7月 08
ジュリーニ指揮バイエルン放送響のシューベルト「未完成」交響曲(1995.4録音)ほかを聴いて思ふ
人間というのはどこまでも完璧でないから美しいのだと思った。
いつどんな時も失敗の反省があり、一方で、成功の愉悦がある。
不完全、未完成であるがゆえの喜び。
「なにがしあはせかわからないです。ほんたうにどんなつらいことでもそれがたゞしいみちを進む中でのできごとなら峠の上りも下りもみんなほんたうの幸福に近づく一あしづつですから。」
燈台守がなぐさめてゐました。
「あゝさうです。たゞいちばんのさいはひに至るためにいろいろのかなしみもみんなおぼしめしです。」
青年が祈るやうにさう答へました。
「銀河鉄道の夜」
~宮沢賢治全集7(ちくま文庫)P274
賢治の根底にあるのは間違いなく信仰だけれど、仮に信仰というものを横に置くとしてもそれまでの人生のすべてに本来は否定するものがないということは確かだと僕は思う。月並みな言い方だけれど、すべては必然なんだと。