ゴットロープ・フリック名唱集からモーツァルト&プフィッツナーを聴いて思ふ

天使たちが神を讃美しようとして、ほかでもないバッハの音楽を奏するかどうか、これには絶対の確信はもてない。・・・けれども、彼らが仲間うちで相集ったときには、モーツァルトを奏し、そのとき神様もまたその楽の音をことのほか悦んで傾聴なさるだろうこと、これは確かだ。
~カール・バルト/小塩節訳「モーツァルト」

陰影色濃いバス。
深みのある声質は人間離れし、地の底から、否、天上から降り注ぐ神の啓示のよう。
ゴットロープ・フリック演じるザラストロ。「魔笛」第2幕第10番「イシス、オシリスの神よ」の崇高さ、あるいは、最後のシーン「太陽の神殿の場面」での明朗な、愛ある歌に感銘を受ける。また、「後宮からの誘拐」第1幕第3番オスミンのアリア「風来坊どものすることは」でのフリックの歌は、力強く、恐るべき説得力を持つ。
そして、「フィガロの結婚」第1幕から第4番バルトロのアリア「復讐、ああ復讐は」での、朗々と歌われる余裕のバスの愉悦が身に染みる。

ゴットロープ・フリック―王様と喜劇役者
・モーツァルト:歌劇「魔笛」K620
—第2幕第15番「この聖なる殿堂には」(ザラストロ)
マックス・シェンハー指揮ウィーン放送管弦楽団(1953録音)
—第2幕第10番「イシス、オシリスの神よ」(ザラストロ)
—第2幕フィナーレ「太陽の光は夜を追いはらい」(ザラストロ)
ゲオルク・ショルティ指揮ヘッセン放送交響楽団&合唱団(1955録音)
・モーツァルト:歌劇「後宮からの誘拐」K.384
—第1幕第2番「気立てが良くて浮気でなくて」(オスミン)
レオポルド・シモノー(ベルモンテ、テノール)
—第1幕第3番「風来坊どものすることは」(オスミン)
—第2幕第8番「やさしい言葉にお世辞をまぜて」(ブロンデ、オスミン)
イルゼ・ホールヴェーグ(ブロンデ、ソプラノ)
—第2幕第14番「バッカス万歳!」(ペドリロ、オスミン)
ゲルハルト・ウンガー(ペドリロ、テノール)
トーマス・ビーチャム指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(1956録音)
—第3幕第19番「おお、わしは勝ちどきをあげるのだ」(オスミン)(1953録音)
・モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」K.492
—第1幕第4番「復讐、ああ復讐は」(バルトロ)(1954録音)
ヴィルヘルム・シュヒター指揮ベルリン交響楽団
・モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」K.527(マゼットとして)
—第1幕第5番「若い娘さんたち、恋をするなら」
—第1幕第12番「ぶって、ぶって、ああ、大好きなマゼット」
エルフリーデ・ヴァイトリヒ(ツェルリーナ、ソプラノ)
マシュー・アーラースマイヤー(ドン・ジョヴァンニ、テノール)
クルト・ベーメ(レポレッロ、バス)
カール・エルメンドルフ指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1943録音)
・モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」K.527(騎士長として)
—第1幕第1番「夜も昼も苦労して」
—第2幕フィナーレ「ドン・ジョヴァンニ、汝と晩餐を共にするために、わしはやって来た」
ジュゼッペ・タデイ(レポレッロ、バス)
ジョーン・サザーランド(ドンナ・アンナ、ソプラノ)
エバーハルト・ヴェヒター(ドン・ジョヴァンニ、テノール)
カルロ・マリア・ジュリーニ指揮フィルハーモニア管弦楽団(1959録音)
・プフィッツナー:歌劇「パレストリーナ」
—第3幕「万歳、パレストリーナ」~「かつて天のシオンの中で、聖者ヨハネが聞いたように」
リヒャルト・クラウス指揮ケルン放送交響楽団&合唱団(1952録音)

全盛期のフリックの歌唱は実に瑞々しい。録音を超えて迫る生々しさと、デモーニッシュな色合い漂う声質の神秘がどの場面においても聴きどころとなる。
それにしても「ドン・ジョヴァンニ」での騎士長役の奥深さ!

その上、プフィッツナーの「パレストリーナ」第3幕最後の場面での、荘厳な合唱と輝かしい金管群のファンファーレに導かれ、フリック演ずる教皇ピウス4世がかつて天のシオンの中で、聖者ヨハネが聞いたように」と歌う個所の身震いするほどの感動。わずかな抜粋ながら驚くほどの魔力!

 

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