ミニマル・ミュージック

reich_adams_waart.jpg寒いと思ったら雪が降っている。それもかなり水分を含んでいそうな大粒の雪である。ここのところ暖かい日が続いていたからてっきりこのまま春になるのかと期待していたが、さすがにそんなはずはない。2月になって真冬に逆戻りである。

ベロフの弾くドビュッシーを静かに聴きながら、ガラス越しにひたひたと降り落ちる雪の結晶に幼年時代を投影させる。無数に落ちてくる雪を眺め、子どものころの記憶を手繰りよせるのだ。愛娘エンマに捧げられた「子供の領分」は、作曲者のあくまで個人的な手記である。時にユーモラスに、時にやさしく。
あの頃、雪が降るととても嬉しかった。雪合戦、雪だるまなど「遊び」もそうだが、学校が休みになると思うと身体中が喜びに溢れた。さぼれるものならいつでもさぼりたい、そんな風に考えていた。今となっては古き良き思い出である。

いつの時代、どんなジャンルにおいても革新的な人々が存在する。もちろんドビュッシーもその一人。昨日の「早わかりクラシック音楽講座」で採り上げたムソルグスキーもそうだ。

僕はまだ小学生だったろうか、いや中学に入ったばかりの頃だったかもしれない。「エクソシスト」というホラー映画が一世を風靡した。メリン神父役にマックス・フォン・シドウが抜擢されていたこと、何といってもリーガン役のリンダ・ブレアの名演技など、今からしてみるとキャスティングから途轍もない大傑作映画なのだが、子どもにとっては「恐怖」以外の何も感じられなかった。もちろん最後まで観通すことなんてできなかった。それでもあの印象的なテーマ音楽だけは妙に耳に残った。そう、マイク・オールドフィールドのデビュー作「チューブラー・ベルズ」である。延々と続くこの音楽はマイクが一人で多重録音したものだということを後になって知ったのだが、とにかく強烈だった。かっこいいと思った。

当時はいわゆるプログレッシブ・ロックの範疇に入れられていたと思うが、これはれっきとした現代音楽であり、ミニマル・ミュージックである。ドビュッシーを聴きながら、「チューブラー・ベルズ」を聴きたくなり、そしてスティーヴ・ライヒに行き着いた。

ライヒ:管楽器、弦楽器と鍵盤楽器のためのヴァリエーション
アダムズ:シェイカー・ループス
エド・デ・ワールト指揮サンフランシスコ交響楽団

ライヒが後の世代(ポピュラー音楽然り、現代音楽然り)に与えた影響というのは多大なものがあるという。しかし、1980年に発表された「管楽器、弦楽器と鍵盤楽器のためのヴァリエーション」を聴くと、彼の方もマイク・オールドフィールドの影響を明らかに受けているだろうことがわかる。僕はこの世界の事情については残念ながら疎い。ほとんど根拠なく聴いた感覚だけで書いているが、少なくともお互いが互いの影響下にあるのは間違いないことのように思う。

初演者であるワールト&サンフランシスコ響は「これぞスティーヴ・ライヒの音楽なり」という確信の下、確固とした自信をもって緻密な演奏を繰り広げる。かっこいい!


2 COMMENTS

雅之

ライヒはミニマル・ミュージック
「チューブラー・ベルズ」もおっしゃるとおりミニマル・ミュージック?
ガムランもミニマル・ミュージック?
サティもミニマル・ミュージック?
ラヴェル「ボレロ」もミニマル・ミュージック?
シューベルトのピアノ・ソナタもミニマル・ミュージック?
ブルックナーもミニマル・ミュージック?
テクノもミニマル・ミュージック?
ハウス・クラブも ミニマル・ミュージック?
ヒップ・ポップもミニマル・ミュージック?
今回のコメントもミニマル・ミュージック?

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
今回のコメントは素晴らしきミニマル・ミュージックです(笑)。マクロでみればすべてミニマル○○○ですね。

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