ソロという意識

beach_boys_smiley_smile.jpg今日の朝日新聞朝刊の文化欄で、作家の沢木耕太郎氏の奈良・東大寺での講演についてのレポートが掲載されていた。題して「ソロで生きる意識を」。南米で自身が体験した飛行機事故や、登山家夫妻との交流を通して、信念とする生き方の基本を語ったそうだ。
自分一人ですべてをコントロールできる仕事をしてきたから、その場、その瞬間を十分に生き切っている感じがあるからどんなときでも平気なのだという。
例えば、「ソロで生きると、一人で道を覚え、選択するが、集団だと全体について考えない。同じ時間を生きていても濃さが違う」、「問題はソロで生きていける人たちがパーティーを組んでいるかどうか。パーティーに加わりながらソロで生きていく力を蓄えるあり方は、その人の自由度が増す」、「家庭の中でもソロで生きていける能力を身につけようと意識している」、「どういう局面でも、ソロで生きていける自分をもった上でパーティーに参加していくということを意識することだ」など。なるほど自分中心の意見ではあるものの、個々人が自律して、そしてお互いにシナジーを生み出すような組織やプロジェクトを作ることが重要なんだと再確認した。

朝から部屋にこもりきりでPCにずっと向かい作業をしていると精神衛生上良くない。午後一番には多少の疲れが出たので休憩しているとKからメールが来た。今日は休みで新宿にいるのだという。美容院に行くので、その後お茶でも飲もうという話になり、早速気分転換をかねて出掛ける。人間はやっぱり外の空気を吸って歩き回らないとダメだなとあらためて感じた。それにしても夕刻はまだまだ寒い。

帰宅ついでに紀伊国屋書店に寄った。ふと「ペット・サウンズ(ジム・フジーリ著)」という村上春樹翻訳のノンフィクションを見つけた。というより、前にも書店では見かけていたが、「まぁいいか」ととりあえず無視していた代物。しかし、今日は気になったので購入する。未読なので内容については言及できないが、タイトルになっているビーチボーイズの「ペット・サウンズ」というアルバム、もう何度聴いたことだろうか。リマスター盤やデラックス盤が発売されるたびに買ってしまう僕にとってロック音楽の中で1、2位を争う傑作。The Beach Boysは間違いなく60年代がベストなのだが、その理由はBrian
Wilsonにある。この天才ミュージシャンはツアーの疲れなどから神経衰弱に陥り、そしてドラッグの影響もありでグループをドロップアウトし、70年代以降はほぼ使い物にならなかった人である。そのBrianがドロップアウト直前の66年に中心になって制作しリリースしたのがそれ。とにかく完成度は半端じゃない。その後に続く「Smile」というアルバムは結局リリースされず幻と終わったが、つい先年Brianが満を持してようやく再録音し発表した。来日Liveにも行ったが素晴らしかった。さずがに60年代の若い頃に持っていた輝きは薄れていたが、Brian Wilsonこそは沢木氏がいう「ソロで生きていける自分をもった上でパーティーに参加している」音楽家なのだろう。

The Beach Boys:Smiley Smile

件の「Smile」をお蔵入りさせた上で、全く形を代えリリースされたアルバム。支離滅裂さは免れないものの、この音盤とて決して馬鹿にしたものではない。賛否両論のアルバムだとは思うが、僕は好きである。名曲「Heroes And Villains」、「Good Vibrations」は当然のことながら、「Vegetables」、「Little Pad」、「With Me Tonight」など半分冗談だろと思わせる楽曲など、極めて個性的で佳曲揃いだと思う。

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