ナナ・ムスクーリ

nana_mouskouri.jpg7月に入ってまだまだ鬱陶しい日が続くが、夏の暑い盛り時には、全てを吹っ切ったように開放感溢れるイタリア・オペラ、ヴェルディの世界に身を置くととてもすっきりした前向きなモードになれるから不思議なものだ。僕は、基本的にイタリア歌劇は苦手だ。これまで何十年とクラシック音楽を聴いてきたにもかかわらず、ほとんど集中して聴き込んだ記憶がない。しかしながら、いわゆる一般庶民(?)にはオペラは人気だからクラシック音楽講座で採り上げて欲しいという要望が以前からあった。そろそろそのタイミングなんだろうと今月末の講座ではジュゼッペ・ヴェルディの歌劇をテーマにしたが、最近は彼の歌劇の音盤を取り出しては勉強がてら頻繁に聴くようにしている。ヴェルディの歌劇をさすがに全ては所有していないので、当日は少なくとも有名なものからアリアを抜粋したり、序曲や前奏曲を聴きながら楽しんでいただこうと考えている。ご興味ある方はぜひお出かけください(参加申し込みはこちらより)。

verdi_nabucco_gobbi.jpg作品が不評を買い、妻まで病気で亡くし、失意のどん底に突き落とされていたヴェルディが3作目にしてようやく聴衆の圧倒的支持を得、実質の出世作となった歌劇「ナブッコ」。特に、第3幕第2場で歌われるヘブライ人の合唱「わが思いよ、金色の翼に乗っていけ!」は、結果的に当時のイタリアの「統一」のシンボルとなり、民衆の「独立精神」を煽った美しくもわかりやすい歌である(ムッソリーニ率いるファシズム政府の戦争による荒廃した祖国から湧き上がったのもこの歌だったという)。現在でも、イタリア人でこの歌を知らない人はいないくらいだというらしいので、まさに第2の国家としての役割を果たすほどの音楽なのだろう(実際そういう提案は何度もなされているらしいが)。それにしてもラテン民族の音楽ってどうしてこうもネアカなんだろうか?(笑)およそ僕とは相容れないと信じていた類の楽曲だが、じっくり耳を澄ますと惹き込まれる魅力があるからさすがである(まぁ、僕の方が聴かず嫌いだったんだろうが)。僕はティート・ゴッビがタイトル・ロールを務めた、この歌劇の初のスタジオ録音盤を所有しているが、残念ながら評価云々するほど聴き込んでいないので、音楽や演奏については語れない。そんなことを書くうち、もう20年近く前に購入したナナ・ムスクーリのベスト盤で前述のヘブライ人の合唱をアレンジした歌が入っていたのを思い出し、久しぶりに取り出してみた。

Nana Mouskouri

「ナブッコ」から件の合唱をアレンジした「リベルタード~『黄金の翼』」のほか、「アルハンブラの思い出」や「恋のアランフェス」、「禁じられた遊び」などお馴染みのクラシック音楽の編曲ものが多数収録されているベスト盤である。ナナの歌声は本当に美しい。何年か前、齢70を迎え引退したと聴くが、日本ではいっこうに話題にならなかったところがナナらしい(と僕は思う)。

そういえば、東松山のSさんは元気だろうか?1年半ほど前ご自宅に伺って珍しいSPやらLP初期の音盤やらを聴かせていただいたが、彼はヴェルディのオペラ好きで、特に歌劇「ナブッコ」と歌劇「シモン・ボッカネグラ」贔屓だったことを思い出した。久しぶりに会いたいなぁ・・・。


8 COMMENTS

雅之

こんばんは。
私もオペラをCDで聴くことは苦手です。
てゆーか、若い時にそういう習慣を持たなかったせいで、全曲盤はいくら名演、名唱でも、映像付きでないと集中力が続きません。
第一、最近は歳のせいか、音だけに集中してオーディオの前に何時間も座っているのは拷問で、去年朝比奈先生の「指環」全曲のCDを十何時間ぶっ通しで感動して聴きながらも、「もうこういう聴き方はこれで最後にしよう」と思ったくらいです(笑)。マジ健康に悪く、エコノミークラス症候群になりそうですし・・・(笑・・・笑いごとではない笑)。
http://www.otsuka.co.jp/health/jama/index.html?ad=list_ov
でも、吉田秀和先生も昔から同じくそういう聴き方は苦手みたいですね(笑)
やっぱりオペラこそ本来は実演を楽しむべきなんでしょうね。家ではDVDのつまみ食い視聴が精一杯です。
「Va, pensiero, sull’ali dorate」も、YouTubeで出回っている映像で充分です。
http://www.youtube.com/watch?v=4BZSqtqr8Qk
(毎回思うんですが、こういうの違法ではないのでしょうか?)
ナナ・ムスクーリは恥ずかしながら聴いたことが無かったのですが、Amazonの試聴用サンプルを聴く限りでは、いい感じですね、楽しめそうです。
ということで、私のオペラ(特にイタリア・オペラ)の知識はこういったレベルです。
岡本さんのブログを通じ、今月は集中的に勉強したいので、どうかご教示よろしくお願いいたしますm(__)m

