突然の土砂降りでずぶ濡れになった。天気というのは容赦ない。それは人の気も同じ。浮いたり沈んだりの繰り返し。まったく予想つかぬもの。
昨晩のクラヲタ会は至極楽しいひと時が流れた。収穫も大いにあった。中で、井野先生からお借りした「レコード芸術」誌に心奪われた。何と昭和34年(1959年)10月号。僕が生を得る5年も前の雑誌である。細かくは読めていないが、斜め読みするに今の時代においても学ぶべきところあるものと察せられる。懐古趣味に陥るのは決して良くないけれど、少なくとも僕がかの月刊誌を読み始めた70年代後半から80年代にかけての「誌面の素晴らしさ」が蘇り、レコードに限らず芸術というのはひとつひとつをじっくり味わうもので、現代のように劇的廉価で提供される音源を「何の有難味もなく」聴く時代とは隔世の感ありと再認識した。
忙しい。何が忙しいって、もちろん仕事ではあるのだが、音楽講座の準備やら本業のワークショップの準備やら。それにブログ上で何かしらを書きたいと思う音盤が目白押しで、正直整理がつかない状態。もどかしい。
ところで、先述の「レコ芸」59年10月号。定価は何と140円也。そして中身はというと、じっくりと読ませていただいた上で関連する音盤を漁り、何度かにわけて感想を書きたいと思うほど。ちなみに、特集が「ベートーヴェンのピアノ・ソナタ」ということで、野村光一氏が記者相手にその世界を語り、誌面座談会では「ケンプのピアノ・ソナタ全集に期待する」という題目で田村宏氏、大木正興氏、村田武雄氏という懐かしいお名前が並ぶ。
村田:この人は手で弾く人ではなく頭と心で弾く人ですね。
大木:現実には少ないですね。だけれどもまた、こういうピアニストがあながち古いとも言いきれないと思いますね。
村田:いや、古い新しいの問題ではなく、現代にはこういう素朴な人間味を出せるぴあにすとが少なくなつたというのです。
(中略)
大木:ええ。それにベートーヴェンの作品を、あらかじめいろいろな人の演奏をきかないで、一人の演奏家を通してきいてみるということは非常にいいことだと思うんです。一つの筋の通ったベートーヴェンをきいてみるということは、鑑賞する人にとって非常に大事じゃないかと思います。
村田:殊にベートーヴェンのピアノ・ソナタというものは、ほとんどベートーヴェンの全生涯に亘っているし、ベートーヴェンの人間の発展と、同時に技術的発展が現れているものですから、従ってそれを歴史的に聴いてゆくことはベートーヴェンをよく知ることになる。
何と全集で21,600円也。当時の月収の何倍なのだろう?
今はベートーヴェンのソナタが下手をすれば2,000円や3,000円で手に入る時代。それにそもそもの物価が違う。あの時代、愛好家は本当に音楽を「大事に」聴いたのだ。その意味で、「レコード芸術」誌の作りも今とは明らかに異なる。1979年から購入してきたこの雑誌を僕もとうとう先月から買うのを止めた。ここ数年は惰性で購入してきたけれど、真面に読んでいなかったから。芸術がこれほどまでに軽んじられる恐ろしい時代、人間の心が本当に廃れた時代なのかな・・・。
話の流れで書く。先日橋口正さんに薦められた”Great Conductors 10CD-Set”が届いた。で、シェルヘンのベートーヴェンのリハーサルに度肝を抜かれた。例のルガーノ放送管のおそらくゲネプロだろう。この熱いリハーサルが今の時代にはないもの。時に罵声と聞き違えるほどの叱咤激励と、それに伴って音楽がますます凄みを帯びてゆく様。
このセット、実に興味深い。セル&クリーヴランド管のシューマン第2番、アンチェル&チェコ・フィルのムソルグスキー、チェリビダッケの「くるみ割り」、サヴァリッシュの「ブランデンブルク第5番」などなど・・・。当分音盤聴きに追われそうだ・・・(笑)。
おー、唸り声が入りまくっているベト5ですね。しかし、セルのシューマン2番はめちゃくちゃ良いです。全集だとサヴァリッシュですが、バラだと2番はセルも素晴らしいです。というか、初期ロマン派に関して、セルは実に素晴らしい指揮者だと思うのですがイマイチ評価低いですよねぇ。
>ふみ君
セルのシベリウスも聴いたけど、いいねぇ。確かにイマイチ低評価だけどね・・・。
ちなみに、このシェルヘンは例のルガーノ放送の沖のリハをそのまましゅうろくしてあるものだけど、激しいよねぇ。
セル/クリーヴランドのシベ2@文化会館のライヴ録音がシベ2史上最高演奏とかって言われ、有名ですがこれは確かに凄まじいです。この後、急逝するんですよね。
もし、お聴きでなければ是非御一聴をオススメさせて頂きます。
http://sp.tower.jp/item/503439/ライヴ・イン・東京-1970
>ふみ君
これ有名なやつね。セルはスルーしてたので未聴です。
そこまで言うなら聴いてみましょう!
ありがとう。
[…] ドヴォルザークの「新世界」交響曲などというのはもはやほとんど聴くことのない「名曲」だが、ここのところ手元に数種の音盤が届く(笑)。特に意図的に仕入れたわけではないのだけれど、ボックス・セットに混入していたり、ぜひとも聴いてくれと手渡されたり。例えば、先日のシルヴェストリ・ボックスには2種のそれが収録されており、いずれもが「超」のつく名演奏。それと、”Great Conductors”にもカレル・アンチェル指揮チェコ・フィルのライブが収められており、さすがにお国ものだけあり、実に生気に満ちた演奏で、久しぶりにこの通俗名曲を大いに堪能した。 […]