今週末、すみだ学習ガーデン「早わかりクラシック音楽入門講座」が早くも第2期第10回を迎える。これまでなるべく幅広いジャンルの有名曲を採り上げようと努力してきたが、今度はいよいよ20世紀の音楽、それも無調音楽であるアルバン・ベルクのヴァイオリン協奏曲が軸になる。果たして皆様に理解していただけるか少々不安もあるが、もはや今となっては現代の古典と化した佳曲ゆえすんなりと受け容れていただけるものと期待する。
ところで、昨日の”Music Door Academic”でお話をさせていただきながら思ったこと。
作曲家の生い立ちや時代背景を知ること、あるいはどういう時期に、そしてどんなことを思いながら作曲家がその音楽が生み出したのかを知ることが音楽を理解する上でとても重要な役割を果たすということ。確かに僕自身がベルクのこの難しい協奏曲を理解する上でもそうだった。
ベルクの遺作となったこの音楽は2つの楽章で成り立ち、しかもそれぞれが2つのパートで構成される。マーラー夫人であったアルマと建築家ヴァルター・グロピウスとの間に生まれた娘マノンが19歳で夭折したことに心を痛め、彼女に捧げるべく書かれたもので、例えば、第1楽章がマノンの肖像を音楽的に表現したものであり、第2楽章の前半がマノンの闘病生活を、そして後半が彼女の死と昇天を表すものだということを知って聴いただけで随分と「聴き易く」なるものだ。
何事においても「意味」を知ることは大切ということ。
ちなみに、第2楽章後半部にはJ.S.バッハのカンタータ第60番「おお永遠よ、汝おそろしき言葉よ」終曲のコラールが引用されているが、それがどんな音楽でどういう歌詞内容を持つのかを知っておくとより一層面白い。
ということで、バッハの件のカンタータでも今夜は聴いてみようと棚を探したが・・・、ない(笑)。リヒター&ミュンヘン・バッハ管によるものがあったと記憶していたが、どうやらその巻だけ手元にないことが判明。どこにいったんだろう??(涙)
仕方がないので、その流れで久しぶりに別のカンタータを聴くことにした。
第60番とおそらく同じ時期(1723年頃)に書かれたであろう第148番。やっぱりバッハは素敵だ。
さすがの僕もバッハのカンタータの全てをきちんと聴いたことがない。よって余程の有名なものでない限り一聴どの曲かを言い当てるのは困難。しかしながら、真に多様で、どの曲のどの部分を聴いてもバッハの天才が感じられ、西洋音楽の源流がここにあることを再確認し、畏怖の念をあらためて感じた(リヒターの演奏については何も言うことなし!)。
昨日のコンサートでドビュッシーはショパンやシューマンの影響を直接受けていることをお話しした。そしてショパンやシューマンはベートーヴェンやモーツァルト同様バッハから多大な影響を受けている。いずれの時代のどんな音楽家にとってもバッハは教科書なんだ。
※ベルクが引用したカンタータの内容は下記のとおり(作曲家名曲解説ライブラリー16「新ウィーン楽派」から転載)。
たくさんです。主よ、御心にかなうのなら、私の戒めを解いてください。
わがイエスが来ます。
では、おやすみ、おお世界よ!
私は天にある家にわたってゆく。
私は平穏をもって安らかに往く。
私の大きな苦悩はこの下界に残る。
たくさんです!たくさんです!
(吉田秀和訳)