ひとり阿吽の呼吸

Chopin_mazurkas_afanassiev.jpgYESの歌詞は基本的に難解。何度繰り返し読んでみても理解できない。だから頭を使うのをやめにして、呪文のように響くJon AndersonのHigh Tone Voiceと、バンドの信じられないくらいの超絶テクニック、そしてアンサンブルにただただ身を寄せる。
「海洋地形学の物語」
という7作目に収録されたRevealing Science of God – Dance of the Dawn(神の啓示-夜明けのダンス)が頭から離れない。

今朝、不思議な夢を見た。ある山奥深い閉ざされた研修施設で複数の山賊のようなものに襲われる夢。ガラスを叩き割りながら刀を振り回し、素早い動きで我々を威嚇する。やばい、やられる!と思った瞬間目が覚めた・・・(爆)。悪い夢ほど幸先良いという(ほんとか?!)。明日は大崎の某ベンチャー系企業での半日研修なので、我に入らず、一生懸命やればまた大成功ということだろう・・・(笑)。

What happened to this song we once knew so well
Signed promise for moments caught within the spell
I must have waited all my life for this
Moment moment

何度もリフレインされるサビの部分。英語を母国語とする人にすらひょっとすると理解不能な歌詞かもしれない。言語というのは「壁」である。人は他人に意思を伝えるために言葉を作り出したのだろうが、一方で外敵を欺くために生み出したのだともいえる。かつての日本人が美徳とした「阿吽の呼吸」というのは、なかなか今の世の中には通用しない。具体的に「伝えない」と「わからない」のだ。

本日、横浜のみなとみらいで開催された「産業人材育成フォーラム」に参加した。法政大学教授、臨床心理士の宮城まり子先生(てっきり「ねむの木学園」の宮城さんかと思っていたら人違いだった。紛らわしい・・・)の講演を聴いたが、その中で「メンタルヘルス不調者の増加原因」が下記のように示されていた。
・人を育てる余裕が職場になくなってきた
・働く人が職場とのつながりを感じにくくなってきた
・職場に助け合いの風土がなくなってきた-人間関係の希薄化
・職場のコミュニケーションが不足している(抱えている問題を職場の身近な人に話すことができない)など

職場に限らず家庭においてもそうだと思うが、ともかく同じ言葉を使う家族や仲間同士が理解し合い、受容しあえていないことが何よりの問題。いかに自他ともに受け容れ、わかり合うのかという「コミュニケーション力」を磨くことが重要。来たれ!「ワークショップZERO」へ(笑)。

帰宅後、徐にアファナシエフの音盤を取り出す。

ショパン:マズルカ集(13曲)
ヴァレリー・アファナシエフ(ピアノ)

いつぞやの「ノクターン集」同様、哲学者アファナシエフの弾くショパンは厳かで深い。まるで「ひとり阿吽の呼吸」だ。ポーランドの農民のための明るい舞曲が、時に葬送の音楽のように鳴り響く。例えば、イングマール・ベルイマン監督の「秋のソナタ」の劇中で使用されたイ短調作品17-4。これほど人間の孤独と人恋しさを表現しきった音楽が他にあろうか。


7 COMMENTS

もっち

毎日ブログを拝見させていただいておりますが、お久しぶりです。
>山賊のようなものに襲われる夢。ガラスを叩き割りながら刀を振り回し、素早い動きで我々を威嚇する。やばい、やられる!
幼稚園の時にピエロの頭に追いかけられる夢を見ていらい何かに追いかけられたり、襲われたりする夢を見ていません。
そういう怖い夢は何を暗示してるのでしょうか。ただ日ごろから危機感があまりないから怖い夢を見ないのかもしれません。
ただ、最近の夢は魚を釣っては逃がし続けるなんとも満たされない夢がおおいです。

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岡本 浩和

>もっち
久しぶりだね。
>そういう怖い夢は何を暗示してるのでしょうか。
ね、何を暗示してるんだろね・・・。わからんけど。
>最近の夢は魚を釣っては逃がし続けるなんとも満たされない夢がおおいです。
動物愛護ということかな(笑)。

