ハンバーガー・コンチェルト

focus_hamburger_concerto.jpg「早わかりクラシック音楽講座」で初の試みとしてロック・ミュージックを採り上げる予定なのだが、そろそろ準備をせねばといろいろと文献を調べ始めた。3時間の講座なので「歴史」の全貌を語り尽くすことは不可能だが、50年代からのおおよその流れと主要なアーティスト及び作品についてはその音楽を聴きながら多少の解説を加えねばならないだろう。もともとプログレッシブ・ロックを中心に構成しようと思っていたが、「プログレ」の世界も実に幅広く、ましてやその前史を語らずして「プログレ」は語れないので、「ロックの歴史と流れ」を入口にし、最後はクリムゾンの「宮殿」あたりで収まるような時間にしたいと考えている(変更の可能性は十分あるが)。ということで、1970年頃までのポピュラー音楽シーンがメイン・テーマということになる。

60年代は僕が生まれて小学校に入学するまでの期間だから、ぎりぎり同時代の空気を吸いながらも、音楽にはもちろん目覚めておらず、残念なことにオンタイムでこれらの音楽を聴いていたわけではないという点が何より弱い。僕の記憶にあるロック・ミュージックの最初はイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」であったと思うが、それは1976、7年のことで、僕は中学にあがっていたし、周辺の友人たちの様子を見ていてもこの音楽が途轍もないエネルギーを持っているのだろうことは想像に難くなかったが、何せわずか13歳の身にとっては「猫に小判」、「豚に真珠」だったから、のめり込むなんてことはありえなかった(そのことも大学に入学してからあらためて意識したこと)。

少なくとも幼少の頃、身近にロック音楽好きの兄さん方がいたならもう少し様相は変わっていたかもしれないが、そういう輩も存在せず、ともかく中学の時にショパンに出会い、高校ではフルトヴェングラーにかぶれ、いわゆるクラシック音楽ヲタクまっしぐらで、ビートルズに出逢ったのはようやく大学に入学してからだったというのが少しばかり残念だ。

そういえば、ビートルズに出逢って以降、貪るようにロック音楽を聴き続けた、そんな時期が数年あった(ちょうど1983年~85年の頃)。久しぶりにその頃のことを考えながら、懐かしき音楽たちに耳を傾ける。猛烈な暑さを吹き飛ばすほどのエネルギーを感じながら・・・。

マイナーだが、オランダのプログレ・バンドにフォーカスという名のバンドがある。70年にデビューした彼らは演奏テクニック、音楽性とも抜群で、楽曲がインストゥルメンタル・ナンバー中心の構成ながらあっという間に絶大な人気を獲得したらしく、そのことは特に5作目、「ハンバーガー・コンチェルト」を聴いてみると「なるほど」と頷ける。何とも静謐なアーリー・ミュージック風の響きと、現代的な轟々しい爆音とが交錯し、見事なアンサンブルと共に、40分超があっという間に過ぎ去ってしまう。中でも、LP時代にはB面全部を費やしたタイトル曲は、まさにイエスの「危機」を彷彿とさせる構成で、繰り返し何度も聴いて心を震わせたことを思い出した。

Focus:Hamburger Concerto

Personnel
Thijs van Leer(organ, piano,
harpsichord, electric piano, flute, alto flute, mellotron, etc.)
Bert Ruiter(bass guitar, auto harp, triangles, Chinese finger cymbals, etc.)
Colin Allen(drums, tambourin, castanets, woodblock, etc.)
Jan Akkerman(lute, timpani, guitar, etc.)

ちなみに、テーマにはブラームスの「ハイドン変奏曲」、否、というよりハイドンのディヴェルティメント「聖アントニウス」の主題が使われており、そのこともブラームス党だった僕の心を虜にしたのだと思う(同じくイエスの「こわれもの」を聴くきっかけになったのもリック・ウェイクマンがブラームスの第4交響曲の第3楽章をテーマにして”Cans and Brahms”というピースを収録していたことから)。

ワールドカップベスト4が出揃った。サッカーど素人の僕には圧倒的にドイツの強さが目を引くのだが、意外にオランダが優勝するのかもしれない、などと思っている(フォーカス万歳、オランダ万歳!)。

