運のいい人

beethoven_backhaus_1_3.jpg大学での講義後大崎に向かった。最近はキャリア・カウンセリングに「ストレングス・ファインダー」を取り入れている。クライアント本人には自身の「強み」をいかに活かすかのヒントにつながるし、依頼者である上司にとってはいかに上手に部下の才能を活かすかの指南になるから。人事部長と話をしていて、中途採用の話から組織の中で成功するには「運」も大切だという話になった。「運」が90%を占めるのだと。だから採用面接では「強運」の持ち主かどうかを量るらしい。なるほどそういわれればそれは大切なことかもしれない。

カウンセリングが終了した足で春日にある文京シビック・センターに向かった。NPO法人徳育と人間力育成研究所理事長である青木清氏の講演会。2時間のプログラムにしてはレジュメが多すぎ内容が濃すぎるきらいがあり、消化不良のようにも思われたが、参考になることもあったので良しとする。ここでも「運」が出てきた。松下政経塾の面接のポイントは「運のいい人、愛嬌のいい人、後姿のいい人」だということだが、とても納得できる。そう考えると、「運」こそ自分で引き寄せるものだということだろう。

若い頃、それほど面白いと思わなかった作品、例えばベートーヴェンの初期作品のほとんどが僕にとってはそうだったが、年をとるにつれ、あるいはベートーヴェンの人となり、思想に一層の興味を抱くにつれとても身近な存在になってゆく。ベートーヴェンは師に恵まれた人、すなわち「運のいい人」だった。
1790年以降、ハイドンのほかサリエリなどからも指導を受けることになるのだが、彼の才能の方が大きすぎ、結果として師匠たちの枠を大幅に超えてしまうことになるものの、師の影を追っかけながらも一生懸命に自分をぶつけた作品は大いに魅力的だ。

ベートーヴェン:
・ピアノ・ソナタ第1番ヘ短調作品2-1
・ピアノ・ソナタ第2番イ長調作品2-2
・ピアノ・ソナタ第3番ハ長調作品2-3
ヴィルヘルム・バックハウス(ピアノ)

第3番はバックハウス最晩年の録音(死の3ヶ月前!)だが、85歳とは思えない自由闊達さが一層魂を揺さぶる。ベートーヴェンの音楽は一般的には堅牢で人間臭いというイメージがついているように思うが、こういう演奏をあらためてじっくり聴くと「さにあらず」だと思わせられる。ベートーヴェンは「人間らしく」演じていただけで、実は若い頃から「人間らしさ」を超えてしまっていたのではないかと痛感させられるのだ。賛否両論はあれ、どんな演奏スタイルでもベートーヴェンはベートーヴェンだと感じさせられるそのあたりの懐の深さがすでに神懸っている(平気でモーツァルトやクレメンティのマネをするところなども肝が座っており天晴れ)。


6 COMMENTS

ふみ

おはようございます。
運の良いかどうか、というのをどのように見分けるのでしょうかね。僕は努力が運を引き寄せると思っていますが。
ベトのピアノソナタは交響曲や弦楽四重奏より彼の作風の変化が最も読み取れるように思います。やはりバックハウス、良いですよね。個人的にはやはりバックハウスやケンプなどの保守本流の演奏スタイルが好みです。
今度は是非とも交響曲3.6番の良さを御教授下さい(笑)

