Who Are You

僕って誰だろう?
自問自答する。答は何百通り、いや無限大である。
昔、「すべての体験は贈り物である」と教えていただいた。無駄な経験などひとつもないということ。どんなこともいずれは何かの役に立つ。ただし、そこで大切なことは天から与えられた「自分の役割」を知ること。そういえば、そのことは佐藤一斎の「言志録」にも言及されている。「役割」を知らずして何かの役に立つということは難しい。

シューマンを集中的に聴き、クールダウンでアート・ペッパーを聴いた。いや、実はベートーヴェンの後期のソナタも無性に聴きたくなり、エリック・ハイドシェックのEMI盤を取り出して聴いてみた。音のひとつひとつに意味があることがわかる。誰の作品の、そしてどんなジャンルの音楽も「そこに在る」意味が存在する。すなわち、音を楽しむことで自分の中心に戻れるのである。少なくとも僕は・・・。

学生時代にザ・フーを知った。いろいろ聴いた。85年の”Live Aid”は食い入るように観た。”Love Reign O’er Me”に涙した。当時は既にキース・ムーンなく、破天荒で挑戦的なドラミングが観れなかったことは残念だったけれど。
60年代末から70年代初頭にかけての、少なくともキース・ムーンが亡くなるまでのザ・フーは現代においてもまったく色褪せない。そして、ムーンがそれを最後に急逝した、いわば遺作といえるアルバムが”Who Are You”である。本盤、僕の中では長い間「人気」がなかった。音の響きがシンセサイザー中心となり、ピートのギターが吠えず、キースのドラムももうひとつで、各々楽曲は粒揃いなのだけれど、どうも中途半端な印象が拭い切れなかった。

The Who:Who Are You

Personnel
Roger Daltrey (vocal)
Pete Townshend (guitar, vocal, keyboards, synthesizer)
John Entwistle (bass, guitar, brass)
Keith Moon (drums)

“Guitar And Pen”などはいかにもポップな作りで、良い曲なのにどうにも各メンバーに遠慮があるような演奏。それまでのザ・フーらしさが後退して・・・。ラストナンバーのタイトル曲はプロモーション・ビデオを観て感激したことを思い出す。意味深い歌詞かと思いきや・・・。でも、よく噛み砕いてみると実に深い。

このアルバムが発表された当時、イギリス国内ではパンクがムーヴメントとして席巻していた、そんな時代だった。パンクによって否定された大御所たちはこぞってその回答を示さなければならなかった。沈黙したものあり、意に介せず自分たちのペースを守り続けたものあり。そんな中でピート・タウンゼントを中心に4人が出した答がこれだったということらしい。

I woke up in a Soho doorway
The policeman knew my name
He said, “You can go sleep at home tonight
If you can get up and walk away”
I staggered back to the underground
The breeze blew back my hair
I remembered throwing punches around
And preachin’ from my chair

Who are you

I took the tube back out of town
Home to the rolling pin
I felt a little like a dying clown
But with a streak of Rin Tin Tin
I stretched back and I hiccuped
Looked back on my busy day
Eleven hours in the tin pan
God there’s got to be another way

Who are you

There’s a place where I know you walked
The love falls from the trees
My heart is like a broken cup
I only feel right on my knees
I spill out like a sewer hole
Yet still receive your kiss
How can I measure up to anyone new
After such a love as this
Who are you

自分の名前を知っていた警官にたたき起こされて「とっとと帰れ」と。お前にはもう用はないんだと言わんばかりに。そしてまた、長時間に及ぶ騒ぎから抜け出して、「神よ、他に道はないのか」とも。さらに仮面の恋人状態が続いていることを嘆く。それらのエピソードをつなぐ言葉が「お前は誰なんだ?」。

ザ・フーですらアイデンティティを失いそうになってしまっていたということか・・・。
「役割」を知ること。そしてそれを確信すること。


4 COMMENTS

みどり

岡本さんがご覧になったビデオって、あのスタジオ・ヴァージョンですか?
あれ、いいですよね!
ピート・タウンゼントがベーゼンドルファーを弾いていたり、そして何より

キース・ムーンが「可愛らしく」見えて、最高!!(笑)

無茶苦茶な伝説ばかりが語られていますが、きっと魅力的な人だったの
だろうと思います。

シューマンはいずれ仕上げてくださるのですよね?
気長にお待ちしております(笑)。

返信する
岡本 浩和

>みどり様
そう、あのスタジオ・バージョンです。
おっしゃる通りキース・ムーンが可愛い(笑)。

>シューマンはいずれ仕上げてくださるのですよね?

もちろんです。
もはや課題といってもいいかもしれません(笑)。
時間はかかると思いますが。

返信する
岡本 浩和

>みどり様
ちなみに、あのキース・ムーンは荒井注みたいだってよく言われますよね(笑)
僕もそっくりだと思います。

返信する
みどり

荒井注さんて可愛かったんだ!(笑)
それは気付きませんでした。
勉強になりました(笑)。 ありがとうございます!

返信する

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