キーシンのプロコフィエフ

いよいよ来週は「早わかりクラシック音楽講座」コンサート・シリーズ第2弾「愛知とし子リサイタル」である。昨年11月にレクチャー形式で開催したのがことのほか好評で、今回も同様のスタイルで進める予定なのだが、今のところまったく話す内容は白紙状態。シューベルトにバラキレフ編曲のショパン、それにリストとメンデルスゾーン、さらにはベートーヴェンというプログラムだが、さてどういう軸でどんな話の展開にもっていくか・・・、当日のプログラムを作成しながら思案する。コンサートのタイトルが「リスト生誕によせて」だから、本来はフランツ・リストを中心に考えるべきだが、ここはどう考えてもベートーヴェンが基点になりそう。シューベルトもメンデルスゾーンも「ベートーヴェン命!」という音楽家だし、リストは楽聖の最晩年の当時としては晦渋な作品を世に広めた功績があるし、バラキレフもショパンやリストの影響をもろに受けている・・・。まぁ、西洋クラシック音楽史そのものが地続きだから、どんなプログラムになっても何とかなるのだけど・・・。いずれにせよ当日まであまりまとまった時間がとれそうもないので、一両日中に何とかせねば・・・。

先日教え子から贈ってもらったキーシンのピアノを聴いた。ひとつは革命前のモダニズムが蠢く時期の青年プロコフィエフの傑作第2コンチェルト。そして、もうひとつが革命の年に作曲に着手され、亡命後パリで完成された第3コンチェルト。昔、FM放送で聴いたキーシンの3番に圧倒され、この音楽の虜になったことを思い出した。そのときの印象とはまた違った、実に余裕の足並みで、重心のしっかりした安定感のある途方もない演奏が繰り広げられる。指揮者アシュケナージの考えがどの程度反映されているのかわからないが、今年40歳になるキーシンらしい「不惑」のピアノ(キーシンの一糸乱れぬテクニックは相変わらず)。

プロコフィエフ:
・ピアノ協奏曲第2番ト短調作品16
・ピアノ協奏曲第3番ハ長調作品26
エフゲニー・キーシン(ピアノ)
ウラディーミル・アシュケナージ指揮フィルハーモニア管弦楽団(2008.1Live)

みなとみらいの横浜ランドマークタワーを訪れた。
高い所から横浜の町並みを眺めながら、ふと「生きていること」を実感した。
革命前後のロシアを知り、亡命までしながら結局故国ソビエトに戻ったプロコフィエフならば、混迷の現代をどうみるだろう?一刀両断、切り捨てるのか、何とか復活にかけて自身も神輿を担ぐのか。自信に満ちたピアノは今の世の中に一条の光をもたらしてくれる・・・。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。

愛知とし子さんのリサイタル、私は25日のほうですが、心底楽しみにしております。

リサイタルを前に他のピアニストについてのコメントは書きたくありませんが、ご紹介のCDを含め頂戴しました2枚のCD、大変優れた内容で感銘を受けました。感謝の極みです。これ以上詳しい感想は、お会いした時に!!

その、「教え子」さんとやらがEMIジャパン?にお勤めとのことなので、少々日頃感じているメジャーレーベルへの思いと不満を書きます。

私はEMIでは、最近ではフルトヴェングラー生誕125年企画、最新リマスター音源をSACDハイブリッド国内盤はすべて自分のお金で買っていますし、ラトル指揮の「くるみ割り人形」も、付属のライヴDVD観たさに国内盤CDを、やはり自分のお金で買っています。その他にも、輸入盤の発売日が待てなかったり、いろんな理由で、好んで高い国内盤を買うことが多い顧客です。
しかし、EMIをはじめとするメジャー・レーベルの関係者の皆様には、まだまだマーケティングでの市場調査不足や、自社の商品に対する愛情不足を感じずにはいられません。

耳が痛い話かもしれませんが、これも明日のために前向きにとらえて欲しいので、列挙してみます。

① 今回いただいたような優れた内容・演奏の音盤は、少なくともSACDハイブリッド盤で発売して欲しい。フルトヴェングラーのような古い録音をSACDで出せて、何で最新録音がいつまでも通常のCD規格なんですか? コレクター心理がまったくわかっていないと思います。
もし、これもいつものように、後で何回も買わせようという魂胆であれば、ファンを馬鹿にした阿漕な商売です。どうせやるなら秋元康のように、ジャケットをAタイプ、Bタイプ、Cタイプにでもして、「握手券」や「投票用紙」でも付けますか?

