ケンペ指揮バンベルク響 スメタナ 歌劇「売られた花嫁」(ハイライト)(1962録音)

昔、ラジオのFM放送で流れていた、不思議に明るくて、軽快な音楽、一体これは誰の何という作品なんだろうと、思わず聴き惚れた作品があった。それは、ちょうど夏も終わる頃、今ごろの季節の黄昏時だったか、否、夜半の一コマだったか、記憶は定かでない。
初めて聴く音楽は、ベドルジハ・スメタナの「売られた花嫁」というコミック・オペラだった。チェコ語かと思いきや歌唱はドイツ語。僕は途中カセットテープに録音して、繰り返し聴いた。第2幕のフリアントに惹かれた。

ちなみに、すっかりそのことを忘れ、スメタナの音楽も長らく耳にすることはなかった。
数年前、バンベルク交響楽団70周年記念ボックスを仕入れたとき、あのとき聴いた録音のハイライト盤が収められていることを知って、少しばかり嬉しくなった。久しぶりにその音楽を耳にしたとき、僕は相変わらず心が躍った。

・スメタナ:歌劇「売られた花嫁」(ハイライト)(ドイツ語歌唱)
ピラール・ローレンガー(マリー、ソプラノ)
フリッツ・ヴンダーリヒ(ハンス、テノール)
ゴットロープ・フリック(ケツァル、バス)
マルセル・コルデス(クルシーナ、バリトン)
ナーダ・プッター(カティンカ、アルト)
ゲルトルード・フリートマン(エスメラルダ、ソプラノ)
エルンスト・クルコフスキ(シュプリンガー、バリトン)
ジークリンデ・ワーグナー(アグネス、アルト)
イヴァン・サルディ(ミーチャ、バス)
カール=エルンスト・メルカー(ヴェンツェル、テノール)
RIAS室内合唱団
ルドルフ・ケンペ指揮バンベルク交響楽団(1962.5, 6&10録音)

「売られた花嫁」は、ボヘミアの民謡を単に模倣や引用するのでなく、自身の音楽言語と掛け合わせて、(後期浪漫風の)新たなチェコ国民オペラとしてスメタナが送り出した傑作だ。そのことは、簡潔にまとめられた序曲を聴けば自ずとわかる。なんと魅力的で美しい旋律、音楽なのだろう。

そして、例えば、第2幕冒頭、合唱とハンス(ヴンダーリヒ)、ケツァル(フリック)の織り成す陽気なやりとり(駆け引き)に、スメタナの開放的な音楽が喜び溢れる終末を喚起する。

なあ、みんな 僕を信じてくれ
僕の名誉にかけて言うけど
愛はワインやビールよりずっと旨いんだ
そして世界でたったひとつの喜びなんだ
若さを満たす幸福さ

オペラ対訳プロジェクト

「愛はただひとつの喜びだ」と歌うフリッツ・ヴンダーリヒが素晴らしい。
それにもましてルドルフ・ケンペの棒は、音楽が縦横に飛び跳ね、物語のドタバタと結果的な幸福を一つに包括する器の大きさで、洋々と見通し良く、本当に美しい。クレッシェンドで急速に盛り上がる終幕ラストの全員による大団円は、スメタナの真骨頂。

すべては丸く収まった
真実の愛が勝ったのだ!
喜びのうちに戦いは終わった
幸せな婚礼の仕度をしよう!

オペラ対訳プロジェクト

(ベートーヴェンではないが)今生は喜劇に他ならない。何があっても心配無用、結果良し。
聴き慣れぬオペラは、まずは抜粋版で聴くのが手頃だ。また時間の節約にもなる。

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