大宇宙が響き始める様子を想像してください

人事を尽くして天命を待つ。
ともかく何でも思いっ切りやることだな、と。この「思いっ切り」というのがミソ。「思い」を断ち切って、すなわち「思考」するのをやめて何事もやってみることかな。
勝手に想像、そして判断しないことだ。やってみてその結果をみて、そしてまた次の策を練って次の行動を起こす。不都合があれば問題提起があるし、都合が良ければ前進するし・・・。

空前絶後のシンフォニーの初演当時の様子はどんなだったのだろう。作曲家自身の棒により1910年9月12日にミュンヘンで初演された8番目の交響曲は大成功を収めたという。初演の大成功というのは作曲者にとってこの曲が初めてだったのだと。わかる気がする。
決して一般大衆に迎合した作品とは言えないけれど、それでも耳触りも含め、第2部のクライマックスに向けて盛り上がってゆく様はどんな人をも巻き込む官能に溢れる。

「大宇宙が響き始める様子を想像してください。それは、もはや人間の声ではなくて、太陽の運行の声です」

ゲルギエフ&ロッテルダム・フィルのコンセルトヘボウでの演奏会の模様を収めた録画を観た。日中の仕事中から音だけでもと繰り返し流し、聴いた。月並みな言葉しか出てこないけれど、とても美しく心を動かされる音楽だ。

マーラー:交響曲第8番変ホ長調「千人の交響曲」
クリスティーヌ・ブルワー、ソイレ・イソコスキ、ユ・ヒョナ(ソプラノ)
ビルギット・レンメルト、アリス・クート(メゾ・ソプラノ)
ヒュー・スミス(テノール)
アルベルト・ドーメン、ヨハン・ロイター(バリトン)
放送少年合唱団
ラインモント少年合唱団
ハーグ水兵隊少年合唱団
オランダ放送合唱団
ベルリン放送合唱団
ワレリー・ゲルギエフ指揮ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団(2005.1.7&8Live)

すべて無常のものは
ただ映像に過ぎない
永遠に女性的なものが
我らを引いて昇らせる

合唱とオーケストラによる壮大なラスト・シーンに釘付けになる。マーラーの音楽は、それがどんなに聖なる宇宙鳴動を表現しようとあまりに俗世的だ。特に、ゲルギエフが演るとあまりに人間的な側面にフォーカスされ、マーラーが当初意図した「エロスの誕生」という趣旨を即座に納得させる説得力に溢れる。

ゲルギエフの演奏は賛否両論だけれど、こういうマーラーを聴かされると僕は手放しで賞賛できる。あまりに野獣的で汗臭いところが毛嫌いされる理由だろうが、そもそも音楽というもの自体が交歓の儀式であり、人と人とが直接に出逢う場でもあるのだから。中でもマーラーはそう。


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