パコ・デ・ルシアの「アランフエス協奏曲」を聴いて思ふ

rodrigo_albeniz_paco_de_luciaこの「アランフエス協奏曲」(映像が最高!)は稀代の名演奏であるにもかかわらず、少なくとも「クラシック音楽」の評論家たちからはほとんど無視をされている。真に残念でならない。
今年の2月に66歳で亡くなったフラメンコ・ギタリスト、パコ・デ・ルシアの、1991年4月にトレロドーネスのブレバール文化会館での実況録音。この日は、当時89歳になる作曲者ホアキン・ロドリーゴも会場に招かれていたそうで、ジャケット表紙には演奏するパコの後ろで佇むロドリーゴの姿が捉えられている。いわば作曲者お墨付きの演奏なのである。

いかにも破天荒とでも表現するのか・・・、否、フランメンコ・ギタリストとしての本領発揮と言う方が正しい。おそらく楽譜というものを大幅に逸脱することなく、しかし一般的なクラシック・ギタリストなら決して挑戦することのない「自由」がここにはある。表面上の明快さ、曲線的歌い方もさることながら、やはり内燃するスペイン情緒が聴く者の心を揺さぶる。

濱田滋郎氏の解説によると、1990年の来日の際、パコは「『アランフエス協奏曲』に漲っているスペインの民族的なリズムを、自分ならば、あらかたのクラシック・ギタリストに優る鋭さ、力、『本物の味』を込めて表現できる」と自負を持って語ったそう。まさにそのことが具現化された超絶名演奏なのである。

ロドリーゴ:アランフエス協奏曲
パコ・デ・ルシア(ギター)
エドモン・コロメール指揮カダケス・オーケストラ(1991.4.25&26Live)
アルベニス:組曲「イベリア」より
・トリアーナ
・アルバイシン
・プエルト
パコ・デ・ルシア、ホセ・マリア・バンデーラ、ファン・マヌエル・カニサレス(ギター)

あえて超有名な第2楽章アダージョについて触れる。冒頭のパコのギターによって導かれるイングリッシュ・ホルンの憂愁美からして別格。これこそ「スペインの心」。その後のギターとの掛け合いも涙なくして聴けぬ。ギター独奏パートの「粘り」と「静けさ」、「哀しみ」も桁外れ。ここにこそ妻の流産を慰めんとするホアキンの「心」が直接に表現されるんだ。
白眉は、弦楽器によって奏でられる主題のクライマックスとその直前のギターによる見事な高速ストローク(?)。「アランフエス協奏曲」を愛する人々の必須アイテムであると断言する。

さらに付録のギター三重奏によるアルベニスが素晴らしい。
「トリアーナ」の何という情熱。そして、ドビュッシーをして「これに匹敵するピアノ曲は世の中に数えるほどしかない」と言わしめた「アルバイシン」の黄昏時の静かな舞踊の妙。さらに、「プエルト」の野趣に溢れた踊り。いずれも本家本元・・・、スペイン音楽の源がフラメンコにあることを確信させる傑作。

 


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