ベートーヴェンの変ホ長調

beethoven_septet_wiener_kammerensemble.jpg人生の中で転機になる時期、いわゆる誰もが直面するイベントはいくつかある。
学校の入学、卒業。あるいは、就職、転職。さらには結婚や出産、そして時には離婚など。節目節目において、人は悩み、壁を乗り越え、成長する。
新米パパ&ママ、プレ・ママ&パパたちにとって音楽で癒されることって大切だろうという考えから愛知とし子の「音浴じかん」は始まったが、「癒し」だけでなく、人間について学ぶことも大事なのでは、という話になった。
子どもの成長にとって、特に3歳までの親の生き様や環境はその後を左右するとても重要な要素になる。誰しも親として最初は未熟だ。間違ったこともしてしまうこともある。たとえそうだとしても、「人を受け容れる」ということを体感的に教えられていれば子育ては全く違ったものになる。残念ながら、現時点で僕はまだ子育てを経験していないから大きなことは言えないが、旧知の友人から聞いた話をあえて書いてみると次のようだ。

学生の頃から人間についてしっかりと学んだ彼は、娘に対して幼い時から「生まれてきてくれてありがとう」と言ってハグをしてあげる機会をもっていたという。それに対してお嬢さんは何と答えるのか?・・・「どういたしまして」と笑顔で返してくれるのだという。何と微笑ましく、おおらかなことか。これで、この子はたとえ反抗期があっても(反抗期は成長過程において必然なので、ないと逆に困るのだが)グレることはないだろう。

親子の関係というのは面白い。時に言いたいことを言い合って争い、時に腹を割って話をし、受け容れ合う。それによって「絆」がますます強まる。身近な人間関係の調和をいかに作るか、それこそが誰もができるひとりひとりの課題なんじゃないかと僕は思う。

ところで、神奈川のある大学の講義が終わった後、他の先生方と話していて今の大学生の学力の低さに吃驚するという話になった。確かに分数の計算すらできない輩もいるし、応用問題になると投げ出す(つまり考えられない)学生も多い。しかしながら、勉強をしなかった学生だけに責任があるのではない。要は、今の19歳から22歳というのは小学校高学年時に「ゆとり教育」の切り替わりで、突然土曜日が休みになったものの、システムがまだまだしっかりしておらず、先生もどう対処して良いかわからず、放ったらかしにされていたケースが大半なのだと聞いて二度吃驚した。子どもたちが大人の勝手な「しくみの転換」の犠牲になったとも考えられるから。そういうことがわかっている学生は「僕らが悪いんじゃないですよ!」とはっきり言い返してくるらしい。

しくみを変えるのって難しい・・・。

ベートーヴェン:
・七重奏曲変ホ長調作品20
・六重奏曲変ホ長調作品81b
ウィーン室内合奏団(1992.6.10-15)

ウィーン・フィルの名コンサート・マスターであるゲルハルト・ヘッツェル氏が率いた合奏団の最後の録音。この1ヶ月近く後、ヘッツェル氏は不慮の事故により急死する。ここ最近の興味のひとつにベートーヴェンとフリーメイスンの謎があるが、若き日の作品である七重奏曲、六重奏曲はいずれも変ホ長調で、しかもホルンが活躍する(第1楽章は双方ともアレグロ・コン・ブリオ!)。いずれも「エロイカ」交響曲以前、1790年代後半の作曲ゆえフリーメイスンがどれだけ影響を与えているのか全く勉強不足で言及不能だが、それにしても興味は尽きない。ただし、六重奏曲は作品番号をみてもわかるように、1810年になって突然出版された代物である。なぜベートーヴェンはその年になって発表しようとしたのだろうか?ナポレオンが絶頂を誇っていたその頃に・・・。

