スヴェトラーノフの「新世界」&「春の祭典」

ドヴォルザークの「新世界」交響曲などというのはもはやほとんど聴くことのない「名曲」だが、ここのところ手元に数種の音盤が届く(笑)。特に意図的に仕入れたわけではないのだけれど、ボックス・セットに混入していたり、ぜひとも聴いてくれと手渡されたり。例えば、先日のシルヴェストリ・ボックスには2種のそれが収録されており、いずれもが「超」のつく名演奏。それと、”Great Conductors”にもカレル・アンチェル指揮チェコ・フィルのライブが収められており、さすがにお国ものだけあり、実に生気に満ちた演奏で、久しぶりにこの通俗名曲を大いに堪能した。

そんな中もうひとつ「新世界」交響曲が・・・(笑)。山崎さんからぜひともということで手渡されたもの。何とスヴェトラーノフ&ソビエト国立響による実況録音。シルヴェストリに優るとも劣らぬ爆演、怪演が繰り広げられる。
まずは第1楽章冒頭のティンパニの一撃からモノが違う。テンポの伸縮も甚だしい。「爆演」という言葉通り、本当に爆弾でも落ちたかのような衝撃が「音響装置」を通しても伝わるのだから、当日その場に居合わせた聴衆はどんな印象をもったのだろう・・・。それと、ロシアのオーケストラにありがちな金管の咆哮もものすごいし。ちょっとうるさいかなと感じてしまうほどだが、ラルゴ楽章の囁きかけるような、哀しげに静かに奏される音楽が心に染みる。

・ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調作品95「新世界より」(1981.3.17Live)
・ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」(1966.5.24録音)
・モソロフ:交響的エピソード「鉄工場」作品19(1975.10.2Live)
エフゲニー・スヴェトラーノフ指揮ソビエト国立交響楽団

この音盤の白眉はやっぱり「春の祭典」
この音楽ももはや通俗曲といっても良いのでは・・・。それに基本的に誰がどんな風に振っても「聴かせる」ようにできた曲だから、耳にしている瞬間は興奮を抑えられない。しかし、ゲルギエフ&マリインスキー・バレエのBDを観て以来、さすがにこの音楽はバレエ音楽だけあり、バレエのために演奏されると一層の光彩を放つことがわかり、実演でも録音でもバレエ付で観る方が面白いと今では考えている。20年以上前に観たベジャール・バレエ団のものも最高だったし、1968年頃に収録されたタニア・バリとジェルミナル・カサド主演によるベジャール振付の映像も素晴らしいし(若き日のジョルジュ・ドンが群舞のひとりとして出演しているのも見どころ)、なによりゲルギエフによるニジンスキー版の「春の祭典」がすごくて頭から離れないのだから。
閑話休題。
スヴェトラーノフの「春の祭典」。「スヴェトラーノフ屈指の暴力演奏」という評判通り。ただし、「世に名高い阿鼻叫喚のヴァイオレンスぶり」とか「広大なロシアの大地もせましとのたうち回る巨大な怪獣もさながらに変貌しているさまには無言絶句」というHMVのレビューはいくら何でもほめ過ぎ。
どちらかというと多少の恣意性を感じるくらいだから、少なくともこの録音だけでスヴェトラの「ハルサイ」は云々できない。実際もし生で触れていたら相当な感動があっただろうけれど。
もうひとつモソロフの「鉄工場」。このいかにも無機的な音楽が聴く者に牙をむく。こういうテンションで迫られた聴衆は唖然としたのではないか・・・。終演後の拍手に心なしか戸惑いが見えるよう(笑)。山崎さん、ありがとうございます。

最後に一言。スヴェトラーノフの実演に触れられなかったことへの大いなる後悔。残念無念。

14 COMMENTS

ふみ

春祭が通俗曲というのは良く理解できますが、サロネンを聴いた時にはそんな意識は一瞬で吹き飛びました…って、まだサロネンを引っ張る僕(笑)

新世界って、曲の構造も実はかなりしっかりできてて、普通に名曲ですよね。僕はやはりチェリが一番好きだなぁ。

返信する
岡本 浩和

>ふみ君
よっぽどサロネンの「ハルサイ」は凄かったってことね。
いや、あの音楽は実演で聴かないとやっぱり真価はわからないからね。
そっかー、そんなに良かったかー、羨ましい。

チェリの「新世界」!!あの超スローな・・・。
うーん、あれは僕はちょっとだなー。
ミュンヘン・フィルはべらぼうに巧いけど。

返信する
ヤマザキ

スヴェトラーノフの「新世界より」4楽章最後の強奏で終わるのにもびっくりしました。私もロシアのオーケストラの実演を聴いたことがないので一度聴きたいです。
あとクリヴィヌの古楽演奏(ストラディヴァリ等使用)の「新世界より」もおもしろいです。

返信する
ふみ

局所的な表現が意外とうまくはまってるヤンソンス/RCOも現代風で僕は結構好きです。
ヤンソンスは一つ一つの表現は確かに丁寧なんですけど、どうも刹那的になってしまって音楽が停留する場面が多いですよね。木を見て森を見ず的な。ダイナミックレンジがでかいので、一般的には印象良いんですけど…ただ、新世界は結構良いので機会があれば是非。

返信する
岡本 浩和

>ふみ君
ヤンソンスね、わかりました、こちらも機会作って聴いてみましょう。
しかし、そんな「新世界」ばっかり聴いてられないけどね(笑)

返信する
ヤマザキ

ふみ様
ヤンソンス「新世界より」は表現が豊かで良いですね。私の好きなベスト3に入ります。

返信する
ふみ

ヤマザキ様

お、ご賛同頂きありがとうございます!
ヤンソンスは刹那的な表現が目立ちますがドヴォルザークはそもそもそういうアプローチがうまく働く作曲家なので、結果的に良い演奏になってますよね。

岡本さん

またユニオンへ…(笑)

返信する
岡本 浩和

>ふみ君
いやあ、もう「新世界」のディスクは要らないわ。どうせ1回しか聴かないだろうから。
多分ヤマザキさんがまた貸してくれるでしょう(笑)

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む