とてもローカルな話

とてもローカルな話。
本日、Y君が会わせたい先輩がいるというので会った。お目にかかるなり口調が関西弁交じりだったので出身を聞くと滋賀県だという。同郷だと即座に反応し、いろいろと聞いてみた。実家は大津にあるという。「どこですか?(関西弁)」と聞かれたので「信楽」と答える。「へぇ、高校は?」と聞いたら「石山高校」だという。ここで一気に関係が氷解(笑)。「えー、同じやんか(関西弁)!」、「帝産バスで通ってました」、「え、ということは田上か?!、大津とちゃうやん!」などと話が弾みあとはもう田舎話と仕事の話が入り乱れ、あっという間の数時間だった。しかも、今住んでいるところも歩いて10分ほどのところだからますますその偶然に吃驚。人と人とのつながりというのは面白いものである・・・。

人は属性というものを気にする。というより同じ趣味、同じ故郷など共有できるものがあるだけで関係が近くなる。しかし、僕の経験から言えば属性というのはあくまで単に属性。そういう地理的なものや時間的なものを超えたところに本当の「関係」が存在する。表面的なつながりを維持するために現代人が考え出した最後の砦が「属性」的なものなんだろうとある意味穿った見方をするが、それが人間関係のきっかけになるんだったらそれはそれで良い。あとは互いに関係を深くしてゆく努力をすればいいのだから。

午後、産学協同就業力育成シンポジウムに出た。慶応義塾の元塾長である安西先生が座長を務められておられる研究会のイベントだが、社会で活躍する人材を送り出すために今の大学がどうあるべきか、あるいは企業が何をしなければならないかが大きなテーマとなっていた。最終的に行き着く問題はやはり若者の人としてのベース、例えばコミュニケーション能力や主体性をいかにブラッシュアップするかにある。僕の中では自ずと答は出たが、そのあたりの細かい話はいずれ書くことにしようと思う。いずれにせよ結局は大学も企業も既存の思考回路を破って全く新しい観点で人間教育を施していかない限り道は開けないように考える。そう、一度従来のシステムを壊してしまわない限り本質的には何も変わらないと思うのである。

音楽の世界でも、時代を経るにつれてルールが窮屈になり、作曲家が細かいところまで楽譜上で指定するようになった。バロックの時代はそれこそ楽器指定まで演奏家に任されていたこともあったくらいだし、ましてやテンポ、解釈は完全にプレーヤーに一任されていた。ゆえに装飾音のつけ方ひとつ自由で、同じ楽曲とは思えない「幅広さ」を生み出す(本当に常にチャレンジングだった)。

J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲BWV988(2004.7.6-8録音)
高橋悠治(ピアノ)

とてもユニークな演奏。少々バッハのスタンダードとはかけ離れていて、現代音楽のニュアンスが垣間見える。それこそ自由で直感的で、これを聴いている瞬間は恍惚に浸れる。
ただし、確か同じ時期に触れた高橋悠治の実演には閉口した。譜面を追いながら各変奏毎に演奏を止め、ぶつ切りで音楽が進行してゆく。しかも第15変奏と第16変奏の間には20分ほどの休憩があり、という感じ。時間と空間の芸術である音楽はやっぱり「流れ」が重要である。どんなに特殊な解釈をしても呼吸が合わなかったり乱れたり、あるいは流れがお粗末だったりするとそれだけで興醒め。

初めて聴いたときはあまり好みでなかったゆえしばらくお蔵入りになったが、久しぶりに聴いてみて意外に良いかもと思えた。何より速めのテンポで流れがスムース。第26変奏の「天使の舞い降りる場面」も軽いタッチで素敵。そういえばJ.S.バッハも生涯ローカルに生きた人だった・・・。

2 COMMENTS

雅之

こんばんは。

>表面的なつながりを維持するために現代人が考え出した最後の砦が「属性」的なものなんだろうとある意味穿った見方をするが、それが人間関係のきっかけになるんだったらそれはそれで良い。あとは互いに関係を深くしてゆく努力をすればいいのだから。

>どんなに特殊な解釈をしても呼吸が合わなかったり乱れたり、あるいは流れがお粗末だったりするとそれだけで興醒め。

>初めて聴いたときはあまり好みでなかったゆえしばらくお蔵入りになったが、久しぶりに聴いてみて意外に良いかもと思えた。

Say, it’s only a paper moon
Sailling over a cardboard sea
But it wouldn’t be make-believe
If you believe in me

厚紙の海をゆく
紙製の月だったとしても
それは作り物なんかじゃない
私のことを信じてくれるのならば

http://www.youtube.com/watch?v=yI-CHxvzf68&feature=related

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