妻という最も身近な赤の他人を大切にする人が増えると・・・

mendelssohn_symphonies_abbado_lso.jpg

「早わかりクラシック音楽講座」を、細々とではあるがやってきたお陰で、僕自身があまり注意して聴いて来なかった作曲家や音楽を「発見」することが多い。クララ・シューマンについてはその最たる例だし、ロベルト・シューマンにしたってのめりこんで聴き、研究したことがなかったから、先日の講座で人となりを含めて大いに勉強させてもらった。何年か前に採り上げたメンデルスゾーンなどもそう。シューマン夫妻と同様、バッハの音楽の復興、あるいはシューベルトなど未知であった作品の演奏など、彼の力なくして「今」の音楽界は存在し得ないことをあらためて認識。メンデルスゾーンはモーツァルト同様幼い時からその才能をフルに発揮し、若くして名実ともに第一人者として君臨したわけだし(シューマンは同時代の作曲家の中で彼を最も認め、尊敬していた)、残されたどの作品を聴いてみても、一部の隙も見せないほど完璧なものに仕上がっているところが凄い。モーツァルトには慟哭が聴こえ、悲しみが表出する瞬間がいくつもある。もちろんメンデルスゾーンの作品にもそれはあるが、モーツァルトのとはちょっと違った、「人間感情」を超えた「自然体」的なものであるところが面白い。「スコットランド」交響曲などを聴いていると、メンデルスゾーンはひょっとするとモーツァルト以上の才能の持ち主なのかもと思わせられる瞬間がある。


外をふらりと歩いていて、そういえばシェーンベルクらの「無調音楽」の抽象性と、メンデルスゾーンの音楽が発する「中庸な」調和性とが実にコインの表と裏でつながっているのじゃないかとふと思った。2人ともユダヤ人だし、境遇や創作物はまったくもって異なる2人だが、同じようなものを表現しようとしたのではないかと(根拠なく)思った。

メンデルスゾーン:
・交響曲第3番イ短調作品56「スコットランド」
・序曲「美しきメルジーナ」作品32
・トランペット序曲作品101
・序曲「ルイ・ブラス」作品95
クラウディオ・アバド指揮ロンドン交響楽団

スコッチ・シンフォニーは麻薬のようだ・・・、酔うかの如く気持ちが良くなる。不思議な音楽。

Ansicht_von_Luzern_-_Aquarell_Mendelsohn_1847.jpg

裕福な家庭に生まれ育った彼の人生は、一般的には順風満帆だったように思われているが、決してそうではないことが伝記などを読むとよくわかる。それとモーツァルトより格上なのではないかと思ってしまうのは、彼が多数の言語を話し(当時のヨーロッパ知識階級では当たり前のことだったのだろうが)、絵画や詩にもそのセンスを発揮していたという事実。メンデルスゾーンの描いた右の絵にもやっぱり「中庸」が感じられる。人の「意志」とか「感情」が抜け落ちているのだが、かといって無機的でなく有機的な趣を示す。ダ・ヴィンチと同種の天才なのだろう・・・。

夕刊を開いたら、「1月31日午後8時9分、ハグタイムに100万人がハグすれば地球は一瞬いい感じ・・・」と。そういえば1月31日は「愛妻の日」らしい。
「妻という最も身近な赤の他人を大切にする人が増えると、世界は平和になるかもしれない」と。

シューマン夫妻もお互いを支え合った「おしどり夫婦」だったが、メンデルスゾーンにもセシルという素晴らしい妻がいた。


2 COMMENTS

雅之

こんばんは。
岡本さんの価値観、人生観が、なぜマーラーを極力避けようとするのか、だんだんと理解できるようになりました。
岡本さんは「極端」「軋み」より「中庸」を重要視されるんですよね。そのお気持ち、手に取るようにわかります(笑)。
おっしゃるような意味での、メンデルスゾーンやシェーンベルク寄り「中庸」の立場から眺めると、以前はつまらないと思っていたブーレーズ指揮のマーラーのCDが、俄然掛け替えのない価値を持つように思えてきました。そう考えると、交響曲第1番~第9番まで、それに「大地の歌」も含めて、どの演奏も「中庸の美」の極致で素晴らしいです。
http://www.hmv.co.jp/search/index.asp?target=CLASSIC&genre=700&adv=1&keyword=%83u%81%5B%83%8C%81%5B%83Y+%83%7D%81%5B%83%89%81%5B++%8C%F0%8B%BF%8B%C8&site=&type=sr
今日聴いたのは、最初に録音された第6番、
http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=340587
第一楽章、奥さんの「アルマのテーマ」がじつに切ないですが、ブーレーズの演奏で聴くと、作曲家の個人的な私情を超越した「中庸」で純粋な美に昇華されたかのようです。
>「妻という最も身近な赤の他人を大切にする人が増えると、世界は平和になるかもしれない」
実際のオシドリのように毎年パートナーを変えても、世界は平和になるのでしょうか? 
一夫多妻の社会では? 一妻多夫では? 
独身では平和になれないのでしょうか? 
地下鉄はどこから入れるのでしょうか? 
そんなこと考えたら、夜寝られなくなっちゃう(古っ!)。
考えていたら夜寝られなくなったので、ちょうどいい! 2時間後に始まるサッカーAFCアジアカップ2011・決勝「日本×オーストラリア」を、妻子と一緒にテレビ観戦することにします(笑)。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
こんにちは。
確かに僕は昔から争い事が嫌いでした。マーラーを意識的に避けているわけではないのですが、おっしゃりたいこともわかります。
>どの演奏も「中庸の美」の極致で素晴らしいです。
同感です。最近はとんと聴いておりませんが、このコメントに触発されたのでじっくり聴いてみたいと思います。
>そんなこと考えたら、夜寝られなくなっちゃう(古っ!)。
(笑)。独身でも平和になれると思いますよ。ものを大切にする気持ちが大事なんでしょうね、やっぱり。
>2時間後に始まるサッカーAFCアジアカップ2011・決勝「日本×オーストラリア」
またまた良い試合でしたね。

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください