「未来の帝国は心の帝国である」~サー・ウィンストン・チャーチル
自分のことばかりを考えすぎると人間はことのほか疲れてしまう。自分のことを捨てた瞬間に面白いように解放され、先々が明瞭に見えてくるということはよくあることだ。結局やりたいことをやりたいように進めていくことがベストだし、ともかく世の中のためになる何かを志せばすべては上手い具合に回っていくもの。肩の力を抜いて、焦らず、ひとつひとつやり遂げていくことを考えよう。
アレクサンドル・グラズノフは、ペテルブルク音楽院長時代に少年ショスタコーヴィチの才能をいち早く見抜いたロシア音楽界の重鎮。モダニズムに対して徹底的に批判的であった彼の作風はとても叙情的で古典的なもの。僕の手元になかったとある交響曲の録音がやっと手に入った。
新星日響のプライベート盤としてほんの一時期世の中に流通した朝比奈隆によるグラズノフの交響曲第8番。1992年1月18日、サントリーホールでの熱演なのだが、実際にその会場に居合わせた僕にとって二つの点で忘れられない朝比奈先生のコンサートの一つである。一つは、プログラム後半のチャイコフスキー、「悲愴」交響曲の第3楽章終了時に拍手が起こったこと(僕はクラシック音楽を知らない聴衆が今日は何と多いのだろうと思ったのだが、本当に感動して思わず手を打ち鳴らした人がいて、その後連鎖的に何名かの拍手に繋がったのかもしれない。実際のところはわからないが)。そしてもう一つは、晩年の朝比奈御大には珍しくアンコール(リャードフの「愁いの歌」)が演奏されたこと。85年以降ほとんど全ての朝比奈先生の東京でのコンサートには足を運んでいるが、僕の記憶ではアンコールがあったのはこの時だけではないだろうかと思う・・・。
それと、もう一つ付け加えて不思議なのは、1月26日の芸術劇場での公演の際も「悲愴」交響曲第3楽章が終わった時点で拍手が起こっていること。もう10年近く前のことと記憶するが、当時「朝比奈会」というファンクラブが存在し(御大が亡くなってからは「朝比奈協会」という名称に変わり組織変更されたが、数年前突然音沙汰がなくなった。僕は会員になっていたが、一切の説明なくある時お詫びとして余剰の頒布CDが1枚申し書を添えて送られてきた。一体何があったのだろうかいまだに謎である)、会員のために当録音がCD-Rに焼かれ特別頒布されたことがある。18日の実演を聴いていた僕は、この公演でも第3楽章が終わった時点で拍手が起こっていることに驚き、これは1月18日の録音なのではないかと思い込み、確認したところ、間違いなく1月26日のものということであった(その際、ご好意で個人的に1月18日の録音もCD-R化していただき、今現在も僕の手元にあるが、この「悲愴」も名演だと思うのでいずれ正規に発売されることを望む)。それにしても1週間しか離れていない二つのコンサートで同様の現象が起こったというのは珍しいことだと思う。
※9月1日の発売という告知であったが、昨日渋谷での打ち合わせのついでに久しぶりにタワーレコードに寄ったら、店頭に並んであったので早速購入した。朝比奈先生の音源はほぼ全て所有しているのだが、あと残るは1回目のブラームス交響曲全集か(発売当初から何度も見かけながらついつい手に入れ損ねた一品)。これもビクターがそのうち再発してくれることを祈って・・・。
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