ちなみに、ヘッツェリアーナというヘッツェル氏のファン・サイトはなかなか充実していて面白い。


4 COMMENTS

岡本 浩和

>ふみ君
おはよう。
そっか、ギリギリ違うか!!
1年違うだけでえらい違いね(笑)。

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雅之

おはようございます。
子育てっていうものも、私自身、野党で言いたいことを言っていた我が国の民主党が、初めて与党になり戸惑いながら政権運営しているようなもので、昔外側から論じていたころと、実際に自分が当事者になってやってみるのとでは、まあ、まるで実感が異なります。自分の時間はどんどん犠牲になりますが、日々多くの発見をさせられ充実していて楽しいです。
「何かを学ぶためには、自分で体験する以上にいい方法はない」(アインシュタイン)・・・(※蛇足 楽器もです!・・・凡才雅之)
>何と微笑ましく、おおらかなことか。これで、この子はたとえ反抗期があっても(反抗期は成長過程において必然なので、ないと逆に困るのだが)グレることはないだろう。
同感です。普通の人が常識的に考える「幸せに恵まれる資質」を子供に与える教育をするなら、これで万全です(笑)。絶対、ベートーヴェンや、ブラームスや、グレン・グールドや、ニュートンや、アインシュタインみたいな性格にはなりませんから安心です(笑)。
「蝶はモグラではない。でも、そのことを残念がる蝶はいないだろう」(アインシュタイン)
>「僕らが悪いんじゃないですよ!」とはっきり言い返してくるらしい。
「学校で学んだことを一切忘れてしまった時になお残っているもの、それこそが教育だ」(―教育について― アインシュタイン)
>ここ最近の興味のひとつにベートーヴェンとフリーメイスンの謎があるが、若き日の作品である七重奏曲、六重奏曲はいずれも変ホ長調で、しかもホルンが活躍する
なるほどです。新たな発見です。感謝です。
こうやっていろいろ調べると、ベートーヴェンは、相当若い時期からフリーメイスン思想の影響を受けていた節がありますよね。七重奏曲、六重奏曲がどの程度フリーメイスン思想の影響下にあるかは謎ですが、ベートーヴェンにとってはモーツァルトの他に、同じくフリーメイスンだった師のサリエリとの関係が深かったことにも、今更ながら気付かされています。
空想の翼がどんどん拡がります!!
「空想は知識より重要である。知識には限界がある。想像力は世界を包み込む」(アインシュタイン)
ヘッツェルの、硬派でありながらウィーンの伝統をしっかりと引き継ぎ、なおかつバーンスタインなどの新しい音楽性もよく理解した名コンマスの職人気質、大好きでした。
ご紹介の、ヘッツェリアーナというファン・サイトは、ヘッツェル氏への愛でいっぱいですね!!  1992/04/25,26の第8回定期演奏会にてマルティヌーの「フルートとヴァイオリンのための協奏曲」を演奏(フルートはW.シュルツ、指揮は小澤征爾)っていうのが略歴の最後の方に書いてありますね。
http://www.hetzelianer.com/guide/gu_zel.html
最期の登山はレグラ夫人が一緒だったんですね。何だか泣けます。
小澤征爾も桑田佳祐も、奥さんを悲しませないためにも、どんどん元気になって欲しいです。
http://www.youtube.com/watch?v=SvignN-mM-0
家族は一番大切です。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんわ。
何事も体験に優るものはないですよね。
しかし、こうやって並べてみるとアインシュタインはやっぱりすごいですね。アインシュタインの言葉、雅之さんの言葉肝に命じます。
>ベートーヴェンにとってはモーツァルトの他に、同じくフリーメイスンだった師のサリエリとの関係が深かったことにも、今更ながら気付かされています。
あー、そうですね!僕も今気づきました。ありがとうございます。
>ヘッツェルの、硬派でありながらウィーンの伝統をしっかりと引き継ぎ、なおかつバーンスタインなどの新しい音楽性もよく理解した名コンマスの職人気質、大好きでした。
同感です!
>最期の登山はレグラ夫人が一緒だったんですね。何だか泣けます。
>小澤征爾も桑田佳祐も、奥さんを悲しませないためにも、どんどん元気になって欲しいです。
同じく!!

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