何と剛毅で確信に満ちた音であろうか。
冒頭、2つの力強い和音を聴いて思った。
とても「悲劇的」とは思えぬ主題に溢れる熱気と優しくなめらかに歌われる旋律に、喜びの戦慄が走った。希望の歌。マタチッチがNHK交響楽団を指揮してのブラームスの「悲劇的序曲」。
たかぶり勢う精神。巧みにそれを引き下す
愛。あらけなく押しひしぐ苦悩。
こうして私は一巡する 生の弧線を
そして戻る 私の由来する源へ。
「生の道」
~川村二郎訳「ヘルダーリン詩集」(岩波文庫)P24
どんな音楽にもやっぱり創造者の愛が通底するのだと思う。
そして、それを再現する音楽家の愛も。
ヘ長調交響曲にも同じく熱を帯びた生命力が終始宿る。第1楽章アレグロ・コン・ブリオ冒頭、主題の咆哮、またコーダの夢見る静かなその回想に、マタチッチの作品へのただならぬ愛情を思う。
愛する兄弟よ! 思うに我らの芸術は
若人にひとしく 長らく泡立ちの湧き返り
やがて美の静けさへと熟するのだ
ひたすら心虔しくあれ ギリシャびとのように!
「若い詩人たちに」
~同上書P27
ブラームス:
・悲劇的序曲作品81(1975.11.19Live)
・交響曲第3番ヘ長調作品90(1973.12.5Live)
ロヴロ・フォン・マタチッチ指揮NHK交響楽団
第2楽章アンダンテの安寧に解ける身と心。呼吸の深い旋律は僕たちを癒す。
続く、第3楽章ポコ・アレグレットの内なる情念に思わず僕も胸が熱くなる。
胸に燃える思いを秘めようと 血気を押しとどめようと
甲斐ないことだ 先達と初心者を問わず 人間には。
誰に妨げ得よう 我らに喜びを禁じ得よう?
神の火も 昼夜をおかず 出で立てよと促す。
さらば行け! 開けた世界に眼を見張り
よし遠くとも おのれに叶うものを求めるために。
「パンと酒」
~同上書P100
終楽章アレグロの闘争はブラームスの真骨頂であり、最後に至って安息を獲得し、第1楽章第1主題を伴って静かに閉じられるその様は、音楽的にも構成的にも類を見ない美しさ。その日ホールに居合わせた聴衆はさぞかし幸福感を味わったことだろう。
終演後の、比較的静かで厳粛な拍手がそのことを物語る。
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>どんな音楽にもやっぱり創造者の愛が通底するのだと思う。
人生にブラームスが必要ない私は、豪快なショルティ指揮シカゴSOでも聴き、さっぱりして、「ああ、快感! ざまあみろ、ブラームス!!」と、留飲を下げたいところです(笑)。
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これで、爽やかに梅雨時の鬱陶しい月曜日を迎えられそうです。ショルティの録音って、こういう使い道があることに気付いています(笑)。
こっちも併せて!
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ちなみに、11月~12月のライブ録音を6月に聴きたくないというのが、もうひとつの感想です。季節感に敏感なもので(笑)。
>雅之様
>人生にブラームスが必要ない私
豪快なショルティ盤を採り上げるところに、ブラームスに対するひねくれた愛情を感じます。(笑)
>季節感に敏感なもので
地球の裏側では反対の季節ですから11月~12月のライヴ録音を5月~6月に聴くのもありということで。
いわば避暑です。(笑)
岡本様が、夏の一番くそ暑い時にブラームスをお聴きになるのがお好きなのは、昔からよく存じ上げております(笑)。正直、へ〇〇ん〇〇〇〇た〇〇〇い〇〇趣〇〇〇〇〇〇〇味だと思いますが(笑)。
>雅之様
ブラームス好きには確かに変人が多いですからね・・・。
それを言うならシューマンもですけど・・・。(笑)