エルガー生誕の日に「スターライト・エクスプレス」を聴く

エルガー卿はかつて子どもの頃、孤独だったという。
孤独だってひとりぼっちだって何だって良い。ひとりで空想、夢想に耽る、そんな時間がいっぱいあった少年時代というのは懐かしくもあり、今となっては羨ましくもある。大人になって、ただ「今を感じること」、あるいは純粋に「未来を想うこと」が少なくなっているのがわかるから。新しいものを生み出すのにイマジネーションは不可欠。物事にチャレンジするのだって感じる力と想う力が大事になる。
いつぞやの吉田秀和さんの言葉をまた思い出した。
やっぱり僕たち、日本人全体として、イマジネーション、貧弱だったのかな・・・。

エルガー卿は壮年期に、「孤独な」少年時代を思い起こし、憧れと想いを音楽に託した。
この可憐で美しく、ファンタジーに満ちた音楽たちを何度も聴いた。
時に胸が締め付けられるほどの憧憬と、かつて体験した懐かしい記憶どもが不思議に思い出され、梅雨時の谷間のような乾燥した好天の日に、これらの音楽が僕自身を室内に釘付けにする。まさに、ひとりぼっちでの夢想とでもいうのか・・・。

エルガー:
・「子どもの魔法の杖」第1組曲作品1a
・「子どもの魔法の杖」第2組曲作品1b
・スターライト・エクスプレス作品78
・夢の子どもたち作品43
アリソン・ハグリー(ソプラノ)
ブリン・ターフェル(バリトン)
サー・チャールズ・マッケラス指揮ウェールズ・ナショナル・オペラ管弦楽団(1990.12録音)

愛らしい旋律と、哀しげな空気感と・・・。
サー・エドワード・エルガーの本性がいつになく垣間見えるこれらの音楽とは一体?
三浦淳史氏の解説にあるように、子どものために書いたのではなくまさに自身の追憶であることは、その音を聴けば即座に理解できる。

ユラ山脈に移住したキャムデン一家は、生活が苦しく困窮している。ブールセルの村人も同様に逼迫している。見兼ねた子どもらが大人たちを救おうとしてスター・ソサエティ(星の協会)を結成する。子どもたちは星屑を集めて特別な洞窟に貯蔵し、それぞれに家に配分した。子どもたちはイギリスから来たおじさんや小妖精たちの協力を得てキャムデン家や村人たちを救っていく。
(三浦淳史氏によるライナーノーツより)

この「スターライト・エクスプレス」ではデビュー間もないターフェルが安定感のある若々しい歌唱を披露する。フィナーレの「眠りの精、ラーファー、放浪者と忙しいスウィープ」の後奏で突如現れる懐かしい響き、そう、讃美歌第103番「牧人羊を」が壮大に奏でられる。美し過ぎる・・・。

夕刻、ぶらりと自転車で外に出た。
僕の近所には車の往来が少ない裏道路がある(路地というには広いし、道路というには少々狭い)。自転車で行き交うそちこちで父娘と思わしき一組と小学生らしい2人の少年がそれぞれにキャッチボールをしている光景に出くわした。こういう姿こそが子どもの頃の健全な姿なのかも。
エルガーの少年時代は?
やっぱり暗かったのかも・・・(笑)。
サー・エドワード・エルガー生誕の日に・・・。

 


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