ハスキル&フリッチャイ指揮RIAS響のモーツァルトK.466(1954.1録音)ほかを聴いて思ふ

1990年、ジミー・ペイジ本人がリマスタリングと編集を担当した4枚組ボックス「レッド・ツェッペリン」がリリースされた。あれを初めて順番に聴いたとき、最初からそのようにでき上っていたのではないのかと錯覚するくらいペイジの選曲と編集が抜群で、感動の渦に包まれ繰り返し聴いたものだ。そのとき僕は、レッド・ツェッペリンは唯一無二の、そして時代を超えて生き永らえるだろうバンドだとあらためて確信した。
そして、それより何より、この4枚組が「表」すなわち「陽」だとするなら、その3年後にリリースされた「ボックスセット2」は、間違いなくツェッペリンの「陰」のパートを表現していて、いわば「裏」の作品群が網羅されているのに、恐ろしいばかりの説得力がある様子に当時僕はため息をついた。

“Good Times Bad Times”に始まり、”We’re Gonna Groove”の文字通り圧倒的なグルーヴ感、そして”Night Flight”の陽気な舞踏から一転して自然体でアコースティックな”That’s The Way”、さらに(1968年に録音されたものの)アルバム未収録の蔵出し音源”Baby Come On Home”という流れは、まさに時間と空間を超越したツェッペリン・ミュージックの真骨頂。

レッド・ツェッペリンは、過去何度か未発表ライブ盤リリースの話が持ち上がったそうだが、いつもロバート・プラントの反対で実現しなかったという。11年前の、ジェイソン・ボーナムを加えてのたった一夜限りのロンドンでの再結成ライブは確かに素晴らしいものだったが、本体はすでに80年のジョン・ボーナムの死によって封印されており、あくまでそれはツェッペリンの幻影だった。「玉手箱」は安易に開けてはいけないのだとあらためて思う。

・Led Zeppelin:Boxed Set 2 (1993)

Personnel
Robert Plant (lead vocals, harmonica, percussion)
Jimmy Page (guitar, backing vocals)
John Paul Jones (bass, keyboards, mandolin, backing vocals)
John Bonham (drums, percussion, backing vocals)

完全無欠のロック・バンド。闇を恐れることなかれ。

あなたが闇を理解するなら、闇はあなたを捕らえる。闇は夜のように青い影と無数にかすかに光る星とともにあなたを捕らえる。あなたが闇を理解し始めると、沈黙と平和があなたを捕らえる。闇を理解しない者だけが、夜を恐れる。あなたの中の闇、夜、深淵の理解を通じて、あなたは完全に単純になる。そしてあなたは皆と同じように千年を通じて眠るように準備し、千年の懐へ降りていって眠り、あなたの壁には古の寺院の歌声が響く。なぜならば単純なものが、常に存在したものだから。千年の墓で夢見る間に、沈黙と青い夜があなたの上に広がっていく。
C.G.ユング著/ソヌ・シャムダサーニ編/河合俊雄監訳/河合俊雄・田中康裕・高月玲子・猪股剛訳「赤の書」(創元社)P295-296

世界には裏があることを知るべきだ。裏を理解できれば表がより一層深く理解できる。
夜を恐れないことだ。それには闇を知り、闇を受け入れることだろう。

陰陽のモーツァルト。長調のモーツァルトは表なのか裏なのか?
僕は意外に、それこそが裏で、短調のモーツァルトが本当のモーツァルトなのではないのかと時折思うことがある。いや、この際、表とか裏とか、陰とか陽とか、どうでも良い。表裏が一体であることを理解するならば。

クララ・ハスキルはニ短調の協奏曲K.466をこよなく愛した。おそらく最も有名な録音はイーゴリ・マルケヴィッチとのものだろう。しかしながら、演奏にある音楽性やセンスなどを考慮すると、フェレンツ・フリッチャイとの録音に軍配が上がるのではないかと僕は思う。

モーツァルト:
・ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466
フェレンツ・フリッチャイ指揮ベルリンRIAS交響楽団(1954.1録音)
・ピアノ協奏曲第27番変ロ長調K.595
フェレンツ・フリッチャイ指揮バイエルン国立管弦楽団(1957.5録音)
クララ・ハスキル(ピアノ)

悪魔的の片鱗を感じさせない明朗なニ短調協奏曲。
それゆえに逆に真実味を帯びるモーツァルトの魂よ。透明かつ可憐な第2楽章ロマンスに夢を見るようだ。
あるいは、天使の如くの変ロ長調協奏曲の優美さよ。恐ろしいかな。
ハスキルのピアノが美しい。

 

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