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雅之

こんばんは。
>言語というのは「壁」である。
またまた本日も話がブログ本文から脱線して申し訳ありませんが、先日の「悲愴」の話から「パトス」(pathos)という言葉が気になり、ネットでいろいろ調べてみましたら、次のような興味深い記事をみつけました。
http://www.dokkyomed.ac.jp/dep-m/german/ess37a.html
http://www.dokkyomed.ac.jp/dep-m/german/ess37b.html
http://www.dokkyomed.ac.jp/dep-m/german/ess37c.html
私はお恥ずかしい話ですが、この記事の内容のような知識は、今日までほとんど持っておりませんでした。日本人で西洋音楽のプロを志す人などは、こうしたことは常識なのでしょうか?
歌曲などの対訳を読むたび、西洋人にとっては阿吽の呼吸のニュアンスの、言語の「壁」を痛感します(シューベルトなどの有名歌曲のメジャー・レーベルの国内名盤CDの対訳でも、誤訳は日常茶飯事)。表面的ではなく他国の文化を深く理解することは、学者や専門家でも本当に難しいことことなんだと思います。
おかちゃんおすすめのアファナシエフの音盤は、安くなっていることでもありますし、いろいろ買って聴いてみようと思っています。

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岡本 浩和

>雅之様
ご紹介の記事は面白いですねぇ。こういうことを追究し出すとキリがありませんね。もちろん僕もこういう専門的な知識は皆無です。おそらく学者にとってみれば常識でしょうが、プロといえども演奏家は知らない人多いと思いますが・・・。
おっしゃるとおり、歌曲やオペラは「言語の壁」を痛感しますよね。これはもう言葉の問題だけでなく、DNAに染み付いたバックグラウンドまでもが絡みますからね。少なくとも10年近いレベルで住みついてみないと無理かもしれません。
アファナシエフはぜひ!

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雅之

>アファナシエフはぜひ!
大変なことになりました!
シューマン:「交響的練習曲」「子供の情景」の、アファナシエフの2007年来日公演ライヴのCDが、今度発売されるんです!(知らなかったのは私だけ?・・・笑)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3593746
私が愛して止まない「交響的練習曲」では、最もお気に入りの小林五月盤、果たしてトップの座を守れるのか?(爆)
この「交響的練習曲」って曲は、ブラームスの配慮で復活した5つの「遺作変奏」の挿入のやり方がピアニストによって異なり、興味の焦点のひとつになるのですが(例えば次のサイトを参照のこと)、
http://homepage3.nifty.com/kyushima/cd/Symphonic-etudes.html
アファナシエフはどういう入れかたをしているのでしょうか?それも楽しみです。こんなに鶴首してCDが来るのを待つのは稀です。
アファナシエフのCDを聴くことをおすすめいただき、ありがとうございました。
いろいろ新鮮な発見が出来て、実に楽しいです。
岡本さんは、今年彼の実演を聴けて、いいですねぇ!

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
それは大変ですね!いや、この音盤の発売は知っておりました。もちろん注目盤です。実況録音とあらば、なおさら楽しみです。
>この「交響的練習曲」って曲は、ブラームスの配慮で復活した5つの「遺作変奏」の挿入のやり方がピアニストによって異なり、興味の焦点のひとつになるのです
しかしまた、えらいマニアックなサイトですね(笑)。「交響的練習曲」をこよなく愛する方々のためのサイトともいうかもしれません。
そうそう、6月にはアファナシエフの音楽劇「展覧会の絵」ほかのリサイタルです。とても楽しみです。その2日後にはツィマーマンも聴きに行きます。

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アレグロ・コン・ブリオ~第4章 » Blog Archive » 平均律クラヴィーア曲集

[…] アファナシエフの印象は、気難しさと小難しさ。 ブラームスの後期小品集やショパンのノクターン集、あるいはマズルカ集などは初めて聴いたときその深遠さと巨大さに相当感激したものだが、基本的に考え過ぎの、頭で作った音楽に聴こえてしまうところが難点(実際にオペラシティで聴いたリサイタルも今一つの印象だった)。 しかしながら、このバッハは違う。おそらくショスタコーヴィチが脳天を直撃されたときの衝撃のような静かな破壊力がある。バッハが平均律というシステムを完成させたことは音楽史的にみて画期的な事件だろうが、そもそもこの平均律というシステムが四角四面の枠のように音楽家を苦しめてきたともいえまいか。素人的な思考でしかないけれど。 […]

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