音楽創造とは実に不可思議なものだ。
指揮者や演奏者によって音の変化があり、場の影響によっても必然的に音は変わる。しかも、聴き手に感動を与えるか否か、名演奏になるかどうかは、奏者の技術次第なのかと言えばそれだけでなく、解釈や思考までもが影響を与えるのだから面白い。
オーケストラ。それは実に不思議な楽器だ。かすかで繊細なピアニッシモから、宇宙が鳴動するような壮大なフォルテッシモまでを奏で、少女が口ずさむような優しく可憐な歌から、巨人がうなるような朗々たる豪放な歌までを歌い、夢見るような優美さや、暗く陰惨な恐怖感や、星降るようなきらめきを音で描くことができる。
~別冊太陽「オーケストラ」(平凡社)P50
作曲家、吉松隆はオーケストラについてそう語る。
バンベルク交響楽団の音は滋味深く、美しい。時代の変遷とともに当然音は変わるのかと思いきや、どの時代の、どの指揮者の録音も、相変わらずバンベルクの音だ。
創立70周年記念ボックスから。
錚々たる名指揮者たちのいぶし銀の如くの名演奏が並ぶ。
若きヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮するニコライが素晴らしい。何だかオーケストラも気合い十分で、音楽を真摯に、そして楽しく奏する姿が思い浮かぶ。
そして、晩年のクレメンス・クラウスによる「オベロン」序曲の生気溢れる音。さらには、晩年のオイゲン・ヨッフムの、思念のこもった「エグモント」序曲の重厚美。
ちなみに、定評あるヨーゼフ・カイルベルトによる堂々たる「コリオラン」序曲の、深淵からのぞき込むような深みのある音(不自然なエコーが気になるものの)に僕の心は動き、シューマンの魔性とでもいうのか、フリッツ・レーマンによる「マンフレッド」序曲に思わずため息が漏れた。