※クラシック・ファンの音盤への愛情、思い入れや、コレクター心理というものがどういうものか、典型的な、好例の記事をご紹介します。EMIの話ではないですが・・・。
http://www.ne.jp/asahi/jurassic/page/oyaji3/oyaji_08.htm#kuberik

②フルトヴェングラー生誕125年企画、最新リマスターSACDについては、本家EMIの中枢、アビー・ロード・スタジオで、AD変換のPCM方式96Hz/24Bitデジタルのリマスタリングがなされて、音質向上が著しいのですが、これも贅沢をいえば、SACDフォーマットで発売するからには、DSDマスタリングにして欲しかった。ラトル指揮の「くるみ割り人形」も、付属のライヴDVDも、どうせならBlu-ray Disc にしてほしい。このあたり、きめ細やかな コレクター心理へのこだわりや気配りが、営業として必要なのでは?

③件のフルトヴェングラー最新リマスターSACDもそうですが、最近の国内盤の解説文は、あまりにも手抜きで書き手の愛情が感じられないものが多すぎませんか? これでは、わざわざ高い国内盤を買おうという顧客は、減る一方でしょう。昔、特にビギナーのころ、国内盤LPの充実した内容の解説を読むことが、どれほどワクワク楽しみで勉強にもなったことか!!

④今年上半期で最も買ってよかったと思えた音盤をご紹介します。
シューマン:ピアノ協奏曲、交響曲第4番、他 アルゲリッチ、シャイー&ゲヴァントハウス管弦楽団
レーベル : Euroarts
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3771325
このBlu-ray Disc の何が凄いかというと、演奏者の名演を高画質で観られることもさることながら、
・交響的練習曲~アダージョとアレグロ・ブリランテ(チャイコフスキー編曲)
・『子供の情景』~見知らぬ国と人々から(ラヴェル編曲)
・『謝肉祭』より(ラヴェル編曲)
のオーケストラ演奏が入っていること。
これは、他ではまず入手できない、チャイコフスキーやラヴェルの、シューマンへの愛が伝わるオケ編曲の、極めて貴重な第一級の音と映像の資料です。
EMIほどの力のあるメジャー・レーベルであれば、こういう優れた企画の音盤発売の権利をEuroartsなどに持って行かれずに、発売チャンスを逃さないで欲しいです。

秋元康のようなあざとい手法をとらなくても、音盤はまだまだ売り手の知恵と工夫次第で、いくらでも売上を伸ばせると信じています。

>革命前後のロシアを知り、亡命までしながら結局故国ソビエトに戻ったプロコフィエフならば、混迷の現代をどうみるだろう?一刀両断、切り捨てるのか、何とか復活にかけて自身も神輿を担ぐのか。

特に混迷しているのは、日本とCD業界ですね。

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岡本 浩和

>雅之様
こんにちは。
まったくもっておっしゃるとおりだと思います。
いわゆる大手レコード会社には真に音楽を愛する人がほとんどいないのでは、と思うほどです(いろいろと聞いてみると実際のところそうらしいですが)。

レコード業界そのものが斜陽になっているのは、そもそもその中で働く人達の、当たり前のようなアイデア不足、チャレンジ精神の欠如が影響しているように思います(何より音楽を愛する人々のことを考えていない!そして、愛が不足しているのです!!)。若者が音盤を買わなくなったとか、配信にもっていかれているとか、様々な理由は挙げられますが、それを超えるような努力をまず怠っているのが現状ですよね。
ともかく儲かれば良い主義の、見え見えの「売り方」も気になりますし、今回のコメントで雅之さんが挙げられたようなことを事情があるにせよきちんとやっていけば、状況は随分改善されるのではないかと想像します。

ところで、ご紹介のアルゲリッチ&シャイーのBLu-Rayは良さそうですね。未視聴ですので、機会を見つけてみてみます。

>EMIほどの力のあるメジャー・レーベルであれば、こういう優れた企画の音盤発売の権利をEuroartsなどに持って行かれずに、発売チャンスを逃さないで欲しいです。

同感です!!

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