一期一会のコルトレーン

coltrane_live_at_the_village_vanguard_again.jpgここのところ思うに任せ音盤を選択し、なんとなくその音楽を聴き始めるのだが、実に「深い」ものが多く、結局何度も繰り返しリピートすることになる。無意識にそういうCDを取り出しているのだろうが、世間に向けて発表される作品というのは、当事者が余程の気合いを入れて創造したものだろうから、そういう状態になるというのは当たり前といえば当たり前なのかも。世の中に溢れている録音の0コンマ00000000…1%ほどが僕の部屋にあるに過ぎないが、それにしても自分の音楽的チョイスのセンスの良さに舌を巻く(自画自賛・・・笑)。

思いつきで急遽勉強会を開催した。3連休の中日で、しかも雪模様の中、参加者がどれくらい集まるか多少の危惧はあったが、問題なし。面白いのは、似たような、というかそこに「いるべき」必要な人が自ずと集まるということ。仕事上、あるいはプライベート、誰でも問題を抱えるが、その答(またはヒント)をくれる人が偶然にもそこにいるということが何より素晴らしい。

数日前から、旧ブログ「アレグロ・コン・ブリオ」のデータを少しずつ本ブログに移行する作業を始めた。555もの記事を一つずつコピーしてゆく作業は気が遠くなるものだが、過去記事に目を通すと、なるほど2年半前のあの頃はこんなことを感じていたんだ(考えていたんだ)ということが確認できて興味深い(ただし、貴重なコメントが移行できないのが残念なのだが)。

John Coltrane:Live At The Village Vanguard Again!(1966.5.28Live)

Personnel
John Coltrane(ts, ss, bcl)
Pharoah Sanders(ts, fl)
Alice Coltrane(p)
Jimmy Garrison(b)
Rashied Ali(ds)

コルトレーンの「歌」は留まるところを知らない。わずかに原形を感知させる音楽の数々は、あくまでライブという前提で成り立つものであり(スタジオでの録音ではそれは無理だろう)、その意味ではヴィレッジ・ヴァンガードのその場に居合わせた人々のためにコルトレーン自身が発信した「手紙」のようなものである。彼とて、その瞬間は世界中の大勢が聴くとは思ってもいなかっただろうし、もちろんそんな視点で演奏されたとは思えない。悪く言えば、自己陶酔的に過ぎる作品。でも、その中にのっぴきならない「覚悟」が見えるのだから、やっぱり命を懸けてサックスを吹いていたのだろうな・・・。実際彼がこの時からわずか1年余りでこの世を去ることになることを考慮すると、一期一会のつもりでこれらに身を委ねてみることが最高の音楽追体験の鍵だろう。

2008年7月のブログの移行作業しながら、そういえばあの時は毎日フルトヴェングラーを聴いて何かを考えていたんだなと知った。やっぱりSACD聴きなさい、ということなのだろうか・・・(笑)。


8 COMMENTS

雅之

こんばんは。
フルトヴェングラーのSACD、ベートーヴェンの交響曲全集では、元々が劣悪な第2、第8交響曲を除いて、音質改善効果が著しいです。「田園」も素晴らしいですよ。それと、ブラームスの交響曲とワーグナーの管弦楽曲集も、久々に、抜群によくなった音で聴いて、感動を新たにしました。
>コルトレーンの「歌」は留まるところを知らない。わずかに原形を感知させる音楽の数々は、あくまでライブという前提で成り立つものであり(スタジオでの録音ではそれは無理だろう)、その意味ではヴィレッジ・ヴァンガードのその場に居合わせた人々のためにコルトレーン自身が発信した「手紙」のようなものである。
ライヴって、岡本さんがとかく軽視される、視覚効果も含めてのものだと思うんですよね。
例えば、またマーラーの交響曲で考えるとわかりやすいんですが、交響曲第6番「悲劇的」では、管楽器のベル・アップという「上昇」と、ハンマーを打ち降ろす「下降」との対比も「隠しテーマ」だと思うんですが、そんな効果は音だけ聴いても絶対に理解できません。
というわけで、申し訳ありませんが、このところ久しぶりにフルトヴェングラーのSACDから「クラシック脳」になってしまっており、他のジャンルについてコメントする余裕がありません。
本日鑑賞しましたのは、
『ニーベルングの指環』管弦楽版 マゼール&ベルリン・フィル
収録時期:2000年10月17、18日
収録場所:ベルリン、フィルハーモニー(ライヴ)
(Blu-ray Disc)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3975214
そうです。先日も、あの時も、
http://classic.opus-3.net/blog/cat29/post-268/index.php
話題になった、マゼールの名編集によるハイライトの実演記録なのですが、
観て聴くと、ワーグナーの管弦楽法を具体的によりよく理解できますし、とにかく、聴くだけより何倍も知的に学ぶことができました。