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雅之

おはようございます。
「運」を自分で引き寄せるにはどうしたらよいのでしょう?
正解のひとつとして考えられるのは、岡本さんのように、スピリチュアルの世界にどっぷりと浸る体験をしてみることかもしれませんね。
スピリチュアルの効用は、「他者に生かされている、感謝する」という意識を持てるようになることですかね。それはプラセボ(偽薬)効果であっても構いません。
「信じる者は救われる」、そのことこそが大切なのです。
我が家の場合、四つ葉のクローバー(クロバツメクサ)
http://aquiya.skr.jp/zukan/Trifolium_repens.html
の鉢植えを買って育てるようになってから、何故か幸運が数多く舞い込むようになりました。
この植物を買い求めたきっかけは、ある一冊の本を読んだからでした。
「植物を部屋に置くだけで、幸せがやってくる  Happyグリーン&フラワー ―植物がくれる、癒しと浄化―」  杉原 梨江子 (著) 永岡書店
http://www.amazon.co.jp/%E6%A4%8D%E7%89%A9%E3%82%92%E9%83%A8%E5%B1%8B%E3%81%AB%E7%BD%AE%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%91%E3%81%A7%E3%80%81%E5%B9%B8%E3%81%9B%E3%81%8C%E3%82%84%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%82%8B-Happy%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3-%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%AF%E3%83%BC-%E6%9D%89%E5%8E%9F-%E6%A2%A8%E6%B1%9F%E5%AD%90/dp/4522426674/ref=sr_1_2?ie=UTF8&s=books&qid=1280868128&sr=1-2
・・・・・・幼い頃、野原で四つ葉のクローバーを探した思い出、あなたにもあると思います。時間を忘れて一生懸命探して、やっと見つけた時の喜び・・・・・・。そんな幸せな気持ちをくれる四つ葉のクローバーを自分の家で育てられる日がくるなんて、思ってもみませんでした。
 昔から、四つ葉のクローバーは幸運の印、裕福な暮らしを表しています。でも、その幸運は、偶然のように舞いこんでくるという意味ではないのです。幸せの象徴となった由来は、家畜として飼っていた牛を野に放したとき、牛たちがクローバーをうれしそうに食べている姿を見て、飼い主が幸せを思う、その喜びを表したのです。他者の喜びを自分の喜びのように感じることができる、あたたかな愛のシンボルが四つ葉のクローバーなのです。育てていると、自分のことばかり考えがちなエゴは浄化され、他者の幸せを願う心が豊かになります。幸せは幸せを呼び、あなたのまわりにも幸せが増えていきますよ。・・・・・・(同書55ページ)
伝説によれば四つ葉のクローバーの小葉は、それぞれ希望・誠実・愛情・幸運を象徴しているとされるそうです。
また、クローバーの葉はハート型をしていることから、愛を司る植物として名前をCLOVERと命名された、という説があります。
CLOVERを三つに分解するとC-LOVE-Rとなります。
 ・CはCREAT (創造する)
 ・RはRING (輪)
よって、CLOVERは「愛の輪を創造する」という意味になるそうです。
「クローバーのハート型の小葉」「フリーメイスン」の3も大切だけど、
「四つ葉のクローバー」の4もラッキーナンバーです。
そう考えると、日本でも「四」を忌み嫌うことはないです。
弦楽四重奏曲は、「希望・誠実・愛情・幸運」の響きなのかもしれません。

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岡本 浩和

>ふみ君
おはよう。
件の会社では面接時に過去の体験を根掘り葉掘り聞いて、強運かどうか判断するらしいです。エピソードを聞けば、ある程度その人の「運」についてはわかるからね。努力しても報われない人もいるからやっぱり「思考」の問題もあるだろうね。
ところで、バックハウスは保守本流っていわれているけど、傍らのピアニストに言わせれば保守どころか革新ということです。(セオリー通り、テキスト通りではない、斬新なアプローチ)
「エロイカ」と「田園」については今度ゆっくり。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>「信じる者は救われる」、そのことこそが大切なのです。
確かにそうかも知れません。
>我が家の場合、四つ葉のクローバー(クロバツメクサ)の鉢植えを買って育てるようになってから、何故か幸運が数多く舞い込むようになりました。
へぇ、そうなんですね!クローバーの命名については初めて知りました。「愛の輪を創造する」とは素晴らしい!
>弦楽四重奏曲は、「希望・誠実・愛情・幸運」の響きなのかもしれません。
お見事!弦楽四重奏を聴く楽しみが高まったような気がします(笑)。

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じゃじゃ馬

運のいい人…性格も大いに関係しているなあ、というのがわたしの見てき手思うことです。素直というか単純な人は運がいいかもしれません。
思考とも関係するんでしょうね。
私も運がいいほうかも。
過去の就職は3度ほど相当な倍率(あるところは3%の合格率でした)で就職できました。実力ではない気がします(笑)
アマチュアオケ弾きとしても、たぶん他のオケマンよりも有名な指揮者やソリストと共演することが多いんじゃないかと思います。
ヘッツェルさまの亡くなられる前年にその実演をサントリーホールの特等席で聴けたのも運のよさゆえだと思います。
そのときの演奏はいまだに聴いた実演のベスト3に入るものです。
運がいい~と思ってるとますますよくなるものかもしれないですね。

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岡本 浩和

>じゃじゃ馬さん
ご無沙汰してます。
そうですね、性格も関係しているかもですね。確かにじゃじゃ馬さんは運がいいかもですねぇ、僕ともひょんなことから出逢えましたし(笑)。あと、ヘッツェリアーナはじゃじゃ馬さんからおしえてもらったんでしたよね!ありがとうございます。亡くなる前年のパフォーマンス、さぞかしでしたでしょうね。
>運がいい~と思ってるとますますよくなるものかもしれないですね。
同感です。

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