Freddie Mercury & Montserrat Caballé “Barcelona” (1988)を聴いて思ふ

mercury_caballe_barcelona692モンセラート・カバリェの伸びのある情熱的な美声が男性的に聴こえる。
一方、フレディ・マーキュリーのヴィブラートの利いた独特のハイトーン・ヴォイスは極めて女性的だ。
フレディの最晩年に録音されたデュエット・アルバム「バルセロナ」は、異なるジャンルで活躍する二人の天才が成し遂げた貴重な記録。二人の声のトーンの源がおそらく同じ波長をもっているのだろう、オペラティックで華麗、かつとても美しく融合した佳曲揃い。才能と才能が、ぶつかり合うことなく見事に調和する。

不世出の音楽家フレディ・マーキュリー。
彼の生み出す音楽はいずれも素晴らしい。また何よりヴォーカリストとしてのフレディの魅力は何ものにも代え難い。
そして、あらゆる「歌」に精通するモンセラート・カバリェ。
彼女の歌唱は実に人間的で温かくまた力強い。

カバリェの熱烈なファンであったフレディからの要望で叶ったといわれるこの共演は、確かに「歌」に溢れるものの、やや求心力に欠け、全体のバランスはいまひとつ(だと僕には感じられる)。それにはおそらくフレディの発病も影響しているのだろう、どこか暗く、乗っておらず、悲しいのである。
しかしながら、暗澹たる印象、陰のある音調、この際そういうものは横に置こう。
久しぶりに繰り返し「バルセロナ」を聴いて、フレディ・マーキュリーの音楽性はクラシカルな(オペラティックな)側面とロック音楽のハードな側面が見事に融和することによって起こった奇蹟であったこと、そしてそれにはクイーンというバンドの存在が不可欠であったこと、どれほどそのヴォーカルがオペラティックだといわれようと、ロック音楽の持つ強力なビートあってこそのものであったのだろうと思った。

フレディ・マーキュリーはあくまでロック音楽の申し子なのである。

Freddie Mercury & Montserrat Caballé:Barcelona (1988)

Personnel
Freddie Mercury (vocals, pianos, producer, arranger)
Montserrat Caballé (vocals)
Mike Moran (keyboards, production, arrangements)
David Richards (production)
John Deacon (bass guitar)
Pamela Quinlan (piano)
Homi Kanga (violin)
Laurie Lewis (violin)
Deborah Ann Johnston (cello)
Barry Castle (horn)
Frank Ricotti (percussion)

例えば、タイトル・ソング”Barcelona”には”Bohemian Rhapsody”的華麗で柔和な旋律がある。しかし、かの名曲にある僕たちの鼓動に同期するような強烈なエネルギーは残念ながらない(カバリェの見事な絶唱が不思議に浮き立つ)。続く” La Japonaise”は日本語に精通していたフレディらしく言葉の選び方が実に美しい。そして、どこかオリエンタルでエキゾチックな音楽は、聴いていてお尻が痒くなるほど歌謡曲に近い。

素晴らしい朝が明ける
夜明けが呼びかける
心の泉が湧き出る
夢のよう

嗚呼、その後まもなく逝ってしまったフレディ・マーキュリーの歌がやっぱり悲しい。

フレディ・マーキュリー死して25年。
命日に。

 

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3 COMMENTS

雅之

ふたつの「モツレク」でフレディ・マーキュリーを追悼しましょう。

バーンスタイン&バイエルン放送響&合唱団
1988年7月 アンマーゼー、ディーセン修道院附属教会(ライヴ)  [バイヤー版]

http://www.hmv.co.jp/artist_%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%84%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%83%88%EF%BC%881756-1791%EF%BC%89_000000000018888/item_%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%A3%E3%82%A8%E3%83%A0-%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%BC%E7%89%88-%E3%80%80%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%B3%EF%BC%86%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%B3%E6%94%BE%E9%80%81%E9%9F%BF%EF%BC%86%E5%90%88%E5%94%B1%E5%9B%A3_1260726

ショルティ&ウィーン・フィル&ウィーン国立歌劇場合唱団
1991年12月5日 ウィーン・シュテファン大聖堂(ライヴ) [ランドン版]

http://www.hmv.co.jp/artist_%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%84%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%83%88%EF%BC%881756-1791%EF%BC%89_000000000018888/item_%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%A3%E3%82%A8%E3%83%A0%E3%80%80%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%AB%E3%83%86%E3%82%A3%EF%BC%86%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%80%80%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%86%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E5%A4%A7%E8%81%96%E5%A0%82%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B4%EF%BC%88DVD%EF%BC%89_1874267

1988年から1991年までが、個人的にはバブルの恩恵を受けつつ青春を謳歌していた時代でした。

そしてフレディが死ぬ直前に人生の墓場に突入し、はや25年・・・。

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岡本 浩和

>雅之様

もちろんそのあたりは理解できております。

>フレディも、時には教会で身を清めたりしてでも長生きして欲しかったです。

同感です。

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