面白かったのは、私はしばしば取材のときに相手に対して批判的になることがあるのだが、それに対する反応が各国で違うこと。いちばん腹を立てるのはノルウェー人で、彼らは同時に非常にきちんとした意見を持った人たちだ。スウェーデン人も意見のある人たちだが、彼らは自分たち自身のことについて自虐的なほど厳しい。反対にデンマーク人は、自分たちのことが大好きだ。彼らは世界でいちばんハッピーな人たちだね。
「世界一幸せなデンマーク人」と日本人の違い
~東洋経済ONLINE 2017年1月28日
上記は、英国人フード・トラベルジャーナリストであるマイケル・ブースさんの言葉である。そこにある国々を北欧と一括りにはできないということ。狭い日本ですら関東と関西では習慣も文化も大きく異なるのだから。
デンマークの作曲家カール・ニールセンの作品の大らかさというか、翳のない、あまりに肯定的過ぎる印象に、僕はこれまでシンパシーをさほど覚えなかったのだけれど、その理由が何となくわかったように思う。フィンランドのシベリウスともノルウェーのグリーグとも明らかに違う音楽性は、この自意識過剰的(?)楽天主義によるところが大きいのかもしれない。
1911年10月22日の講演をもとにした内村鑑三の「デンマルク国の話」をひもとく。
デンマークは実に牛乳をもって立つ国であるということができます。トーヴァルセンを出して世界の彫刻術に一新紀元を劃し、アンデルセンを出して近世お伽噺の元祖たらしめ、キェルケゴールを出して無教会主義のキリスト教を世界に唱えしめしデンマークは、実に柔和なる牝牛の産をもって立つ小にして静かなる国であります。・・・中略・・・戦いに敗れて精神に敗れない民が真に偉大なる民であります、宗教といい信仰といい、国運隆盛のときにはなんの必要もないものであります。しかしながら国に幽暗の臨みしときに精神の光が必要になるのであります。国の興ると亡ぶるとはこのときに定まるのであります。どんな国にもときには暗黒が臨みます。そのとき、これに打ち勝つことのできる民が、その民が永久に栄ゆるのであります。
~内村鑑三「デンマルク国の話―信仰と樹木とをもって国を救いし話」
さすがにキリスト教伝道者だけあり、少々片寄りのある言葉ではあるが、民俗に通底する信仰心がデンマークという国の強さだと彼は言う。そこに生成した芸術作品の多くには偉大なる精神が間違いなく宿るのだと。
例えば、(上記講演と同じ頃に作曲された)ニールセンの交響曲第3番第2楽章アンダンテ・パストラーレに木霊する「パルジファル」の調べ。また、バリトンとソプラノによるヴォカリーズの祈り。どこかとりとめのない、とらえがたい音調が続くも、時折響く懐かしい旋律やリズムの饗宴がニールセンを聴く醍醐味なのである。
ニールセン:
・交響曲第3番作品27「拡がり」(1910-11)(1989.8.17-19録音)
・交響曲第4番作品29「滅ぼし得ざるもの」(1914-16)(1987.6.3-5録音)
パーヴォ・ベルグルンド指揮デンマーク王立管弦楽団
そして、交響曲第4番「滅ぼし得ざるもの」第3部ポコ・アダージョ・クヮジ・アンダンテにおける悲壮な歌は、ショスタコーヴィチの慟哭にも似て、聴く者に異様な内的緊張を強いる。この重みと深みはベルグルンドの指揮の真骨頂だろう。目に見えぬ信仰こそ不滅だと。
ちなみに、先の論で、内村鑑三は最後にかく述べる。
今、ここにお話しいたしましたデンマークの話は、私どもに何を教えますか。
第一に戦敗かならずしも不幸にあらざることを教えます。国は戦争に負けても亡びません。実に戦争に勝って亡びた国は歴史上けっして尠くないのであります。国の興亡は戦争の勝敗によりません、その民の平素の修養によります。・・・中略・・・
第二は天然の無限的生産力を示します。・・・中略・・・富は有利化されたるエネルギー(力)であります。しかしてエネルギーは太陽の光線にもあります。海の波濤にもあります。吹く風にもあります。噴火する火山にもあります。もしこれを利用するを得ますればこれらはみなことごとく富源であります。・・・中略・・・
第三に信仰の実力を示します。国の実力は軍隊ではありません、軍艦ではありません。はたまた金ではありません、銀ではありません、信仰であります。
自然と心に従えというのは、宗教や信仰の問題を横においても現代にも通じるものだと僕は思う。カール・ニールセンの音楽が、今や海を越え、極東にある僕たちの心に十分に精神的滋養を与えてくれる。
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陶磁器シリーズ その2
そういえば、特にバブルのころ、クリスマスにロイヤルコペンハーゲンのイヤープレートを女性にプレゼントするのが流行ってましたわな。
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僕はよくメッシーくん及びアッシーくんとしてよく利用されましたが(笑)。
>雅之様
そういえば、80年代はロイコペが流行りましたね。ただし、雅之さんより2歳年下の僕は、バブルといえどもそんな高価なものを贈ったことはありませんでした・・・。
メッシーにもアッシーにも程遠かったかな・・・、仮に利用されたのだとしてもそうやって楽しんでおられた雅之さんが羨ましいですわ。(笑)