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>最近は歳のせいか、音だけに集中してオーディオの前に何時間も座っているのは拷問で、去年朝比奈先生の「指環」全曲のCDを十何時間ぶっ通しで感動して聴きながらも、「もうこういう聴き方はこれで最後にしよう」と思ったくらいです
お疲れ様でした。さすがに僕も「指環」の全曲をCDだけで聴きとおすという「無謀」は若いときしかないですね。おっしゃるとおり、映像で摘み食い程度がしっくりきます。
You Tube便利ですよね。違法なのかどうかはよくわかりませんが・・・。
>岡本さんのブログを通じ、今月は集中的に勉強したいので、どうかご教示・・・
いやいや、僕の方こそこれまで同様いろいろと教えていただきたいと思っているくらいですから。イタリア・オペラに関しても雅之さんから面白い情報を引き出そうかとも思ってました(笑)。
ところで、ラヴェルの「自作自演」盤購入しました。おっしゃるとおり、当時の音源としては申し分ないですね。
http://classic.opus-3.net/blog/cat29/post-167/#comments
ご指摘の通り、「ボレロ」のトロンボーンなど洒落ていて僕は好きです。何だかフランス語のリエゾンっぽい表情付けで(要はポルタメントということですが)、母語と音楽とが密接に絡み合っているんだということも感じました。
昔はイタリア・オペラもドイツではドイツ語上演、イギリスでは英語上演というのが当たり前だったようですが、フルトヴェングラーの「フィガロ」のドイツ語上演実況盤などを聴いて、違和感を感じるのは「言葉の慣れ」だけでなく、言葉の持つリズムと音楽とがマッチしていないからなんでしょうね。
オペラは本来の作曲者が意図した原語で聴くのがベストなんだということをあらためて感じさせられもしました。ご推薦ありがとうございます。

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雅之

ラヴェルの作曲当時の演奏が入ったCD、聴かれましたか!
「ボレロ」のトロンボーンの表情の印象については、私も岡本さんと同感です。個性があっていいですよね!
このCD、(ピアノ協奏曲初演の)女流マルグリット・ロン(なかなか良かった)や、(左手の初演で悪評高かった)パウル・ヴィトゲンシュタインのピアノ(でも、聴いたら想像していたより良かった)、それにワルターの指揮(これは深い!)も、実に興味深いですよね!

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岡本 浩和

>雅之様
聴きました、聴きました!
想像以上に良かったです。
>このCD、(ピアノ協奏曲初演の)女流マルグリット・ロン(なかなか良かった)や、(左手の初演で悪評高かった)パウル・ヴィトゲンシュタインのピアノ(でも、聴いたら想像していたより良かった)、それにワルターの指揮(これは深い!)も、実に興味深いですよね!
全く同感です。

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サチ

はじめまして
検索からお邪魔しました。
ナナさんの紹介ブログをささやかに編集しておりますサチと申します。
ご紹介の曲は、本当に素晴らしくて、Youtubeで多く紹介されておりますので、ぜひぜひお聞きいただきたくご紹介させていただきます。
Libertad→http://www.youtube.com/results?search_query=Mouskouri+Libertad&search_type=&aq=f
Song for Liberty→http://www.youtube.com/results?search_query=Mouskouri+Song+for+liberty&search_type=&aq=f
フランス語→http://www.youtube.com/results?search_query=Mouskouri+Je+chante+avec+toi+libert%C3%A9&search_type=&aq=f
自分的にはフランス語が一番響きが好みでございますが、、いかがでしょうか、

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岡本 浩和

>サチ様
はじめまして、コメントをありがとうございます。
紹介ブログをざっとですが拝見しました。とても凝ったページでゆっくりと楽しませていただきます。
「Libertad」の言語違いバージョンはそれぞれに面白いですね。どれも味があります。確かにフランス語の響きは洒落てますが、英語バージョンは耳に馴染んでいることと聴いて意味がわかる分、僕的には一日の長があるようです。

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サチ

岡本 浩和 様
早速のお返事どうもありがとうございます
日本ではマイナーなナナさん、僭越ですがどうぞ宜しくお願いいたします。
Multiplyのオランダの方のサイトも、お暇の折お訪ねくださいませ
http://nanayahoogroup.multiply.com/

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