愛の孤独

今月末の「古典音楽講座」のテーマはブラームス。
大学生の頃までは、ブラームスの音楽は正直あまり好きになれなかった。暗いというかイジイジしているというか、男性的な音楽なのだが、その中に女々しさを感じていたのである。確かに彼の成育歴、恋愛遍歴、人間性などを紐解いてみると、人好きのする「楽しい」人ではなかったようだ。人に会えば一言多かったり、人を平気で傷つけることを言ってしまったり、本当に「愛」というものを知らないんじゃないかという錯覚さえ起こしてしまうほどの人物だったらしい。

しかしながら、27歳を過ぎたあたりから突然ブラームスの真髄が理解できるようになった。というか昼も夜も暇な時はブラームスばかり聴いていたという時期があった。決して「愛」がない作曲家ではない、ということが何となくわかったからだと思う。多分ある程度の経験を積む前には「わかりにくい」作曲家なのだろう。

いつしかその熱も覚め、ここ数年はあまり意識して聴いてこなかったのだが、必要に迫られいくつか取り出して聴いてみた。

没後25年のグレン・グールドもエキセントリックな変わり者であった。真夏に手袋をはめコートに身を包むという風貌もさることながら、レコード等にも記録されているように、ブツブツとメロディーを口ずさみさがらあえてポツポツと音をぶつ切りにしたり、楽譜の指定を完全に無視してピアノを弾くのである。その典型はモーツァルトのソナタだが、よくもまぁレコードとして残したものだとある意味感心する。

モーツァルトなどではとても普通の愛好家にはついていけないようなエキセントリックな演奏をするグールドも、ブラームスでは「愛」に満ちて「孤独感」たっぷりの演奏を披露している。特に、晩年に作曲された小品は言語を絶する美しさだ。

ブラームス:間奏曲集
グレン・グールド(ピアノ)

※ちなみに、ブラームスもグールドも生涯独身だったことを付け加えておく。

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