返信する
雅之

コルトレーンについて、少しだけ・・・。
・・・・・・1960年代にこの国のあちらこちらで起こっていた暴動で「焼いちまえ!すべてを焼き尽くせ!」と叫ばれていたことと同じ内容を、トレーンはサックスで表現していた。アフロ・ヘア、ダシーキ、ブラック・パワー、空に突き上げた拳とか、すべては多くの黒人青年にとって革命だった。・・・・・・マイルス・デイヴィス
コルトレーン、マーラー、ワーグナー、フルトヴェングラー・・・、彼ら熱い音楽家の精神から私が学びたいことは、
「あなたをみんなと同じにしてしまおうと日夜励んでいるこの世の中で、自分以外の誰にもなるまいとするのは、人間のでき得る闘争の中で最も厳しい闘いだ。そしてその闘いをやめてはならない」(e.e.カミングス)
http://seminar.opus-3.net/

返信する
岡本 浩和

>雅之様
こんにちは。
フルトヴェングラーのSACDについては了解しました。
これはもう「絶対」ですね。
「ブラームスの交響曲とワーグナーの管弦楽曲集も、久々に、抜群によくなった音」なんて話を聴くと、居ても立ってもいられません(笑)。
マゼールの映像については存在すら知りませんでした。おっしゃるように、視覚効果を伴っての鑑賞がやっぱり大事ですよね。確かに軽視しているきらいはあるかもしれません。
>1960年代にこの国のあちらこちらで起こっていた暴動で「焼いちまえ!すべてを焼き尽くせ!」と叫ばれていたことと同じ内容を、トレーンはサックスで表現していた。
おー、素晴らしい言葉。ありがとうございます。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
こんにちは。
早速「田園」のSACDを手に入れ、第3楽章~第4楽章あたりを抜粋で聴き比べました。
芯が太くなって、拡がりが出るようになりましたね。
比較したCDは
①CD初出の輸入盤(CDC 7 47121 2)
②CD初出のブライトクランク盤(TOCE-6513)
ですが、意外に①の音が悪くないんですよね。僕の装置では引けを取らないくらい良い音で鳴っております。SACDに比べて若干拡がりが感じられないかな・・・、という感じです。
それと、②ですが、個人的にはブライトクランクの音も好きで、これもやっぱり捨て難く、あわせてSACD化してほしいなと思いました。
まだまだざっとかじって聴いただけなので、後日またレポートします。
ありがとうございました。

返信する
雅之

こんばんは。
早速ですね!! 嬉しいです。
「田園」で、私の現在所有CDは、EMIの輸入盤、Referenceシリーズ(CDH7 63034 2)なのですが、明らかにSACDの方が情報量も増え、聴き疲れしない音に感じました。なお、この録音の、ご紹介の2枚(特にブライトクランクはそれ自体、過去未体験)や、ARTリマスターのCDは未聴です。
まあ、「田園」だけでも、今回のSACDはCD以後過去最高のリマスターの出来だと確信しておりますが、私より、もっともっとフルトヴェングラーを愛しておられる岡本さんには、ベートーヴェン、ブラームスの交響曲全集、ワーグナーの管弦楽曲集2枚の、第1回発売全体をお聴きになっての総合判断もしていただきたいです(と、プレッシャーの追い撃ち・・・笑)。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
フルトヴェングラーのEMI盤は再発されるたびに音が悪くなったといいますよね。Reference盤に関しては第2&第4のカップリングだけ所有してますが、第4番を他の盤と比べてみると明らかにそれを実感します。ブライトクランクに関しては一度耳にしてみてください。意外にいけます。
>ベートーヴェン、ブラームスの交響曲全集、ワーグナーの管弦楽曲集2枚の、第1回発売全体をお聴きになっての総合判断もしていただきたいです
おおーー、悪魔の囁き・・・(笑)。

返信する
雅之

>フルトヴェングラーのEMI盤は再発されるたびに音が悪くなったといいますよね。
ということは、今のフルトヴェングラーをよく知らない若い世代に安心して薦められるのは、必然的に今回のSACDになるかと思います。中古のLPやCDを除いては・・・。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
>必然的に今回のSACDになるかと思います。
それはもう間違いないですね。

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む