昨晩、銀座のain soph.にて”ain soph. Labo”と称し、初の勉強会を開催した。5月の1dayセミナーをご受講いただいた方と初めてご参加いただいた方が顔を合わせることになったが、人間関係心理学にまつわるいくつかのワークとディスカッションで計2時間強を8名で楽しく過ごさせていただいた。会の最後にはご参加いただいたヨーガのsana先生による特別瞑想ワークまで付いて・・・。ありがとうございます。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
>ビートルズに出逢って以降、貪るようにロック音楽を聴き続けた、そんな時期が数年あった(ちょうど1983年~85年の頃)。
私には残念ながらそういう期間はあまりありませんでした(だから、すごくこのブログでの学びが多く、感謝しています)。人間の味覚は10代後半までの食習慣で決まるといいますが、音楽も同じですね。その後の学びは、付焼刃みたいなものです。語学や多くの趣味やスポーツも、同様に10代後半までが勝負ですね。一方では、ここで「バカの壁」も形成されてしまい、その後にこの壁を乗り越えるのは、容易ではありませんね(笑)。
音楽で、グルーヴの感覚が十人十色なのも、育った環境の差が大きいのでしょう。息子や娘が友達と聴くJポップなどの音楽は、良い悪いは別にして、形が整って苦味が少なく食べやすく、栄養価も少ない今の野菜みたいだなあと思うことがあります。その点、1960年代後半~70年代のプログレなどロックは、今のロックやポップスに比べ昔の野菜みたいで、ずいぶん歯ごたえがありましたよね。「宮殿」も「狂気」も、家でCD聴いていても、子供達は何の反応も示しません。そもそも「舌」の発達の仕方が違うから仕方がないのでしょうが、それでも私が家で、かけ続けたら、「洗脳」される可能性はありますかね(笑)。
オランダのプログレ・バンド「フォーカス」のことはよく知りませんが、
Jan Akkermanとかいうギタリストは、中々興味深いですね。パコ・デルシア と共演しているユーチューブの画像なんかは、感動しました。彼もジャンルという「バカの壁」を、簡単に飛び越える人になっていったのですね。
>意外にオランダが優勝するのかもしれない、などと思っている
32年ぶりに決勝進出が決まりましたね。相手はドイツかスペインですが、オランダのあの国歌がですね、ちょっと複雑です(笑)。
オランダ国歌
Wilhelmus van Nassouwe
Ben ik van Duitsen bloed.
Den vaderland getrouwe
Blijf ik tot in den dood.
Een Prince van Oranje(n)
Ben ik vrij, onverveerd.
Den Koning van Hispanje(n)
Heb ik altijd geeerd
ナッサウ伯ウィレム
我はドイツの血筋なり.
祖国に忠実で
死に至るまでかくあらん.
オラニエ公
我は自由で大胆である.
スペイン国王には
我は常変わらず信義を尽くしてきた.
(訳 下のサイトより)
http://www.h4.dion.ne.jp/~room4me/dutch/wilhelm.htm
ブラームスの話題がまた出ていますので、最近聴いて感動したCDのご紹介を・・・。
ブラームス:交響曲第2番 ボッセ&新日本フィル
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3715691
ボッセは、昔、新日本フィルとのベートーヴェン交響曲ツィクルスを聴きまして、生涯忘れられない美しい演奏だったのですが、このブラームスも絶品です。まあ気が向かれたらいつか騙されたと思って、聴いてみてください。
なお、私はブラームスの第3番を除く交響曲は、ヴィオラでのアマオケ実演経験もありますし、スコアに多くの書き込みなどもしながら学生時代から熱心によく研究をしておりまして、おそらく岡本さんの数百倍は「愛している」という自負があります(と、私らしく「厭な性格」で今朝も閉めとかなきゃですね・・・笑)。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
>語学や多くの趣味やスポーツも、同様に10代後半までが勝負ですね。一方では、ここで「バカの壁」も形成されてしまい、その後にこの壁を乗り越えるのは、容易ではありませんね(笑)。
おっしゃるとおりですね。特に、10歳から12歳頃は「ゴールデン・エイジ」といわれ、好きでやったことが芽が出る確率の高い時期だそうです。これはもうはっきり親の責任ですよね。
>「宮殿」も「狂気」も、家でCD聴いていても、子供達は何の反応も示しません。
あー、そういうものなんですね・・・。
>かけ続けたら、「洗脳」される可能性はありますかね(笑)。
ぜひ「洗脳」してください(笑)。やっぱり当時の音楽を今の子どもたちにもぜひとも享受してもらいたい、切に思います。
>パコ・デルシア と共演しているユーチューブの画像なんかは、感動しました。彼もジャンルという「バカの壁」を、簡単に飛び越える人になっていったのですね。
ヤン・アッカーマンは天才ですね。生はもちろん観ていないので、偉そうなことは語れませんが・・・。
ところで、オランダ国歌の内容は初めて知りました。
確かに複雑ですねぇ。ちなみに、やっぱり僕はオランダが優勝しそうな気がしてしょうがないです。雅之さんはどう思われますか?
>生涯忘れられない美しい演奏だったのですが、このブラームスも絶品です。まあ気が向かれたらいつか騙されたと思って、聴いてみてください。
ボッセのブラームス、未聴です。「騙された」つもりで聴いてみます。
>おそらく岡本さんの数百倍は「愛している」という自負があります(と、私らしく「厭な性格」で今朝も閉めとかなきゃですね・・・笑)。
いやあ、今日もやられました(苦笑)。やっぱり演奏される方には敵いません・・・。

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