J.S.バッハの命日にメンデルスゾーンを・・・

J.S.バッハの命日にメンデルスゾーンを聴く。
19世紀前半にバッハ復興に尽力したフェリックス・メンデルスゾーンなくして今日我々がバッハの名曲たちを享受することができなかったかもしれないと考えると、メンデルスゾーンの音楽的審美眼には真に舌を巻く。わずか14歳の少年が叔母からバッハの「マタイ受難曲」の総譜を贈ってもらい、一見釘付けになったというのだから。しかも数年後にはそれを復活蘇演するという荒業まで本当にやり切ってしまうのだから、細かなことにいちいち躊躇しながら生きていることが恥ずかしくなるほど。ユダヤという特質から自ずと湧いて出る心構えなのかもしれないが、月並みな言葉で表現するとその「チャレンジ精神」というものが後世に与える影響についていかに重要か、そんなことを考えながら1826年、17歳の時に書かれた弦楽五重奏曲作品18を。通常の四重奏にヴィオラを一本加えた編成によるこの作品は、少年の実にナーバスな内面を表出する。

第1楽章冒頭の主題から一聴引き込まれる「慈愛」に満ちた魅力的な旋律。
第2楽章の暗い哀感を湛えた見事な音の流れ。3楽章のスケルツォには大人の遊び心が反映される(本当に17歳の少年の作品か?!)そしてフィナーレの躍動感。

メンデルスゾーン:
・弦楽五重奏曲第1番イ長調作品18
ハウスムジーク
・クラリネットとバセット・ホルンのための協奏的小品第1番作品113
・クラリネットとバセット・ホルンのための協奏的小品第2番作品114
ザビーネ・マイヤー(クラリネット)
ヴォルフガング・マイヤー(バセット・ホルン)
イェルク・フェルバー指揮ヴュルテンベルク室内管弦楽団

EMIの室内楽曲集からの1枚。弦楽四重奏をお目当てにだいぶ前に購入したものだが、こういうセットものの良いところは、カップリングされている意外な名曲に出逢えるところ。協奏的小品はいずれも1833年の作。24歳の、音楽家として順風満帆な道のりを歩んでいる頃のものだと思うが、楽器の剽軽な音色のせいか、一抹の不安感や暗さをその奥に感じ取るのは僕だけだろうか。

裕福な家庭に育ったお坊ちゃん作曲家。メンデルスゾーンの一般的なイメージを翻すには、あまり有名でないこういう音楽をじっくり耳にすることだろう。悲しみを奥底に包み隠し、決して人には悟られまいとするピエロのように、彼は38年という生涯を生き切ったのか・・・。音楽だけが深く深く鳴り響く。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。

このところ、おぞましい演劇台本のアイデアが、私の頭をよぎって困ります。

今朝は仕事の関係で時間がないため、スケッチを少しだけ・・・。

姉、ファニー・メンデルスゾーンの隠された本当の死因は、
弟、フェリックスによる周到に計画された毒殺だった。

「姉さんは、どうしていつも僕の作品に干渉してくるんだ!」
「姉さんは誰のものでもない! もう僕だけのものだ!」
狂おしい、秘められた禁断の姉弟愛は、何時しか殺意に変わる・・・。

そして、完全犯罪は、計画通り実行された。

「姉さんを殺してしまった!」

途轍もない後悔が、弟を追い詰める。
毎夜、姉の亡霊が弟の夢枕に立つ。

「姉さん、今会いに行くよ!」
姉を殺した半年後、弟は同じ毒をあおり、後を追う。

こうして永遠の姉弟愛は、二人の望み通りに達成されたのだった・・・。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。

素晴らしい!!
メンデルスゾーン版「アマデウス」ですね。
さすが、モーツァルトの再来といわれた神童だけあります。
「アマデウス」以上に面白い映画や舞台ができそうなので、どこかで制作されないものですかね。

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