エル・シマロン・アンサンブルのヘンツェ「エル・シマロン」(2005.8録音)を聴いて思ふ

henze_el_cimarron_cimarron_ensemble強烈!!
第三世界的打楽器の断続的響きとフルートのアンニュイで悠久な調べ。
そこに、感情豊かでメリハリの効いた意味深いバリトンの朗読が重なる。
キング・クリムゾンの「ムーン・チャイルド」や「サーカス」のにおい。
時にはビートルズの変形すら木霊する。
音楽が、垣根を越えて僕たちの魂を刺激するのだ。

枠というものは超えるためにあるのである。
そもそもジャンルに分けていることがナンセンス。
芸術の神髄は、要は訴えかけるものがあるかどうかだ。

吐息のような静寂の音。
楽器と声が連鎖する。
エステバン・モンテーホのいわば自叙伝が、ハンス・ヴェルナー・ヘンツェの才能を得て、心に直接響く朗読劇となった。

・ヘンツェ:エル・シマロン~逃げ出した奴隷、エステバン・モンテーホの伝記/4人の音楽家のための朗読劇/ミゲル・バルネットの本に基づくテキスト
エル・シマロン・アンサンブル
アンゲロ・デ・レオナルディス(バス・バリトン)
グンドゥル・アッゲルマン(フルート)
クリスティーナ・ショルン(ギター)
イヴァン・マンチネッリ(打楽器)
ミヒャエル・ケルスタン(音楽監督)(2005.8録音)

逃亡した奴隷は、隠れるために入った森の中で自身の道を知る。
そこで彼は、精霊や幽霊、カエルのような頭を持った小さな黒人に出逢う。あるいは海からの人魚に出逢ったその日が聖ヨハネの日。
シマロンの、たとえ奴隷という身であったとしても信仰というものを失わない崇高さ。
さらに、ある日、シマロンは世界で完全な存在は女性であることを悟る。

若き日、ヒトラー・ユーゲントに属していたというヘンツェは、生涯その十字架を背負ったが、それこそシマロンにある信仰と同期するかのように音楽は一貫して魔術的なにおいを放出する。
そうだ、「エル・シマロン」に充溢するものは「祈り」だ。
シマロンの、いや、ヘンツェの波乱万丈の人生・・・。
彼は最後に言う。

おそらく私は明日死ぬだろう。・・・でも、私はまだ死にたくない。これからここで起こるであろうすべての戦いに参戦したいのだ。

たぶん僕は、この朗読劇の実演に触れたらば卒倒、いや、失禁するかもしれない。

 

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