清楚で理知的で哀しくて・・・クララ・シューマンのピアノ曲全集

昨晩一番衝撃を受けたのは、最後のクララによる「前奏曲集」抜粋かもしれない。
残念ながらこれらは僕の手持ちの「ピアノ曲全集」には収録されていない模様。おそらく、コンサート時の繋ぎの役割でクララ自身が常套手段として即興的に弾いていたものをある時に譜面に起こして、それが残っているのだろうが(出版されているのかもしれないし)、とにもかくにも夫ロベルトの作品をより理解するためのクララならではの聴衆へのサービスのようなものなのだろうと僕は思う。
「幻想小曲集」からの2曲(「夕べに」と「飛翔」)などは高校生の時分から繰り返し聴いて、大好きな曲だということもあるが、その音楽にクララが前奏曲をつけていたということを初めて知り、まずは吃驚感動、聴いてみてその素晴らしさに2度感激した。

職業ピアニストとして全ヨーロッパを席巻するほどの人気を誇り、教育者としても能力を発揮したクララの作曲作品が悪かろうはずがない。そのことを実際に耳で確認できたことにまずは感謝だ。

ということで、「ピアノ曲全集」を聴いているが、はたと耳に残ったのが「前奏曲とフーガ」なる作品。「前奏曲」を入れると合計で8つのピースが残されているようだが、いずれもバッハに負けず劣らじという内容。もちろんある時期ロベルトとともにバッハ研究に没頭したことは有名な話なので(「バッハの主題による3つのフーガ」などは涙もの!)、こういう作品を残すのは当然なのだろうが、おそらくロベルトも舌を巻くほど清楚で理知的で哀しくて・・・。

クララ・シューマン:ピアノ作品全集
ヨーゼフ・デ・ベーンホーヴァー(ピアノ)

1990年~91年の録音。20年ほど前の録音なのだがいまひとつ音質は良いとは言えないというのが難。とはいえ、この音盤の価値はともかくクララのピアノ作品を全部網羅しているという点(前述の「前奏曲」などは未収録だけれど)。
どっぷりとクララの音楽に浸りたいときに、僕はこの3枚のセットを一気に聴く(4時間弱かかるけれど意外に時間を感じさせずあっという間)。
ぼーっと「ながら」で聴いていても、ある瞬間どきっとするメロディに出くわす。
それは昨日のコンサートでもそうだった。多分(だけれど)、ロベルトへの想いがいっぱい詰まった音楽たちなのかも。ここにはヨハネス・ブラームスの影は・・・ない。

それにしてももう一度あの「前奏曲集」を聴いてみたい。
というより、ロベルトの作品と対にして聴いてみたい。
音盤はないのだろうか・・・。


4 COMMENTS

雅之

こんばんは。

ご紹介のクララによる前奏曲は未聴ですが、これは聴いてみたいです。実演で聴くことができた岡本さんがじつに羨ましいです。

クララ・シューマンはご紹介の全集(私もこのCD所有していますが、まだじっくり聴けていません)に入っている曲以外でも、名演奏家・作曲家としての痕跡をあちこちに数多く残しているようですね。モーツァルトやベートーヴェンのピアノ協奏曲のカデンツァも、そのひとつですね。

昨年購入した、いろいろ空想できる興味深いSACDを。

Mozart :Piano Concerto, 20, : Rische(P)Griffiths / Cologne Rso +cadenzas
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3534996
第一楽章カデンツァを、リッシェ(ピアニスト自身の作)、ブゾーニ、ブラームス、フンメル、ベートーヴェン、第三楽章カデンツァを、リッシェ、ブゾーニ、クララ・シューマン、F.X.モーツアルト、ベートーヴェン作で、聴き比べができる貴重な盤です。

クララ・シューマンによる第三楽章カデンツァ、じつに彼女らしいロマンチックな愛おしさを、ほんのひと時ですが満喫できます。クララが弾くモーツァルトの協奏曲、聴いてみたかったですね。

第一楽章をブラームスのカデンツァで、第三楽章をクララ・シューマンのカデンツァで演奏した、モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番を、だれか実演で弾かないものですかね。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
ご紹介のSACD興味深いです。
クララのカデンツァによるモーツァルトやベートーヴェンをずっと聴いてみたいと思っていましたが、こういう音盤があるとは知りませんでした。

>第一楽章をブラームスのカデンツァで、第三楽章をクララ・シューマンのカデンツァで演奏した、モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番

いやあ、想像するだけで震えが止まりません(笑)

ありがとうございます。

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畑山千恵子

私は、昨年、川島ひろ子さんのローベルト、クラーラ・シューマン夫妻の作品によるリサイタルを聴きにいきました。川島さんは、クラーラ研究を続けておられまして, CDも出しておられます。ただ、残念なことに弾きこぼしなどが多く、内容的には評価できませんでした。
メンデルスゾーン、シューマンは、ドイツで本格的な書簡全集が出まして、新しい研究のための資料として貴重です。ことに、クラーラのものは、ベルトルト・リッツマンによるものは、シューマン夫妻の娘マリーエ、オイゲニーの監修によるものですから、新しい書簡集では新たな発見が出てきそうです。

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岡本 浩和

>畑山千恵子様
こんにちは。
ロベルト&クララ夫妻の作品でのコンサート、興味深いですね。
こういうものは演奏の技術的な瑕などを超えて、企画そのものが大いに意義あるものだと思います。
原書での書簡集も面白そうですね(生憎、ドイツ語を原書で読むにはまだまだ僕は力不足ですが)。
ありがとうございます。

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