にかけたこともあるよ」ボウイは言う。1975年、そして、(ボウイが「人生で最悪の1年半だった」という)1976年、ジギー・スターダストとザ・シン・ホワイト・デュークの役づくりに没頭しすぎたボウイは、自分を現代の救世主と思い込むようになった。(1980年に、ボウイに「あんな場所は、地球上から消えたほうがいい」と言わせた)ロサンジェルスで、コケインびたりになった後、キリスト教、アーサー王伝説、ヒットラー主義に、興味を持ちだしたボウイは、1975年、ナチ式の敬礼をしながら、ヴィクトリア駅に黒塗りのベンツを乗りつけるという奇行に走った。
ゲーリー・ハーマン著/中江昌彦訳「ロックンロール・バビロン」(白夜書房)P80

“Five Years”
ジギー・スターダストの物語の始まり。
たった今、ニュースが出た。僕たちには5年間の嘆き悲しむ猶予があるのだと。
ニュースキャスターが泣いて言う。地球は本当に終わろうとしているのだと。

ドラッグの影響からか、ボウイは自身を救世主に設定した。

続く”Soul Love”
何と切なく、哀しい楽曲であることか。救世主ジギーの孤独が暗に歌われる。
僕にあるのは愛への愛だけであり、その愛は愛することではない。

”Moonage Daydream”の真実。
ドラッグ中毒だろうと何だろうとボウイの歌は実に的を射る。
嘘をつくなよ、本当のことを僕にさらけ出せ。
愛といういわば人間の教会、そういう神聖な場所ではそうすべきだよ。

ついに救世主の到来、冒頭アコースティック・ギターのイントロから思わず唸る。
名曲”Starman”は真に美しい。“It Ain’t Easy”を挟み、また”Lady Stardust”の優しく中性的な響き。スターダストはボウイ同様、両性具有。レディ・スターダストが彼の歌、暗黒と不信の歌を歌った。

David Bowie:The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars (1972)

Personnel
David Bowie (vocal, guitars, saxophone)
Mick Ronson (guitar, piano, vocal)
Trevor Bolder (bass)
Mick Woodmansey (drums)
Rick Wakeman (harpsichord)
Dana Gillespie (backing vocals)

タイトルにもなった”Ziggy Stardust”ではこの物語の顛末が語られる。ジギーはギター・ヒーローだったが、自身を救世主と勘違いしたばっかりにファンに殺されたらしい。
エゴとセックスするうちジギーは自意識過剰に陥った。

嗚呼、何と身につまされることか・・・。
数ある傑作の中で一際光る名盤こそ”The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars”。こんなアルバムを生み出せるのなら薬漬けだろうとバイ・セクシャルだろうと許す。

デヴィッド・ボウイが死んだ。合掌。

 

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3 COMMENTS

雅之

今日は「成人の日」。
私はデヴィッド・ボウイのよい聴き手ではありませんでしたが、私が成人したころに制作された彼の主演映画に、「戦場のメリークリスマス」がありました(映画館で観たのは21歳になってから)。坂本龍一との妖艶なシーンが強く脳裏に焼き付いています。

共演したビートたけしとは、誕生日がたった10日違いなのですね。デヴィッド・ボウイ( 1947年1月8日 – )ビートたけし(1947年1月18日 – )。

昨日、たまたま電車の中で読んでいたのは、北野 武(著)『新しい道徳 「いいことをすると気持ちがいい」のはなぜか』(幻冬舎) 

http://www.amazon.co.jp/%E6%96%B0%E3%81%97%E3%81%84%E9%81%93%E5%BE%B3-%E3%80%8C%E3%81%84%E3%81%84%E3%81%93%E3%81%A8%E3%82%92%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%A8%E6%B0%97%E6%8C%81%E3%81%A1%E3%81%8C%E3%81%84%E3%81%84%E3%80%8D%E3%81%AE%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%9C%E3%81%8B-%E5%8C%97%E9%87%8E-%E6%AD%A6/dp/4344028155/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1452512769&sr=1-1&keywords=%E3%81%9F%E3%81%91%E3%81%97

でした(これも一種のシンクロニシティーか・・・笑)。簡単な本ですが、しごく真っ当なことが書いてあり、強く共感しました。

>ドラッグとともに独自の頂点を築いた天才。
 
 この世にはたくさんの競争があるけど、遅い方が勝ちという競争はひとつもない。
 死が人生のゴールなら、早くそのゴールに辿り着いた奴が勝ちなんじゃないかという気もする。好きなことをやるだけやって、さっさと死んでしまう奴が、いちばん優秀なんじゃないか。
 俺はいつまでも生き長らえたくないし、一生懸命働いて、仕事ができなくなったら、阿片窟か何かで夢でも見ながら死ぬのがいちばんいいと思っている。
 年金を削られて、介護保険だなんだってまた金を取られて、喰うや喰わずで苦しみながら生きていかなきゃいけないなんて、いったい誰が決めたんだろう。なんで、そんなことを他人から強制されなきゃいけないのか。
 死ぬ時期は、自分で決めていいんじゃないの。
 国立の阿片窟かなんかを作って、年寄りはそこで死ぬまで自由に麻薬をどうぞってことにできないものか。人生の最後は、誰もが気持ちよくなって死ねるとなれば、みんな生きるのが楽になるんじゃないか。
 いや、これはあくまでも、俺の妄想だけど・・・・・・。同上書P172~P173

「いや、たけしさん、おっしゃること、ごもっとも!!!」と、(思わず)思いました(爆)。

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岡本 浩和

>雅之様
完璧なシンクロですね!(笑)
やっぱりビートたけしはすごいですわ。
何気な言葉のひとつひとつが実に深い。
ご紹介ありがとうございます!

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